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「わきまえずに発言を」 兵庫県豊岡市 ジェンダーギャップ解消への“一歩”

NHK
2021年6月29日 午後7:00 公開

ことし(2021年)4月、市役所に「ジェンダーギャップ対策室」を設置した兵庫県豊岡市。男女格差の解消に取り組むまちとして全国から注目を集めています。市が特にいま力を入れているのが、「地域」での取り組み。市内の自治会長359人中、女性はゼロ。まち作りには多様な声が必要だと考えた市は、4年後までにまずは地域の役員に占める女性の割合を30%以上にすることを目標に掲げました。市の働きかけによって声を上げ始めた女性も。現場を取材しました。

豊岡市での取り組みを継続取材した企画を、11月15日(月)の「おはよう日本」(7時台)で放送予定です。見逃し配信はこちらからご覧ください

「わきまえずに発言を」地域に働きかける市のジェンダーギャップ対策室

4月、市のジェンダーギャップ対策室の担当者が訪ねたのは日本海に面した人口およそ1000人の竹野地区。漁業が盛んですが、高齢化が急速に進んでいます。市は、住民たちでつくる組織「コミュニティたけの」に、ジェンダーギャップ解消のモデル地区になって協力してほしいと依頼することにしました。

「コミュニティたけの」の事務局で行われた打合せには、男性の会長と、会をサポートする女性の事務局スタッフが出席しました。

市ジェンダーギャップ対策室 担当者 「女性も参画しながら地域づくりに関わっていただくような方向ができればと。竹野地区を先進的なモデルにしてもらえたら」

コミュニティたけの 小高與志美会長 「社会実験というわけではないけど、そういうふうに試していかない限りは新しいものは生まれてこないでしょうしね」

すると、意を決したように、ひとりの女性が声を上げました。「コミュニティたけの」の事務局を務める岡田真理子さん(46)です。

岡田真理子さん 「(会議の場で)発言されるのは主に男性で、女性の役員さんが発言されることは少なかったです。ちょっと言いにくいような雰囲気はあったと思います」

岡田さんの発言を受けて、市の担当者は

「ぜひ、わきまえずに発言していただけたら」

と声をかけました。

会議の開始時間が夜7時30分って・・・役員の皆さんに聞いてみた

岡田さんの発言を聞いて、地域のジェンダーギャップについて興味をもった筆者は、「コミュニティたけの」の役員会を取材させてもらうことにしました。

役員会では、地域の防災訓練や住民同士の親睦を深めるイベントなどの方針を決めています。16人いる役員のうち、女性は2人。役員は代々、消防団やPTA会長などを務める男性が多いそうです。

定例の会議が始まるのは夜7時30分。このスケジュールについて、2人の女性役員に聞いてみると・・・

女性の役員 「(夜7時30分は)すごく負担です。夜は出にくい。これに出るために早めに夕食を作って段取りをしなければならない。結構バタバタです」

一方、男性の役員は全く違う意見でした。

男性の役員 「女性も出やすい時間ということで夜7時30分と設定しているんですけどね」 「その時間はみんなが都合が悪いということになったら、変更も可能なんですけど」

夜7時30分なら、夕食が終わり落ち着く時間で、女性も家を出やすいと考えたそう。でも、なんだかすれ違っているような・・・。

事務局の女性が声を上げた

次の役員の決め方を話し合う会議の日。市の対策室から「わきまえずに発言を」と促されていた岡田さんが、口火を切りました。

岡田真理子さん 「子どもが小さいうちは夜の会議は出にくいです。会議に出てくださいとお願いするのは簡単ですが、実際に出て行かないといけなくなったらすごく負担になると思います」

役員に女性を増やすのであれば、環境も整える必要があると訴えた岡田さん。声を上げた結果、役員会の開始時間そのものを検討することになりました。

次の世代のために・・・「私も発言していいんだ」

岡田さんは普段、役員会の議事録の作成や資料の整理など、地域の役員を補助する役割を担っていて、これまでまち作りは男性が主体だと考えていました。

しかし、市の対策室ができたことを機にジェンダーギャップについて学ぶうち、地域のために自分も発言したいと思い始めました。

岡田さん 「女性だから発言しにくいというか、私が言ってもいいのかなと思うこともあったんですけど、男女の格差を縮めていくことが大切なんだと聞いて、背中を押されたというか・・・。『私も発言していいんだ』という気持ちになれた」

岡田さんは竹野に生まれ、20年前に結婚して2人の娘を育ててきました。市外の大学に進学した娘の将来が気になっているそうです。

「(娘たちが)将来戻ってきたときに、女性でも発言しやすい、意見を言いやすい、住みやすい地域になっていたらいいなと」

まち作り計画に多様な視点を

 岡田さんが声を上げ始めたことがきっかけで、地域に変化が生まれています。竹野地区の長期的なまち作り計画を策定する委員のメンバー9人のうち、4人が女性になったのです。

岡田さん 「みんなが力をあわせてやっていけば、竹野地区はもっと住んでてよかったなと思う地域になるのではないかと思います」

コミュニティたけの 小高会長 「男性女性関係なく、いろんな声を聞きたい。それが竹野の声だから」

数値目標だけでなく“土台”から見直しを

市の対策室ができたことで、ジェンダーギャップへの関心が地域の間でも高まっていることを実感した一方、実現に向けては住民ひとりひとりが「自分ごと」と捉えて行動する必要があるとも感じました。豊岡市の取り組みに関わっている立教大学教授の萩原なつ子さんは、数値目標を掲げるだけでなく「会議の時間をみんなが参加しやすい時間に設定する」など、社会の土台そのものを見直していくことが大事だと話しています。

地域で始まった、小さな一歩。しかしそれは、大きな変化なのだと感じた取材でした。

(おはよう日本 ディレクター 依田真由美)

【2021年6月30日放送】

豊岡市の取り組みについての取材はこちらからも (クローズアップ現代+)