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変異ウイルス拡大 子どもの感染対策は?

NHK
2021年5月10日 午前10:22 公開

変異ウイルス 子どもへの影響は?

全国的に変異ウイルスが拡大するなか、子どもの感染対策はどこまで必要なのか?子どもは重症化しないのか?
今回は小学生以下に絞って対策のポイントなどを、子どもの感染症に詳しい長崎大学大学院の森内浩幸教授と、感染症対策が専門の沖縄県立中部病院の髙山義浩医師に聞きました。

変異ウイルスでも“子どもは感染の中心ではない”

長崎大学大学院 森内浩幸教授(小児科医・子どもの感染症が専門)

「変異ウイルスは、現時点では、大人も子どもも、かかりやすいといえる。参考にしているのが、イギリスでの年代別の新型コロナ陽性者数の推移。イギリスでは去年9月頃から急激に感染者が増加。この頃、(日本で感染が増えている)イギリス型と呼ばれる変異ウイルスが増えてきた。まず15歳から24歳の若い世代で感染が広がり、それを追いかけるように上の世代に広がっている。一方、15歳未満の感染者の増加は、最後に始まり、その数も少なくなっている。つまり変異ウイルスであっても、子どもが感染の中心ではない。従来のウイルスと同様に感染経路の順番は大人から子どもということに変わりはない。ただ変異ウイルスは従来よりも感染力が強いため、これまでほとんど見られなかった子どもから子どもへの感染にも注意が必要。また、イギリス型の変異ウイルスにおいて、現時点では、子どもの重症化が増したという報告は出ておらず、従来ウイルスと同様に子どもの重症化リスクは低いとみられる。ただ、他の国の変異ウイルスはデータが十分ではないので、注視する必要があり、今後、重症化が絶対にないとは言えない」

変異ウイルスの感染対策は?

変異ウイルスは「子どもから子どもへの感染にも注意が必要」ということで、幼稚園や小学校などでは、今後、休園や学校閉鎖などの対策強化が求められるのか?

長崎大学大学院 森内浩幸教授(小児科医・子どもの感染症が専門)

◆対策ポイント① 変異ウイルスでも従来の感染対策を徹底

「必要な感染対策はこれまでと変わらない。基本的な感染対策を徹底すること。また地域の感染状況をしっかり把握して、緊急事態宣言などが出ていれば、期限を設けた上で、学校閉鎖や学級閉鎖を検討しても良いと思うが、それは最後の手段。専門家の間でも勧めていない。重要なのは、感染経路の始まりである、大人がまず基本的な感染対策を徹底すること。大人が経済活動のために時短営業などを続けるなかで、子どもだけに学校閉鎖を求めるのは対策として順番が違う」

◆対策のポイント② ゼロリスクは無理 子どもの気持ちを最優先に考えた対策を

「ゼロリスクは無理。“感染者を出すことは悪いこと”という社会の目によって、学校現場が過剰に対策を強化することは、子どもの立場を考えても良いことではない。大人が、頭ごなしに『従え』というのは違うと思う。子どもたちの気持ちを最優先に、子どもたちの声を聞いて、学びとのバランスを考えながら、対策を考えていくことが大事。恐怖心をあおらず、その上で、『君たちは大人たちを守るヒーローだ。みんなの行動が、おじいちゃん、おばあちゃんを守っているんだよ』と言われれば、子どもたちも納得できると思う」

<長崎大学大学院 森内浩幸教授(小児科医・子どもの感染症が専門)>

沖縄県立中部病院 髙山義浩医師(感染症対策)

◆対策のポイント① 専門家との連携が重要 支援対策の構築を

「地域の流行状況が大事で、細かく市町村別で見ていくこと。陽性者の人数はもちろん、変異ウイルスによる感染者がどのくらいの割合を占めているか確認してほしい。近隣の学校も含め、集団感染が出ている場合は、落ち着くまで待つことも大事かもしれない。こうした考え方の整理は、幼稚園や学校の先生だけでは判断できないと思う。地域ごとに感染症の専門家からアドバイスが受けられるような支援体制が求められる。自治体などを通じて問い合わせたり、日頃から相談できるような体制をつくっていく必要がある

