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農業に熱視線!広がる“副業農業”

NHK
2021年4月19日 午前10:55 公開

新型コロナウイルスの影響で、いま農業に熱い視線が注がれています。就農イベントなどを手がける大手人材情報会社によると、就農希望者の数は、去年2月からの1年間で1万2000人余り。前の年に比べ約10倍に急増しました。

特に目立つのが、“副業”で農業を始める人だと言います。リモートワークで場所にとらわれず仕事ができるようになった人が地方に移住して農業を始めるケースや、新型コロナの影響で仕事が大幅に減り、空いた時間で農業をする人などが増えていると言うのです。

マイナビ 農業活性事業部長 池本博則さん 「求人も『ダブルワーク(副業)OK』という募集がかなりある。コロナ禍をきっかけに、生き方・働き方を変えたいという人が、まずは副業で試してみるというケースが増えているのではないか」

“午前は農業 午後から本業” 変わる働き方

去年6月から副業で農業を始めた小林ミチルさん(50)です。

トマトなどを栽培する地元・群馬県の農家で朝7時から働いています。

小林さんが農業をはじめたきっかけは、新型コロナの影響で本業だったホテルの仕事が激減したことでした。

ほとんど出勤がない月もあり、実際に働いた分の給料は月におよそ3万円。休業手当をあわせても6割以上減りました。

小林ミチルさん 「生活するにはちょっと大変。そのときに農業の(募集)があって、これなら午前中だけとかそういうのができるかなということで」

いまは朝7時から11時まで農業に打ち込む小林さん。午後からは本業の仕事に向かいます。

今年からはホテルの仕事を辞め、中古車販売店で夜7時まで事務の仕事を行っています。

農業と事務の仕事を合わせると1か月の収入はおよそ15万円。生活を安定させるためにも、農業は続けていくつもりです。

小林ミチルさん 「2つ(仕事を)持っているというのは心強い。農業は皆さん食べ物を食べますから細く長く続けていくと、それなりに収入が得られる」

小林さんが働く農家では、現在3人が副業で働いています。長年、家族経営で人手不足に悩んでいた農家にとって、貴重な戦力となっています。

経営者 石井真帆美さん 「求人の問い合わせは多いです。月に1、2回は必ず来ます。助かります、いてもらわないと困ります」

多様な人材が日本の農業を変える

副業などで農業以外の仕事をしていた人が新たに参入してくることは、人手不足の解消以外にも、大きなメリットがあると指摘する専門家もいます。東京農業大学の堀田和彦教授は「外部から人材が集まることで、これまでにない革新的な農業が生まれる可能性がある」と話しています。

多様な人材を農業経営に生かそうという試み、いち早く取り組んできたのが、山梨県に本社がある従業員およそ600人の農業法人です。これまで異業種から転職する人を積極的に採用し、今後は副業で働く人も受け入れたいとしています。

この農業法人が目指しているのは、一人ひとりの能力を最大限生かす農業です。

例えば、大手 IT企業に勤めていた男性に任せているのは、農場の温度や湿度を自動で調整するシステムなどの構築。育てている野菜の品質向上や収穫量の安定につながっています。

ほかにも営業職だった人には、販路拡大のセールスを担当してもらうなど、これまでの知識や経験を経営に生かしてもらっているのです。

会社では、従来のやり方にとらわれない、社員たちの新しいアイデアも積極的に取り入れようとしています。

3か月に1度、社長と社員の面談を実施し、会社をより成長させるために何が必要か、率直な意見を聞きとります。

社員 「海外の新しい技術も取り入れていきたいなと思いますし、農業の新しい形に挑戦していきたい」

こうした議論などを通じて、新商品の開発や作業の効率化に結びついたケースもあるといいます。

農業法人 経営企画室 森成徳さん 「業界外の方に関わってもらい、知識を取り入れていくというのは意味がある。これまでになかった農業のスタイルや考え方、会社としての組織を作っていこうと思っている」

一過性のブームに終わらせないために

コロナ禍で注目を集める農業。今後、担い手を増やしていくためには、「重労働」や「低賃金」といったこれまでの農業のイメージを変えていくことも重要です。いま就農を希望する人の約5割は20代から30代の若い世代というデータもあります。そうした若い人たちの関心に応え、一過性のブームに終わらせないためには、国や受け入れる農家がより働きやすい環境を整え、それを広くPRしていくことも重要になってくると感じました。

(映像センター カメラマン 植田耕作)
(社会部 記者 植田治男)

【2021年4月12日放送】