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コロナ禍 苦境のバス会社

NHK
2021年6月14日 午前11:40 公開

新型コロナウイルスの影響で、各地のバス会社が厳しい経営に直面しています。外出を控える動きが広がったことなどから乗客が減り、運賃収入が大きく落ち込んでいるのです。国土交通省によると、全国のことし4月の乗客数はおととしに比べ、路線バスで24%、高速バスなどで59%減少しました。特に深刻なのが、もともと赤字路線を抱えている地方のバス会社です。地域の“足”となってきた路線をどう維持していくのか、模索する現場を取材しました。

新型コロナで乗客激減 背景にリモート拡大や感染不安

山形市と仙台市の2つのバス会社が運行する高速バス「山形-仙台線」。隣接する都市間を結び、通勤・通学での利用が多いのが特徴です。感染拡大前、このバスの乗客は年間およそ170万人に上っていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年度はおよそ80万人と半分以下に減リました。

ことし3月、山形・宮城の両県で感染者が急増して以降、県境をまたぐ移動に不安を感じる人も少なくありません。山形から仙台市内の大学に通う佐藤飛花里さんです。

大学1年生 佐藤飛花里さん 「(仙台で新型コロナが) 3月下旬にはやったことで、何をしに行くにも毎回怖いと思って行くようになりました」

感染拡大を防ぐため、佐藤さんの大学では対面の授業は週に2日だけ。それでも、バスに乗ることにはためらいもあると言います。

大学1年生 佐藤飛花里さん 「バスは密室でもあると思うので、そこで大勢の人と一緒に空間を共有し合うのはリスクが高いのではないかと思って。でも、大学に行く手段はバスぐらいしかないので、なんとか対策しながら乗っている」

なかには自家用車での移動を増やしている人も。

マイカー通勤を増やした男性 「家族の不安をやわらげるための選択を、今、しているような感じです」

路線の維持も課題に・・・

バス会社では、車内の密を避けるため、平日の本数を感染拡大前の9割に保っていますが、利用が回復する見込みはありません。

乗客減少の影響は、高速バスだけにとどまらないおそれもあります。高速バスなどの収益を路線バスの維持にもあててきたからです。このままの状況が続けば、路線バスの運行の見直しを検討する可能性も出てくるとしています。

山交バス 髙橋 智 常務 「今までどおり運行していくのはなかなか難しいと思います。地域の公共交通の役割が果たせなくなってくるというふうに考えます」

地域の"足"をどう守る 始まった模索

厳しい経営環境を乗り切ろうと、模索も始まっています。山形一仙台線を運行する仙台市のバス会社です。昨年度の赤字は過去最大規模のおよそ10億円でした。

利用者を確保しようと、感染防止対策を徹底。車内の消毒に加えて、雨や雪の時でも窓を開けて換気ができるよう、自動車メーカーに要望して専用の雨よけを作ってもらいました。しかし、新型コロナの終息の見通しが立たないなか、乗客数は低迷したままです。

青沼正喜社長は、このままではバス事業が立ちゆかなくなると、会社のあり方を大きく変える決断をしました。

宮城交通 青沼正喜 社長 「バス会社だけど、交通を核とした総合産業に変えていきましょうと」

目を付けたのは、バス事業と連動した不動産事業。バス以外の収入源を確保することで、経営を安定させる計画です。バス会社は、車両を待機させる場所など、多くの士地を持っています。そこに貸店舗や集合住宅を建て、安定した家賃収入を得ようというのです。将来的には、そうした場所をバス路線でつなぎ、乗客も増やしたいとしています。

新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、新たな収入源を持つことができれば、市民生活に必要なバス路線も維持できると考えています。

宮城交通 青沼正喜 社長 「バス路線は絶対守らなければいけない。生活できなくなりますから、いろんな知恵を絞っていきたいと思っています」

人口減少・コロナ禍・・・変革が求められるバス会社

東北運輸局によると、東北地方では2017年度以降、毎年1000キロ以上のバス路線が廃止されていて、新型コロナでさらに悪化しかねない状況です。感染が終息してもすぐに客足は戻らないとみられていて、経営のあり方そのものを見直す必要に迫られています。

そうしたなか、経営を効率化することで苦境を乗り越えようという模索は各地で始まっています。熊本県では5つのバス会社が競合する路線で運行を分担する「共同経営」という取り組みをことし4月から始めています。ライバル同士が協力することで収益を回復させようという取り組みで、ほかの県でも導入が検討されています。

また山形県鶴岡市では、郊外の路線を乗り合いタウシーやコミュニティーバスに切り替えながら、中心部を循環する路線バスの維持につなげています。バス停の間隔を300メートルごとに狭め、高断者が乗りやすくする取り組みも進めようとしています。

今こそ将来を見据えた経営の効率化や、時代のニーズに合ったサービスの提供など、変革が求められています。

(仙台放送局 記者 杉本織江)
(山形放送局 記者 堀 征巳)
【2021年6月2日放送】