多くのファンを熱狂させたサッカーワールドカップ。日本代表は決勝トーナメントへ進出し、目標だったベスト8まであと1歩のところまで近づきました。立役者の1人となったのが不動の守護神、ゴールキーパーの権田修一選手です。熱戦の地から戻って1週間、視線は「さらに新しい景色」を見据えていました。
次の目標はまさかの「PKを蹴ること」・・・!?
(おはよう日本キャスター 堀菜保子、ディレクター 天城亮太郎)
ワールドクラスの相手と対戦して感じた「もっと上に行きたい」
堀菜保子キャスター
ーワールドカップを振り返って、今どうお感じになっていますか。
権田修一選手
正直僕らが目指してたところというのはもう1つ上に行くところだったので、大会が終わって帰ってくる時はやっぱり悔しいっていう気持ちのほうが当然大きくて。この時点でも本当は決勝の場に残っていたかったなって思いはあります(決勝の日にインタビューを収録)。
ただ帰ってきてから本当いろんな方に「感動した」「勇気をもらった」ってたくさん言ってもらえるので、それは僕らがサッカーをやっている意味だし、今後も続けていくことが日本サッカーが前に進んでいくことにつながると思う。そういう意味では結果はもうちょっと欲しかったですけど、頑張ってよかったなと思います。
ーワールドカップの舞台っていうのはどんなものでしたか。
楽しかったですね。もっと長くやりたかった。 本当に緊張感だったり、やりがいのある場っていうのをもう1日でも、もうあと4日、あと8日も長くその場で感じ続けたかったなっていうのが、今の率直な思いです。
ー「やりがいのある場」で、どんなものを得ましたか。
モチベーションを得ましたね。もっと上に行きたいなって思いました。
本当にレベルの高い人たちとレベルの高いところでやると、何て言うんですかね。もっともっともっと上に行きたいっていうのは本当に今回で強くなりましたね。
僕自身もともと上に行きたいとか向上したい。もっとうまくなりたいっていうのはある人間ですけど。ああいう場を経験すると「どこまでも上ってあるんだな」っていうのを再認識できたし。そこにどうやってしがみついていくのかなっていうのは自分の中ですごく今回の大会で感じられたところです。
ーしがみついていく?
もうやっぱりたどりつくことってないですよ。多分どこまで行ったって上には上がいる。ワールドカップで1回優勝したとしても、たぶん満足することってないですよね。どうやって高いレベルでプレーし続けるかっていったら、いいパフォーマンスを見せ続けなきゃいけない。もう本当に1個の試合でミスをしてマイナスなことが起きることが、一気にそこから転げ落ちることになる。だから僕は本当にいいプレーをしてそこにずっと、居続ける。今回も初戦で僕がPKを与えてあれで負けていたら、コスタリカに負けて3戦目スペインに勝てなかったらもう終わりだった。必死にとにかくしがみつく、食らいついていく感じの方が言葉として近いかしもしれないです。
ー最後のクロアチア戦ですとモドリッチ選手のシュートをストップした場面もありましたけれど、世界最高クラスの選手と実際に対じして、どんなことを感じましたか。
やっぱみんなすごいですね。あれが日常でやれると本当にいいなっていうのはすごく思った。鎌田大地なんかはフランクフルト(ドイツ)でやっていてヨーロッパリーグで優勝してるぐらいだから、「バルセロナにも勝てるかも」という感覚が日常であるわけじゃないですか。現時点ではJリーグとヨーロッパのチャンピオンズリーグでどっちがレベル高いのって言ったら絶対チャンピオンズリーグなので、そこをまずは目指すっていうところを全員が持った方がいいと思いました。
当然Jリーグでプレーすることの意味もすごいある。ただ自分の夢っていうのを純粋に追うんだったら、やっぱりレベルの高いところを目指している方が成長できる。今のままで大丈夫だって思った瞬間止まるんで、今回大会終わったときに「ワールドカップだからこいつらと試合できる」じゃなくて、「毎週そういうやつと試合したいな」ってすごい思いました。
