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AIがアドバイスする恋愛アプリを、ディレクターがやってみた

NHK
2021年6月7日 午前10:39 公開

近年、「恋愛アプリ」などネット系の婚活サービスの利用が急増している。新型コロナの影響で外出する機会も減る中、いまや、結婚を望む20代から40代の独身者の5人に1人が利用しているほど、婚活の欠かせない手段となっているのだ。

入局2年目のディレクターである私、和田。社会人になってから彼女もできず、最近も好きだった女の子に振られたばかりだ。その時に言われたのが、「まさか私に恋愛感情を抱いているとは思わなかった」。この台詞、昔から何度も言われてきた。

そう、女性とどのように恋愛関係を作っていけばいいか、わからない!友達にはなれてもその先に進めない、誤解を恐れず言うならば、いつも“良い人止まり”。

そんな私が知ったのが、AIが相手とのチャットに参加し、アドバイスをしてくれるという恋愛アプリ。女性との関係性を作っていくためにAIがアドバイスしてくれる、もしそんなことが可能なら私のこれまでの悩みは解消されるはず。いったいどんなアプリなのか、今回は取材として模擬体験することにした。

ディレクター模擬体験 AIのアドバイスとは?

まず、気になる女性に友達リクエストを送信。承認されればチャットが開通。私は一度も会ったことがない、26歳のアヤコさんと会話を始めた。

体験の様子 動画はこちら

すると早速、AIのキャラクターがチャット画面に登場。

AIのキャラクター 「アヤコさんとデートに行けるタイミングになったら、ボクが合図するね!」 「休みの日の過ごし方など聞いてみてね!」

どうやら私だけに見えているアドバイスのようだ。デートのタイミングなんて、AIが本当にわかるのだろうか。しかし、話題の提案だけでも十分心強い・・・。

さらに、仕事についての話題になると、仕事のやりがいを相手に伝えるようアドバイスが入った。しかもしっかり答えると好印象を与えられるらしい。

なぜこのような具体的なアドバイスができるのか。

具体的な恋のアドバイスをAIができるワケ

これまでの恋愛アプリは、多くの恋人候補の中から、年齢や趣味、仕事などの情報を分析し、自分に合う条件の人を、探すことはできた。しかし、その2人がどこまで親密になるかは未知数だった。

そこでこのアプリが注目したのは「出会い」から「付き合う」までの2人のストーリーだと言う。実際に男女が交わしたやりとりをAIがストーリーとして俯瞰して捉え、複数の男女を対象に2年以上に渡って、分析や学習を続けた。2人に寄り添いながら関係性を見ることで、どの段階で、どんな会話を交わせば心の距離が縮まるか、最適なアドバイスができるAIが作られた。

AIアプリを開発した豊嶋千奈さん 「コミュニケーションをアシストすることが出来る。それによって人と人のすれ違い、男女のすれ違いをAIで緩和して行動を最適化できるっていうところに結びついてきます」

アプリの実力 その結果は・・・

AIのアドバイスに導かれるままチャットを続けて数日。会話も弾み、徐々に自信もついてきた私。好きな食べ物について話し、お互いにチーズが好きだと判明した、そのとき!

AIのキャラクター 「今がチャンス!?デートに誘ってみて。成功は僕たちが保証するよ」

ついにデートに誘ってもよいとAIのお墨付きが。

私は意を決して、こう誘い文を送った。

和田ディレクター 「渋谷駅近くにラクレットのおいしいお店があるのですが、一緒に行きませんか?実際に会ってもっとお話ししてみたいです!」

返事は・・・

アヤコさん 「ぜひ行きたいです!私ももっとダイキさんとお話したいです!」

やった!デートのOKが出た・・・のだが、これは模擬体験。取材でやり取りを行っていることは、アヤコさんも了承済みだったため、ここでチャットは終了。

デートに行けないのは少し残念だったが、どの話題を深掘りすれば良いかなど、驚くほど的確にアシストしてくれて便利だと感じた。そしてなにより、いままで、こんなにも自信を持ってデートに誘えたことはなかったので自分でも驚きだった。

