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これからは選挙行きます~コロナ禍で考えた 私の選択

NHK
2021年10月19日 午後6:08 公開

「今回は選挙行こうと思ってます」。
都内の大学生たちからこんな声を聞き、頼もしく思いました。
毎回、ほかの年代と比べて投票率が低い20代以下の若者たち。
ただ、コロナ禍で行われる今回の選挙はちょっと違うかもしれません。

10月20日(水)の「おはよう日本」でも詳しくお伝えします。NHKプラスでの配信はこちらから

取材した私もつい先月まで20代でした・・

この記事を書きましたアナウンサーの江原啓一郎です。NHK入局6年目、今は「おはよう日本」を担当しています。政治取材については新米で、今月4日の総理大臣指名選挙で初めて国会に足を運んだばかりです。「こうやって国会中継がでているのか!番記者ってこういう動きをするんだ」など、見るものすべてが新鮮でした。
ただ、私自身、政治に関心が高かったかといえば胸を張って「はい」とは言えません。これまでも投票には行っていましたが、理由は「家族が行くから・・・」といった程度でした。まして街頭演説を聞いて各党の政策を吟味することもありませんでした。私は30歳になりたてですが、同年代の友人たちも「選挙に行っていない」ことが多いように感じます。

低い若者の投票率

若者の低投票率はデータからも明らかです。
こちらは、18歳選挙権が導入された『2016年の参議院選挙』から『2019年の参議院選挙』までの3回の選挙の投票率です。全体と比べて10代・20代の投票率は低くなっています。

そんななか、次の衆議院選挙は今月31日に迫っています。若者たちは、今度の選挙をどう捉えているのか、同世代の(すみません!)私も気になります。

女子学生「コロナが政治を身近にした」

そこで取材に伺ったのが東京都内の大学のゼミ。長く新型コロナウイルスの影響でオンラインだったといいますが、ようやく対面での講義ができるようになっていました。

このゼミで主に政治学を教えている木暮健太郎教授です。若者が政治参加する意義を学ぶ「主権者教育」を長年行ってきた木暮さんに、早速さきほどの疑問を聞いてみました。すると、「今回は学生の反応が明らかに変わってますよ」という答えが返ってきたのです。

杏林大学 木暮健太郎教授 「毎回私は授業でコメント(感想)を提出してもらっているんですが、コメント量が違ってきていますね。今までですと一言くらいで終わっていたものが、2行とか3行とか、中には1本のリポートになるんじゃないかというぐらいに書いてくる子もいるんですね。このコロナ禍の状況ですと、『何かを変えないと自分たちの生活がよりよくなっていかない』という風に、なんとなくであっても認識し始めているように思いますね」

これはいい意味で意外でした。そこで、ゼミに所属する学生にも話を聞いてみました。その1人、大学3年生の赤澤里乃さん。今回初めて選挙に行くことを決めているそうです。その理由はやはり新型コロナだといいます。

大学3年生 赤澤里乃さん 「政治は雲の上の存在。自分にとって影響を及ぼす存在ではないくらいのイメージで、選挙に行かないことのほうが当たり前だったのですが、コロナになって自分に直接影響が出て、1度考える機会になったのは確かです」

コロナ禍で学生生活は一変しました。赤澤さんは今でも、ゼミ以外の講義はほとんどが「オンライン」。やむを得ないとはいえ、大学で友人と講義を受けたり、教授に気軽に質問したりできないことはやっぱり物足りないと感じたといいます。

また、影響はアルバイトにも及びました。赤澤さんは、学費以外にかかる交通費や食費などの費用は全て自分のアルバイト代から支払ってきました。しかし、バイト先の飲食店は緊急事態宣言で時短営業が長引き、シフトが大きく減ってしまい、収入は激減。支出を少しでも減らすため、これまでバスや電車を使っていたところを歩くようにしているといいます。

赤澤さん 「緊急事態宣言中のシフトは30分早めに入れてもらって8時まで。すごく短いです。影響は結構大きくて、月に換算すると何時間にもなるので、何千円、何万円と変わります」

肌で感じた“政治のリアリティー”

さらに、ゼミの中でも、政治への関心を高めるきっかけがありました。

それが、木暮さんに呼びかけられて始めた「センキョ割」という活動への参加です。
この活動、公職選挙法の趣旨にのっとりながら、投票率のアップを目指すものとして、いま全国各地に広がっています。
投票を済ませたことがわかる証明書などを見せると、取り組みに賛同する飲食店や専門店で『割り引き』や『サービス』などが受けられる仕組みです。

赤澤さんはゼミの仲間たちと地元の商店街を周り、活動について説明しました。
そのさなかには、コロナ禍で厳しい経営が続く窮状を訴える飲食店もあったといいます。

大学3年生 赤澤里乃さん 「やっぱりコロナを受けて、“政治は自分たちのことなんだ”というのがより鮮明にわかったなと思います。若者もこう考えているとか、意思を表明する場として、とても大事なんじゃないかと思います」

変わる兆しが若者アンケートでも・・・

赤澤さんたち若者の政治意識は変わりつつあると指摘する人もいます。一般社団法人日本若者協議会の代表理事の室橋祐貴さん。これまで若者の声を政治に伝えるため、与野党にとらわれず働きかけてきました。室橋さんらが、ことし8月、次の衆議院選挙について、インターネット上でアンケート調査を行うと、回答があった4万4629人の4割以上が20代以下でした。さらに、この20代以下を対象に次の衆議院選挙で最も重要だと思う政策を1つ選んでもらうと、以下のようになりました。

この結果について、室橋さんに聞くと「若者は国家全体のことよりも身近な政策への関心が高い結果ですね」と指摘し、やはりコロナ禍の影響が大きいのでは言いました。

一般社団法人日本若者協議会 室橋祐貴 代表理事 「若者たちの中には、学費や給付金などコロナ禍で身近となったトピックについて、オンライン署名などを積極的に活用して政治に働きかけた人たちもいます。それで政治が動いて物事が解決したケースも出てきています。政治と社会問題のつながりはどんどん濃くなっているので、もう少しで投票という結果にも表れてくるのではと期待しています」

“雰囲気づくり”も大切

もう一つ、室橋さんは重要な指摘をしました。それは「選挙に行くのは当然だ」という社会の雰囲気作りについてです。実は、今回選挙に行くことを決めた赤澤さんも、投票に行こうと思ったもう一つの動機として「後輩から選挙に行きましたという話を聞いて、すごく危機感を覚えて、(投票に)行ってないのが、ヤバいんだと思った」と話していました。室橋さんも政治への関心を高めるとともに、そうした社会の雰囲気も大切だと言いました。

室橋さん 「海外で投票率が高い国では『選挙にいくのは当然のこと』という雰囲気が国全体で醸成されているという事情もあります。投票率を上げていくには、こうした“雰囲気づくり”も大切な要素なんです」

「政治への関心を高めること」と「雰囲気づくり」。これは若者だけでなく、ほかの世代にとっても同じことなのだと思いました。
国会中継デビューしたばかりの私ですが、自分もこれから政治に関わる取材に取り組みつつ、友人や同僚、家族とも政治を語り合える「雰囲気づくり」も始めてみようと思います。衆議院選挙は、今月31日投開票です。

(おはよう日本 アナウンサー 江原啓一郎)
(おはよう日本 ディレクター 大淵光彦)

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