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魚の養殖に新技術「緑の光」でヒラメやカレイが急成長

NHK
2021年5月20日 午後1:32 公開

世界で生産される水産物の半分以上を占めている「養殖」。そのあり方を大きく変えるかもしれない新たな技術が日本で開発されています。「緑の光」を当てるだけで、魚が急成長するというのです。出荷までの期間が大幅に短縮されコストが抑えられることで、高級魚を安く食べられる可能性も!世界が注目する日本の養殖技術、その最前線を取材しました。

ヒラメ養殖に「緑の光」 成長に驚きの変化が!

養殖業が盛んな大分県佐伯市。こちらのヒラメの養殖場で使われているのが緑色のLEDライトです。

緑の光を浴びて育つヒラメには、通常の育て方では見られないある変化が生まれるといいます。

養殖業者 「全然動きが違います。エサを食べる量も全然違いますね」

右がこれまでの養殖、左が緑の光をあてた養殖です。緑の光をあてた方はヒラメが活発に動き回っています。エサも積極的に食べるようになり成長のスピードも速くなるといいます。

平均でヒラメの重さは 1.6倍に。これまで1年近くかかっていた出荷までの期間を9か月にすることができました。人件費や燃料代も抑えられ、年間300万円以上のコストを削減できるといいます。味や食感も従来のものと遜色ないということです。

大分県では、今後、緑の光を利用した養殖場を増やし、より安くヒラメを出荷していきたいとしています。

大分県南部振興局水産班 都留久美子 副主幹 「大分県全体で生産量を伸ばすことによって、いままでは(ヒラメは)高級魚という位置づけですが、皆様の食卓に並ぶようになるといいと思っています」

なぜ「緑の光」で急成長?

緑の光で魚が急成長するという現象を発見したのは、魚の研究を40年近く行ってきた北里大学の高橋明義教授です。

きっかけは、水槽の色がヒラメやカレイの成長にどのような影響を与えるかの研究でした。白・赤・青・緑の4種類の光で実験を行ったところ、緑の光をあてたとき、最も大きくなることが分かったのです。

北里大学海洋生命科学部 高橋明義 教授 「これはもう感激ものでした。ここまで違うのかと」

なぜ緑の光に成長を促す効果があるのか。高橋さんは、魚が本来生息する海の中の光が関係していると考えています。太陽光は赤・緑・青の3つの光で構成されていますが、それぞれの波長によって届く距離が異なります。
ヒラメやカレイが多く生息する数十メートルの深さに、ちょうど届くのが緑の光です。本来住む環境に近い光を浴びることによって、動きが活発になり食欲も増すのではないかというのです。

北里大学海洋生命科学部 高橋明義 教授 「光が目から入って、それを脳が感知して、脳の中の何かの機能が食欲を促進したというのは間違いないと思います」

「緑の光」で被災地の漁業復活へ

光を使った養殖技術は、東日本大震災で漁業が深刻な打撃を受けた東北でも、生かされようとしています。

岩手県宮古市がいま、地域の漁業復活をかけて力を入れているのが、緑の光を使った「ホシガレイ」の養殖です。
“幻の魚”と呼ばれ、高いもので1キロ1万円の値がつくこともあります。

水産研究・教育機構 宮古庁舎 清水大輔さん 「このホシガレイを握ることが寿司職人のステータスみたいなところもある。新たな産業として震災の復興になるのではないかなと」

30メートルを越える津波が沿岸部を襲った宮古市。漁業に使う船や養殖施設は壊滅的な被害を受けました。漁業を続けることをあきらめる人も多く、漁獲量はこの10年で半分以下に減少しました。

宮古市では今後、津波で利用されなくなった沿岸の広い土地などを使ってホシガレイの養殖を行うことを検討しています。緑の光を使えば、出荷までの期間は通常のおよそ半分の1年。新たな技術が被災地の希望の光になることが期待されています。

水産研究・教育機構 宮古庁舎 清水大輔さん 「このホシガレイ養殖が、この東北の地から新たな産業として興って、東北の星になれるように頑張っていきたいと思っています」

光を使った養殖 今後の可能性は?

光が成長を促すことはヒラメやカレイ以外の魚でも確認されています。海の深い場所に生息する高級魚の「クエ」という魚は、「青い光」で大きくなることが分かっています。また、ウナギ・トラフグ・サケなどを対象に、当てる光の色や量を変えて研究が進められていて、今後に期待されます。緑色のLEDライトをあてるだけなので安全性に問題はないと考えられていて、韓国でも今回の技術を利用したヒラメ養殖が始まっています。世界の食糧生産に貢献する技術として期待されているのです。

さらに、こうした現象は魚だけではないのかもしれません。人でも「特定の青い光を見ると、脳が活性化されて眠気がなくなる」という研究があります。また、「森の緑」を見るとリラックスするなどといったことも心理的な効果として言われますが、光の影響が隠れているかもしれないと指摘する専門家もいます。まだまだ分かっていない部分が多い不思議な現象で、今後どのように応用が進むのか注目です。

(科学文化部 記者 寺西源太)
【2021年5月18日放送】

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