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スリランカ人女性の“死” 入管収容中になぜ?

NHK
2021年6月6日 午前10:00 公開

ことし3月、名古屋入管の収容施設で亡くなったスリランカ人女性が亡くなる1か月前、支援者に宛てた手紙です。手紙には「食べたいのに、水を飲みたいのに吐いてしまう。どうやったら治るの」と体調の悪化を訴える記述がみられます。

希望を持って日本へ 夢は語学校学校を開きたい

33歳の若さで亡くなったスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん。
スリランカで大学を卒業後、子どもたちに英語を教えていました。そのとき、日本人の生徒と出会い、マナーの良さや文化に興味を持ち、4年前日本語学校の留学生として来日しました。ウィシュマさんが、語学学校に提出した書類には、留学理由として「スリランカに戻って語学学校を開きたい」という強い思いが書かれています。
娘の夢を応援したい、と母親は家を担保に借金をして、ウィシュマさんを日本に送り出しました。

運命が暗転 入管施設へ収容

来日当初は、夢に向かって、日本語学校へ通っていました。
しかし、日本で出会った男性と付き合い始めたことで運命が暗転します。
当時を知る複数の人が、交際相手から暴力を受けていたと証言しています。

近くに住む住民 「けんかばかりしている。女の人が大声を出して。暴力を受けて騒いでいたのかもしれないね」

心の不調をきたしたウィシュマさんは次第に学校へ通えなくなります。

去年8月。
交際相手からの暴力に耐えきれず交番に駆け込みました。

その翌日、ウィシュマさんは名古屋の入管施設に収容されました。
語学学校は退学処分となっていて、留学生としての在留資格が失われていたからです。

1月以降 ウィシュマさんの体調が悪化 支援者の声

収容されたあと、ウィシュマさんは日記を書いていました。
ことし1月以降、体調不良が続き、食べ物も十分にとれなくなり、10キロ以上やせ細ったことがつづられています。

ウィシュマさんの日記から抜粋 “吐いてしまう夜 頭と足がすごく痛かった” “足が痛くて我慢できない 唇がしびれている 夜息をするのがつらい”

外国人を支援する団体の松井保憲さんは、ウィシュマさんと何度も面会を重ね、励ましてきました。
1月末、ウィシュマさんから助けを求める電話があったといいます。

松井保憲さん (外国人を支援する団体 顧問) 「血を吐いたと言っていて、このままでは死んじゃう、といった内容の電話がありました」

松井さんはウィシュマさんが深刻な栄養失調の状態にあると感じ、すぐに点滴や入院などの措置が必要だと入管に訴えました。

松井保憲さん (外国人を支援する団体 顧問) 「(入管に)対応するよう要求しましたが、実際何も対処されませんでした。ウィシュマさんに対して入管側はまともに扱っていない」

入管は適切な対応をしていたのか?

入管が適切な対応をとっていたか。
ウィシュマさんの死後、出入国在留管理庁が第三者を入れて調査してきた中間報告です。

中間報告書によると、ウィシュマさんは合わせて4人の医師の診断を受け、逆流性食道炎の薬を処方されていました。しかし、服用を拒否していたとしています。
一方、同室に収容されていた女性は、拒否していたわけではないと証言しています。

同時期に収容されていた女性 「ウィシュマさんは水を飲んでも吐いてしまっていました。薬を飲んでも吐いてしまうため、飲むことはほとんどできませんでした」

2月5日。
中間報告書によると、入管は外部の医療機関を受診させ、健康状態を確認しています。
診察にあたった医師から点滴や入院を指示されたことはなかったとしています。

一方、NHKが入手したウィシュマさんのカルテには、担当した医師が「薬が内服できないのであれば、点滴、入院」と記しています。ただ、同じカルテには「食道などの炎症をおさえる薬で様子を見る」とも書かれています。

亡くなる2日前。この頃、介助がなければ食事やトイレをすることさえできなくなっていたウィシュマさん。
体調不良の原因は精神面にあるのではないかという医師の意見もあり、入管は精神科を受診させました。
そのとき処方されたのは睡眠薬と精神安定剤でした。

3月6日。
朝から入管職員の呼びかけにウィシュマさんは応えず、寝込んでいました。
昼過ぎに確認したところ、すでに脈はなく、緊急搬送された病院で死亡が確認されました。

悲しみに暮れる遺族 なぜ姉は亡くなったの?

ウィシュマさんの妹たちは先月来日し、2週間の隔離期間を経たのち、姉のウィシュマさんの葬儀に参列しました。

ワヨミ・ニサンサラさん(ウィシュマさんの妹) 「姉が大好きな日本に来て、つらい亡くなり方をしました。姉がこんな姿でなくなったのはとても悲しい」

そして、今月17日に名古屋入管を訪ね、死因の究明を求めました。しかし、納得のいく説明は得られなかったといいます。

ワヨミ・ニサンサラさん(ウィシュマさんの妹) 「もっといい報告があると期待していたのに2か月以上たった今も報告がない。日本政府を信用していたけど、だんだん信用が崩れていって、残念です」

夢をもって日本に学びにきたウィシュマさんがなぜ亡くなることになったのか。そのことについて、遺族や支援者たちは究明して欲しいと求め続けることにしています。

(おはよう日本 ディレクター 村上隆俊)
(名古屋放送局 ディレクター 大間千奈美)
【2021年5月21日放送】