ーその意味で世界最高クラスの相手となると例えば初戦、世界最高レベルのゴールキーパー、ドイツのノイアー選手と対じして何か感じたことはありますか。
みんな遠くから見てますけど落ち着いてるなと思いましたよね。ノイアーなんか「ワールドカップっていう舞台だから何?」っていう感覚だし、当たり前のように振る舞って当たり前のようにプレーして気負いなんて全くない。特に一次リーグで戦って3人は世界のトップオブトップでやってる選手で、あの大会に出られているキーパーはみんなレベルが高い。キーパーって大なり小で多少ミスはみんなちょっとしているので、ミスしたあとの次のプレーの落ち着きようとか見ていると、メンタルスポーツじゃないですけど、キーパーって「動じない」のが大事なんだなっていうのはすごい思いました。
落ち着いたプレーは「いつも通りの準備」のたまものだった
ー相手のキーパーが落ち着いていたと・・・権田選手自身のプレーはいかがでしたか。
自分の中では案外落ち着いてできたなっていうのが収穫です。まあいい意味でもう「やるしかないな」って開き直れたかもしれないです。どうせ試合は来るし、バタバタしてもしょうが無い。
ふだんからそういう習慣でやっていたのがシンプルに今回も、ワールドカップって大きい舞台かもしれないですけども、落ち着いてでてきたのかなと思います。もうずっと自分の中では「とにかく次の試合にフォーカスすること」をずっとやって来て、準備をするっていうのが本当はふだんどおりのことなんで、ワールドカップになったから急に変えることもなく落ち着いてきたのはすごいよかったなと。プレーでいつもどおりっていうだけではなくて、準備の期間も含めてのいつもどおりを出すことができた。
ー準備しすぎてもダメなんですね。
練習するとなった時に、これもやっておきたい、あれもやっておきたいってなったらきりがないですよ。1日の体にかけていい負荷って決まっている中で、やり過ぎないようにするというのは正直大会が大きくなればなるほど実は結構難しいんですけど、しっかりぐっとこらえて。今回しっかりできたのは大事だったかなと思います。
ー万全の準備を重ねて試合に臨む前、メンタル面はどんな感じでしたか?
試合前は具合悪かったですよ。緊張しすぎてチームのミーティングまで呼吸を整えるのでいっぱいでしたけども、やっぱりみんなでミーティングをしてスタジアムに向かうバスに乗ってバスが着いてっていう辺りでは、「もうここからやるんだ」っていうふうに切り替えられていた。逆に緊張しなさすぎても駄目だしそれはプレッシャーを感じるってすごい大事だな。力を出すためには大事だなって思いましたね。
ーその中で初戦のドイツ戦は試合の最優秀選手にも選ばれましたね。
僕からしたら「なんでPK与えているのに選ばれているんだろうな」というのは率直な感想でした。どういう所が評価されたか分からんです(笑)。ただやっぱりあれはFIFAが選んでくれたので、世界のサッカー知ってる人たちにやっぱり評価してもらえてうれしかったです。枠内シュート8本あの試合はあったので、シュートを止めるところをしっかりと評価してもらえたっていうのはすごいうれしかったです。
2人の控えGKのサポートで築いたチーム
ーこの大会の中で、自身で一番印象に残っているシーンはどこですか。
印象に残ってるシーン・・・。
やっぱり勝った瞬間の光景はすごく印象に残っていますね。いや本当にみんな喜んでて。ゴールキーパーの2人が僕のところに来てくれてみんな喜んでっていう。あの喜びは"素”なんですよ。別にみんなで喜ぼうって思ってみんなで喜んでるわけじゃなくて、シンプルに喜びたいから喜んでいるっていう、今回の大会で日本サッカーがチームで戦えた1つ大きな何か証拠映像というか、残るものなのかなと思いますね。
ー勝った瞬間はどういった感情でしたか?