なぜ人気?アプリ拡大の背景は

このアプリ、実は全国で利用が拡大している。取材してみると、その理由の1つが、提携した会社の社員だけが使えるサービスとなっているからだとわかってきた。恋愛アプリでチャットをするのはネット越しの知らない相手だ。その相手が、限られた企業の社員というだけで安心感がある。またアプリの導入を決めた会社に取材すると、「独身者のサポートはしたいものの、今のご時世、社員のプライベートには介入しにくいので選択肢を増やして欲しいとアプリを導入した」という声も聞くことができた。このような理由で、すでに全国で600社以上が複利厚生のサービスとしてアプリを導入している。

さらに九州では、今月から新たに1000社(九州経済連合会 会員企業)での導入が、検討されているとのことだった。アプリを通じて企業同士がつながることで、結婚が成立すれば、九州から若者が流出することを防ぐことにもつながるのではないかと期待しているという。九州企業のアプリの導入を計画した九州経済連合会の筬島修三さんに話を聞いた。

九州企業のアプリの導入を計画した九州経済連合会 筬島修三さん 「少子高齢化、人口減少というのは、もう避けられない現実ですし、コロナで出会いの場、リアルでの人との出会いが少なくなってきている。AIを活用した新たな出会いの場を提供することによって、そこでもしカップルができれば、定住していただける率が格段に上がるのではないかと思います」

会ったときのリスクを減らしたいという利用者

導入する企業や地域にとってメリットがあることは分かってきたが、実際の利用者はどのように感じているのか。この恋愛アプリを実際に使ったというともさん(28歳)に話を聞くことができた。埼玉県に暮らすともさんは、都内の大手通信企業で働き始めて4年が経つが、仕事の後も資格の勉強などで忙しく、ゆっくり恋愛する時間が取れずにいたという。

ともさん 「仕事忙しい。友達との時間も犠牲にしたくない」

これまでも恋愛アプリを利用したことはあったというともさん。しかし、チャットで当たり障りのない会話を重ねたり、相手のことをうまく聞き出すのに時間が取られたりして、思うように続かなかったそうだ。その時、同僚に勧められたのが、会社が福利厚生サービスとして導入していたこのAIアプリだった。使ってみて驚いたのが、AIの会話アシストによる関係進展のスピード感だったという。1ヶ月以内にデートを成功させ、4回のデートを経ていまの彼女と付き合うことになったと教えてくれた。

アプリに満足しているともさんを取材して見えてきたのは、恋愛の効率化だ。ネットを通して面識のない人と直接会うのはリスクを伴う。ましてやコロナ禍で、知らない人といきなり会うことは難しくなっている。恋が実るかわからない相手には極力むだな時間やお金をかけず、アプローチしたいのだと話す。

ともさん 「ちょっとの時間でやれる、人数も絞ってくれる。AIのサポートによって効率よく“ラクチン”にやれるというのは非常にありがたかった」

彼女 「AIがフォローしてくれるので、会話がスムーズだった。違和感は全然なかった」

「恋愛に効率を求める」。私の友人や年の近いNHKの先輩も同じ事を言っていた。正直、私自身も効率的に恋愛をしたいという気持ちはよくわかる。しかし、このことを上司(40代、50代)に話すと、「恋愛は駆け引きが楽しい」「付き合うまでにいろいろ二人で乗り越えるからこそ」などの意見が出てきた。

効率的に恋愛がしたいというのはいまの若者特有の感覚なのか。社会と恋愛観の関係を研究する谷本教授に話を聞いた。

関西大学 総合情報学研究科 谷本奈穂教授 「恋愛は、その時代の社会の価値観が反映されます。そのため、閉塞感が漂い、失敗がしづらいいま、恋愛にも“効率”を求める若者が増えているのではないか」

実は、体験取材を通して、心配になったこともあった。相手が知っているのはAIにアシストされた自分。相手と直接会ったら、本当の自分とのギャップを相手に感じられてしまうのではないか。取材している過程で、他の利用者にも話を聞いたが、それは確かなようだ。しかし、ネットの知らない相手に会うリスクを減らすためにAIを使い効率的に出会うのはアリかもしれない。実際にお付き合いしたりするのはAI抜きの人間同士の関係で行っていく。このアプリを通して、どうAIを卒業するかと言うことが大事かも知れないと感じた。

【2021年5月27日放送】