◆対策ポイント② 子どもが実践すべき対策の“優先順位”を

「また、変異ウイルスの感染が拡大しても、基本的な対策を徹底することに変わりはない。対策の優先順位は、①症状の自己管理、②手洗い・せきエチケット、③手洗いの頻度を増やす。風邪を引いた時に、風邪を引いたと言える。学校を休むと言える子になってほしい。"体調管理"を自分でできることが第一歩。感染拡大を防ぐため、自分で休むことを判断できるのが理想。
次に、"手洗い"、"せきエチケット"の2つの徹底。
せきエチケットとは、飛まつを通して感染が広がるので、『人に向けてせきをしない』、『咳をするときは、ハンカチなどで覆い、マスクを着ける』ということを、まずは子どもたちに理解してもらうこと。子どもの発達段階にもよるが、感染が拡大する地域では、特に人混みに行ったり、不特定多数の人や高齢者と会ったりする時などは、マスクの着用がのぞましい。また手洗いは、『頻度を増やす』ことも大事。食事の前や、学校から帰った時だけでなく、『友達といっぱい遊んだ後には手を洗おう!』『多くの人が触れるものを触った後は手を洗おう!』など、工夫しながら手洗いの頻度を増やしてほしい。
あれもこれも、+αのことをしようとすると、本当にやるべきことが希薄化する。これが一番だめ。『基本的な対策のレベルを一段あげていくイメージ』が理想

<沖縄県立中部病院 髙山義浩医師(感染症対策)>

変異ウイルスの感染対策 マスク着用はどこまで?

変異ウイルスの感染対策にもある「マスクの着用」。子どもたちへのマスクの着用について、保護者から疑問や不安のメッセージが寄せられました。厚生労働省は、未就学児へのマスク着用について「本人の調子が悪かったり、持続的なマスクの着用が難しい場合は、無理して着用させる必要はない」としていますが、対策強化のために、一部の幼稚園や保育園では、マスク着用を強制されていることもあるようです。
幼い子どもたち、小学生にはどこまでマスク着用を求めればよいのでしょうか?

マスクを着けた時の“デメリット”を考えるべき

長崎大学大学院 森内浩幸教授(小児科医・子どもの感染症)

★幼稚園・保育園児の場合

マスクのメリットとデメリットを考える必要がある。幼い子どもにとってマスク着用は、メリットは大変小さく、デメリットがとても大きい。マスクは、ぴたっと密着して正しく着用してこそ、感染予防の効果を発揮する。それは幼い子どもには難しくメリットは少ない。マスクを気にして触りまくると、接触感染のリスクも出てくる。デメリットは呼吸が苦しくなる、暑い時は熱がこもる。何かあったとき表情や顔色がわからず直接健康面へのリスクも。また幼少期は、人の表情を見て気持ちを理解し、自分も表情で感情を伝えることを身につける大事な時期でもある。感染状況にもよるが、少なくとも就学前の子どもには強く勧めることはしない

★小学生の場合

「授業内容にもよるが、体育や部活の最中は感染リスクあまりない。ロッカールームや移動中のおしゃべりなどがリスク高い。ここでもデメリットを考えて。感染予防効果のあるやり方でマスクをしながら運動していたら、息苦しくなることが当然。屋外や、換気を十分した体育館、ある程度の距離がとれれば、マスクを外さないとむしろ危険。『マスクつけなさい』と怒られた経験のある子どもは少なからずいる。真面目な子どもほど、『苦しくても我慢しないと』と、ぎりぎりまでつけるだろう、場合によっては意識がなくなる危険性もある

屋外ではマスク無しでも良い!ポイントは「人混み・不特定多数」

沖縄県立中部病院 髙山義浩医師(感染症対策)

★幼稚園・保育園児の場合

人混みに入る時や不特定多数の人と接触する時。日ごろ会わない、重症化リスクが高いおじいちゃん、おばあちゃんなどの高齢者と会う時はマスクをつけた方がいい。幼稚園の中や外で遊んでいる時は、基本的には必要ない。園に関しては、基本的に玄関へ入る時に発熱チェックをしているはずで、また、不特定多数の人が出入りしてウイルスがどこから持ち込まれたのか、わからないという状況でもない」

★小学生の場合

原則として屋外で運動する時にはマスクをつけるべきではない。子どもは、汗をかく機能が未発達であるため呼吸が体温調節の大事な機能。マスクをつけることで、体温調節がしづらくなるだけでなく、熱中症などのリスクも高まる。子どもは気温や周囲の環境を受けやすい。身長も低いため、地面からの照り返しもある。大人が思っている以上に、子どもは暑さを感じている。マスクをしながらの運動は苦しくなることがわかっているのに、あえて着用させるのは残酷」

(おはよう日本 アナウンサー 渡辺健太)
(おはよう日本 ディレクター 中村幸代)

【2021年4月22日放送】