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人工のダイヤモンドはここまできている!

NHK
2021年8月26日 午後4:03 公開

「宝石の王様」として知られる、ダイヤモンド。今、このダイヤモンドを人工的に作り出す「合成ダイヤモンド」が世界で広がり始めています。天然のダイヤモンドは、地球の奥深くで長い年月をかけてつくられる鉱物ですが、合成は、装置の中で数週間ほどでできてしまうというのです。
実はこの合成ダイヤモンドを作る技術は、日本で生まれたもの。将来の日本の産業を支える可能性も秘めています。

輝きは天然に負けず 価格はお手頃

合成ダイヤモンドは気軽に身につけられるとして海外で人気が増していて、3年前、ダイヤモンド業界の世界的な企業グループも合成ダイヤモンドの販売事業に参入し、宝石業界に大きな衝撃を与えました。

日本にも合成ダイヤモンドを販売する店が出てきています。東京・銀座の専門店を訪ねると、ショーケースに並んでいるのは、全て人工的に作った「合成ダイヤモンド」。しかも、天然のダイヤモンドなら100万円を超えるものが、合成だと3分の1ほどの価格で販売されています。
おととし、この店をはじめた社長の今西信隆さんは、老舗宝石店の経営者でもあります。
「非常に輝きに驚いた。ここまで技術の進化がきたのか」と、宝石のプロとしても品質の高さを認めざるを得ないレベルだといいます。

物質としては天然と同じ

<特殊な装置で映し出される合成ダイヤモンド特有の模様>

合成ダイヤモンドは物質としては天然と同じです。鑑別するための一般的な装置では見分けることができず、合成ダイヤモンドであってもダイヤモンドと表示します。

宝石の鑑別を行う専門家は、紫外線を使う特殊な装置で、合成ダイヤモンド特有の模様を浮かび上がらせるなどして判別しています。

現時点では宝飾業界では、宝石としてのダイヤモンドは希少な天然のものだけを指し、合成ダイヤモンドは天然とは別のものとして区別して販売することにしています。
急拡大をはじめた合成ダイヤモンドについて、業界では受け止め方は様々だといいます。

宝石鑑別機関 北脇裕士博士 「天然と違うけれども、物質としてはダイヤモンドであることには変わりがない。今後はダイヤモンド市場全体の10%くらいはいくんじゃないかとか天然ダイヤモンドとは違うというふうなことが強く認識されると、そんなに市場規模が大きくならないんじゃないかというふうに考えられている方もいらっしゃる」

技術のルーツは日本人研究者

実はこうした合成ダイヤモンドの技術は日本人研究者から始まりました。
その人物が国の研究機関でダイヤモンドの結晶の研究をしていた加茂睦和さんです。
それまでの人工のダイヤモンドは不純物が多く含まれていたため黄色く、工業用の研磨剤などとしてしか使われていませんでした。加茂さんのグループは、およそ40年前、電子レンジと同じマイクロ波を使ってプラズマを作ることで、炭素原子からダイヤモンドの、きれいで透明な結晶ができることを実証し、世界の研究者を驚かせました。これによって装飾用の合成ダイヤモンドの扉が開かれたのです。

物質・材料研究機構 加茂睦和名誉顧問 「無色・透明というのがダイヤモンドですから、そうでなければ使いみちが広がらないわけです。それを、こういう技術で作れるというのを私たちの時代に証明した」

世界の合成ダイヤモンド製造は日本企業が支えていた

こうした研究から、日本には、世界の合成ダイヤモンドの製造メーカーを支える企業も生まれています。

研究者出身の藤森直治さんが起業したのが、いわばダイヤモンドを作る“種”、「種結晶」(たねけっしょう)と呼ばれる厚さ0.3ミリの板状のダイヤモンドを作るベンチャー企業。
「種結晶」はこうしたダイヤモンドの合成に欠かせないもので、薄い板状に加工するなど高い技術とノウハウがあるこの企業が世界でも有数の供給元となっています。

この種結晶をもとに製造メーカーは結晶をゆっくりと大きくしていきます。
そのスピードは1日で0.5ミリ程度。数週間かけて数ミリの厚さにします。
そして、余分な部分を取り除き、磨き上げると合成ダイヤモンドが生み出されるのです。
インドや中国などでは、 合成ダイヤモンドを安く大量に作ろうというメーカーが増え続けています。
この企業ではこうした国々への輸出が増えていると言います。

合成ダイヤモンドのさらなる可能性

さらに日本では、 合成ダイヤモンドをエレクトロニクス産業に生かそうという研究が進められています。

それが、合成ダイヤモンドでつくる半導体です。
ダイヤモンドで半導体を作ると、従来のシリコンと比べると、はるかに高い能力を発揮する可能性があります。
機器の小型化に関わる、電圧に耐えられる性質は30倍以上、熱を早く分散させるための熱伝導率は10倍以上。
将来の大容量の通信網を作るためにカギとなる半導体になるかもしれないのです。

物質・材料研究機構 ワイドギャップ半導体グループ 小泉聡博士 「ダイヤモンドは半導体として非常にすぐれた特性をもっています。いま通信規格の5Gが普及しだして、6Gが次にくる。その次の通信規格を実現するためには、ダイヤモンドの特性が生きてくる領域があり得ます」

半導体は、実用化はまだ10年以上は先とされる次世代のものですが、新しい半導体として実用化に成功すれば、日本の重要な産業に発展する可能性も秘めています。

(科学文化部 記者 山内洋平)

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