関心高まる 卵子凍結

NHK
2024年1月18日 午後6:06 公開

いま女性たちの間で注目されている「卵子凍結」。

将来妊娠を望む人たちを支援しようと、東京都が卵子凍結にかかる費用を助成すると発表。説明会には想定を超える応募がありました。

卵子凍結に関心が集まる背景にあったのは、キャリアと出産の両立の難しさです。

(おはよう日本 ディレクター 馬 宇翔、首都圏局 記者 金 魯煐)

行政の助成が後押しに

東京都の助成をきっかけに、卵子凍結を行おうと決めた人がいます。

コンサルティング会社で企画の仕事をしている31歳の女性は、1年前に転職したばかりです。将来的には子どもがほしいと思っていますが、今は仕事を優先したい気持ちが強いといいます。

転職したばかりなので覚えることが多く、できるようになることも増えていくので、楽しいことが増えてきて結構忙しくなってきているところです。妊娠や出産をすると2、3年のブランクができてしまうのかなと思うので、(キャリアの)スケジュールが狂ってしまうことを危惧していました

これまで卵子凍結に関心はありましたが、安全性や有効性について、どの情報を信頼すればよいのか分からず、ためらっていたという女性。卵子凍結のメリットやデメリットを理解してもらおうと都が開いている事前説明会に参加し、卵子凍結を行うことを決めました。

(卵子凍結の情報を)いろいろ見てはいたけれども(どの情報を)参照したら良いのかというところは結構難しかったです。自治体が助成するということは、ひとつ安心材料にはなるのかなと思いました

卵子凍結とは

卵子凍結とは、「将来の妊娠に備え、若いうちに卵子を取り出して保存すること」です。

健康保険制度でカバーされないため全額自己負担で、費用は医療機関にもよりますが、1回の採卵でおよそ30万~60万円かかると言われています。

こうした中、東京都は将来妊娠を望む人たちを支援しようと、卵子凍結にかかる費用について最大30万円助成することを決めました。2023年9月から始まった事前説明会には、およそ3か月で、想定を大きく超える7000人以上から応募がありました。

凍結保存後も消えない不安

東京都の助成を受けて卵子凍結を行った人に話を聞きました。

大手企業で働く39歳の女性です。これまでキャリアを積む中で、結婚や出産を考えられるタイミングはなかったといいます。

何年前からか仕事をしつつも出産に対する焦りとか、そういうのも考えるようにはなっていましたが、気づいたら年齢を重ねていました

40歳間近で将来を見据えたとき子どもが欲しいと考え、卵子凍結をすることを決断しました。

しかし、実際に卵子を採り出す過程は身体への負担も大きかったといいます。採卵を行うための手術までおよそ2週間、卵子を育てるためホルモン注射を毎日打たなければなりませんでした。その副作用からか気分が落ち込み、体のだるさを感じる日もあったといいます。

さらに、投薬や検査などで急な通院の必要があり、仕事を休まざるをえないこともありました。

卵子凍結と簡単に言うのですが、想像以上に身体がつらかったです。職場の上司や同僚に理解してもらうために話したいと思ったことはあったのですが、『卵子凍結しているから身体がしんどいです』ということを言えるような雰囲気ではなかったので、言えませんでした。好奇の目にさらされるのではないかという不安感もありました

苦労して卵子凍結を行いましたが、金銭面の負担ものしかかりました。

医師から、このときに採れた卵子の数では将来妊娠できる確率は低いと言われたため、もう一度、卵子凍結を行いました。1回目の採卵は東京都の助成の対象となりましたが、2回目以降は全額自己負担となります。

卵子凍結をやってよかったとは思うのですが、出産に向けてのさらなる金銭負担など、その先が見えないので、今の状況だと安心して子どもを妊娠して出産できるのかなという不安はやはりあります。卵子凍結をしましたが、43歳までに体外受精をしなければ助成の対象にならなくなってしまうことも焦りの1つとなっています

費用補助にとどまらない支援を模索する企業

働く女性が卵子凍結をする場合、先ほどの女性のように、職場の理解があったほうが負担が減るという声もあります。

こうした声を受けて企業が、社員を対象に費用の補助を行うほか、通院に伴う休暇などを取得しやすいよう、職場内の理解を促す取り組みも始まっています。

従業員数約3万人の大手IT企業では、卵子凍結にかかる費用を2023年10月から最大40万円補助しています。

さらに、男性社員が8割を占めるこの会社では、女性社員が補助制度を利用しやすい社内風土をつくろうと、生理や卵子凍結など女性特有の事情や悩みについて管理職の理解を進めるための研修も行っています。

パナソニック コネクト 山中雅恵 副社長

女性が仕事とプライベートをきちんと両立して働けるように、そのための選択肢を広げてあげられる会社にしていかないといけないと思っています。まだスタートラインにいると思っていますし、やり続けていかないといけない

出産や育児の負担が女性に偏らない社会を

日本産科婦人科学会は、健康な女性の卵子凍結について次のように呼びかけています。

▼将来の妊娠出産を約束するものではない点や、妊娠時期が高年齢となるため母体と赤ちゃん双方へのリスクが高まる点を知ったうえで検討してほしい。

また、これまでに多くの卵子凍結希望者の相談に乗ってきた専門家は、次のように話しています。

順天堂大学 卵子凍結プロジェクトに参加 香川則子さん

▼卵子凍結を支援するだけでは、キャリアと出産のはざまで悩む女性たちを救うことにはならない。出産や育児の負担が女性に大きく偏らないよう、社会全体の意識改革が進む教育・研修などがさらに求められる。育児や介護によってキャリアを諦めるという選択は女性の方が圧倒的に迫られる数が多いと思うので、結婚や妊娠出産に対してネガティブなイメージがどうしても出てきてしまう。ライフプランについて、親とか、近い周りだけではなく、いろんな仕事をしている人の人生を勉強する機会があると良いのではないか。