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低山に潜むリスクとは

NHK
2021年6月5日 午前10:00 公開

ここ数年、標高が比較的低い山、いわゆる低山への登山が人気となってきました。
しかし、コロナ禍のいま、目立っているのは低山での遭難です。

コロナ禍で人気 身近な低い山

東京近郊にある標高の比較的低い御岳山(みたけさん)には、密を避けて散策できると多くの人が訪れています。

登山客 女性 「ちょっと歩くのを兼ねてこっち来てみた。すごく気持ちよくて」

登山客 男性 「体を動かしたいという欲と、この自然のなかに触れていたい」

訪れた登山客はこのように話していました。
こうしたなか、救助活動に携わる専門家はいわゆる低山で遭難するケースが最近目立つといいます。

奥多摩などで救助に携わる山岳ガイド 加藤 秀夫さん 「(登山者の多くは)山の経験がないですね。転落、滑落など意外と多いです」

低山に潜むリスクはどこに?

日本有数の山岳県ともいわれる山梨県で2020年に起きた山岳遭難の件数は111件。
その原因で最も多かったのが「道迷い」でした。
山で道に迷うのは、比較的標高が低い山で起きやすいと警察は分析しています。
低山にはどのようなリスクがあるのか、実際に遭難した人に話を聞きました。
甲府市の50代の男性です。
去年3月、山の中で道に迷って遭難し、警察などに救助されました。

遭難した男性 「どうも状況がおかしいぞ、どこが道なんだろうというような形になって、どこに進んでいいのかわからず、一番こっちかなというような方向へ選んでいったのですけれど迷ってしまいました」

男性が遭難したのは、市内にある標高780メートルの比較的低い山でした。

男性はウォーキングが趣味で、この日は、郊外の遊歩道を歩いていて、そのまま何気なく山に入って行ったといいます。

遭難した男性 「ちょっと少しウォーキングの距離を伸ばそうかなというような形で、今まで歩いたことがない遊歩道をちょっと歩いてみようかなという形で、登山という意識はまったくありませんでした」

低い山でなぜ道に迷うのでしょうか。
遭難した男性が歩いた遊歩道を経験豊富な登山ガイドとともに、実際に歩いて調べてみることにしました。

しばらくは道幅が広く、はっきりとした道が続いていました。
ところが、歩き始めから10分ほどのところで迷いやすい典型的なケースに出くわしました。

登山ガイド 岩間 修さん 「道っぽく踏み跡がついているんですよ。尾根は、昔から歩かれているのでそういう所は結構あります。植林がされているところは造林業者が歩くための道とか(低い山には)知らないと引き込まれてしまうということになります」

さらに先へ進むと、少し開けた場所に到着しましたが、道は、倒木にさえぎられるようになっていました。

倒木をこえたあたりで、完全に道はわからなくなりました。木に囲まれ、遠くを見ることもできません。
遭難した男性が道に迷ったのも、このあたりだったといいます。

登山ガイド 岩間 修さん 「これは以前、ちゃんとした道だったのですが、こちら側から倒木が来て、路肩が全部崩れてしまった状態です。北アルプスとか南アルプスの方が、登山道がはっきりしています。里に近ければ近いほど山の中にはいろいろな道があります。そういう意味では里山の方が道迷いは多いです」

リスクにどう対処?専門家は…

低山での遭難を防ぐにはどうしたらいいのか。
山岳雑誌で編集長も務めた山の専門家、萩原浩司さんに聞いてみました。

雑誌「山と溪谷」元編集長 萩原 浩司さん 「標高が低いから安全・安心であるという思い込みはまず捨てていただきたい」

萩原さんはまずそうおっしゃいました。
そして、道迷いなどを防ぐ基本となる地図で便利なものも出ているといいます。
例えばスマートフォンなど使用できる登山用地図アプリです。

雑誌「山と溪谷」元編集長 萩原 浩司さん 「スマートフォンのアプリをスマホにダウンロードしておくと、このように地図がしっかりと表示され、圏外であっても衛星からの電波を拾って現在地を示してくれます。自分がどこにいるのかを常に把握しておくことは実はとても大切な事なのです」

また、低い山であっても登山届けは出すべきだといいます。

雑誌「山と溪谷」元編集長 萩原 浩司さん 「どこの山に行ったのか、やはり届けがないと、もし行方不明になったとき探しようがないんですね。届けというものは何らかの形で残していただければと思います」

また、萩原さんは新型コロナの感染対策も心がけてほしいとよびかけています。

雑誌「山と溪谷」元編集長 萩原 浩司さん 「(岩場や鎖など)みんなが同じ場所を持つところを触った時にはやはり除菌スプレーをしてください。人が集まってしまう休憩場所とかすれ違いの時、すぐにマスクがつけられるよう準備しておいていただければと思います」

登山にはいい季節になりましたが、緊急事態宣言が出されている地域では不要不急の外出自粛が呼びかけられていますので、気軽に登山というわけにはいかないと思いますが、それ以外の地域でもぜひ感染対策そして安全対策には万全を期していただければと思います。

(甲府放送局 記者 清水魁星)

(おはよう日本 ディレクター 小島日佳里)

【2021年4月24日放送】