ほっとしますね。長かったんでロスタイムが今回。7分とか長いですもん。それが本当に苦しい時間を乗り越えて、ぱってこう何か力が抜ける感覚っていうか。いや〜終わったよかったっていう感覚が強いかもしれないです。
ーその中からゴールキーパー2人が権田選手のところに真っ先に駆け寄ってきましたね。
うれしかったですよ。同時にあの2人が支えてくれなかったらピッチで落ち着いてプレーできなかったかもしれないし。下田コーチ含めてキーパーって少し別で練習する分、みんなが切磋琢磨しながらできてた。試合の日になったら僕をみんなでサポートしてくれるという関係性は簡単じゃないので、それを3人で作り上げられたっていうのはすごく良かったことかなと思います。
みんなサッカー選手なんだから試合に出たいのは当たり前じゃないですか。でもちゃんとお互いに対してリスペクトしてくれて、僕は2人のことを最大限リスペクトして、ただ、それは仲良しこよしになるんじゃなくて本当チームが勝つっていう1つの目標に向かってみんなでやるってことがしっかりできたのかなと思います。
ー支えられる3人の関係の中で、今後に生かせそうなことはありましたか。
まずはチームのためとか考えないで、自分が試合に出るために一生懸命やることがすごく大事だなと思います。キーパーだけじゃなくて日本代表全体そうですけど、試合に出る出ないを最後に決めるのは監督じゃないですか。でも出られないと悔しい。悔しいエネルギーをしっかりその次の試合だったり途中出場で出た時っていうところにちゃんと注げれば、チームにプラスにすごいなるんですよね。逆にそこで「もういいや」ってなったらそれってマイナスじゃないですか。それ大事だよねとは思ってたんですけど、今回の大会でより鮮明に、明確になった感じがします。
3年半後のW杯に向けて 今後の目標は・・・PKを蹴ること!?
ー最後にこれからについて伺いたいんですけれども、今回通用したもの、足りなかったものを感じてどうやって今後に向かっていきますか。
もう同じように1日1日をやっていくしかないと思うし。チームの勝利と自分が今回の大会で感じた「ワールドカップで勝ち上がるために必要なもの」をしっかり整理してプレーしながらそこを目指すっていうところの目標設定は常に忘れずに何かやり続けることが大事だなと思います。
ー勝ち上がるために必要な事でご自身が今後磨いていきたいところは、どういったところ?
僕、PKを蹴れるようになりたいなと思ってます。これ結構半分冗談半分真面目で。
PKを蹴るってすごく度胸がいるじゃないですか。止めるのは当然そうなんですけど、自分がPKを例えばあの場で1番目に当たり前のように蹴って当たり前に決めるようになったら。1ポイント取れるじゃないですか。それもありだなって結構本気で思っている。。
今回いろんな経験をして、全部何だろうな、こうしたら絶対これ解決できるって思うようなことだったらそもそも大した問題じゃないですよ。今ものすごく思うのは、こうできたらいいな。ただそのためには「いきなりできるようにはならない」という感覚もある。今取り組んでいいのか、半年待ったほうがいいのか1年待ったほうがいいのか微妙なところで、しっかり考えながらやろうかなと思ってます。
ーそうした感覚を得て、今後の目標は・・・。
アメリカ大陸でやるワールドカップは3年半後、もう3年半しかない。勝つためにできることを増やしていくのはすごい大事なことだと思います。今の、きょうこの時点での目標はやっぱりそこですかね。もう3年半後のワールドカップでどうしたら日本がベスト8以上に当たり前にいけるのかっていうのは自分の中ではずっと考え続けるのかなと思います。
ーその中でのご自身の役割というのはどうなるでしょうか。
何ですかね。今回、自分というものに集中して落ち着いてパフォーマンスができるといいプレーができる可能性が高くなると分かったんで、そこはシンプルに自分のいいプレーをするっていうところを追っかけてやっていきたいなと思います。周りにストレスを感じてもしょうがない。周りがいくらボール失ってもどんなに抜かれても、最後自分が止めればいいだけなんで。
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