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SNSに潜む危険 “出会いのワナ”から子どもを守る

NHK
2021年5月26日 午前10:58 公開

時間があればスマホでついつい見てしまうSNS。いまどきの中高生にとっては、塾や学校との連絡にまで使われる「生活必需品」です。しかし、性犯罪などをたくらむ悪い大人ともつながってしまう危険性を秘めています。まずは、驚きの数字からご紹介します。

どのくらいの高校生がインターネットを通じて「知らない人とつながった」のかを示す調査です。
高校生4000人あまりに聞いたアンケート調査で「会ったことがない人とインターネットでやりとり」をしたことがある人は6割。インターネットでのやりとりに止まらず、「実際に会った」という人も2割近くいました。

全員30代の私たち取材チームにとって衝撃的な数字でした。プロフィールや写真が真実とは限らないのに、どうして知らない人と「リアル」で会ってしまうのか。危険があるとは考えないのでしょうか。実際に、SNSで知り合ったことをきっかけに、わいせつな画像を求められたり、性犯罪に巻きこまれたりする事件も増えています。

リスクの実態と対策を探りました。

“日本一安全”を目指すSNSの苦い過去

まず訪れたのは都内にあるSNS運営会社です。この会社が提供しているSNS「Yay!(イェイ)」は文章や画像のやり取りに加え、テレビ電話のように顔を見ながら通話をすることもできます。登録者300万人以上、うち4割が未成年だと言います。

未成年が利用するSNSは数多くありますが、今回、この会社を取材することにしたのは理由があります。それは「日本一安全なSNS」を目指しているから。

この会社には、以前提供していた別のSNSが犯罪に使われた苦い経験があります。大人がSNSの中で未成年になりすまし、直接会うことを求めるという手口でした。

開発・運営費6億円 40人がかりの安全対策

過去の経験から、未成年の利用者を守るために独自の体制を構築したこの会社の舞台裏を特別に見せてもらいました。これまでに6億円を投じて、投稿される文章や画像をチェックするAIを自前で開発。それに加えて、40人の人間の目によるチェックを組み合わせて、犯罪につながる危険を排除しようとしています。

新規登録の際にも年齢を偽って利用しないよう、学生証や保険証などの画像の提出を求めます。申請した生年月日と画像を照合、一致しない場合には、メッセージが送れなくなる仕組みです。提出された保険証の生年月日から計算すると10歳以上差があるケースも実際にありました。

さらに投稿される画像や文章にもAIが目を光らせています。出会いにつながる不適切と思われる文章や、性的な画像などを自動的に検出。他の人に表示されないようにします。

SNS運営会社代表 石濵嵩博さん 「以前は、利用者は悪いことをしない、問題を起こす人は入ってこないという意識で運営していたところもあります。反省点はいっぱいあります。安全に使ってもらえるよう、考え得るすべての策を打つ、これがプラットフォーマー(事業者)の責任だと思っています」

システムの裏をかこうとする利用者

しかし、どんなに優れたシステムを作っても、裏をかこうとする「悪い人」は当然います。そのせめぎあいが分かるのがこちらの画像。どんなメッセージが隠されているか分かりますか?

答えは下の画像を見てください。重さの単位を表す「㌘」という絵文字が意味するのはSNSのInstagram(インスタグラム)です。このメッセージは、みんなが見られる掲示板ではなく、Instagramのメッセージ機能を使って、直接、連絡を取り合いましょうと誘っているのです。

こうした「隠語」他にもあります。たとえば「緑」という隠語はLINE、「黄色」という隠語はカカオトーク、など直接メッセージがやり取りできるSNSを指していて、こうした隠語を使って連絡先を交換、2人だけの会話に持ち込もうとしているのです。犯罪につながる危険があるため、会社ではこのような連絡先の交換を禁止しています。しかし、どれだけ対策を考えても、裏をかく新たな手口が登場し「イタチごっこ」だと言います。

SNS運営会社代表 石濵嵩博さん 「ほとんどの人が正しく使い、問題を起こすような人ではありません。ただ、ごくごく一部に、そういう悪い方々がいたりすると、その人向けの対策っていうのがどうしても必要になる。その分のエネルギーを別のところにさけば、SNS上でもっと良いつながりが作れたかもしれない。そこはちょっと悔しいです」

SNS事業者の自主規制まかせの現状

ほかのSNS運営会社も、未成年を狙う大人の悪用対策に苦慮していました。下は警察庁が発表した、犯罪被害にあった子どもが多かったSNSの一覧です。

各社に取材したところ、どの社もそれぞれ対策を取っていました。
*「ひま部」はサービスを終了しています。

事業者がどれだけ対策をとっても、年齢を偽って登録したり、「出会い」を目的として未成年に個別に連絡しようとしたりする人は後を絶ちません。そうした行為自体を法律で取り締まることは難しいのが現状です。

トラブルに巻き込まれないために 2つのポイント

では、SNSに潜むワナから未成年を守るにはどうすればいいのでしょうか。教育とSNSの問題に詳しい兵庫県立大学の竹内和雄准教授は、大切なポイントが2つあると言います。

・知らない相手と画像・動画をやりとりしない
・相談相手を事前に決める

画像や動画のやりとりで、自分の容姿を相手に知られてしまうと「パパ活」などを誘発するリスクが高まると言います。相手から、求められても断る勇気が大切です。

SNSで知り合った相手とトラブルが起きた時、「親や家族には知られたくない」と思う未成年もいます。家族以外にも相談できる大人がいることを、トラブルに巻き込まれる前に、あらかじめ伝えておくことが大切だと言います。学校や地域の相談窓口はいろいろありますが、「#9110」という番号に電話すると、警察につながり最寄りの相談窓口を紹介してもらうこともできます。匿名での相談も受け付けてくれます。

SNSに引き寄せられる子どもの気持ち

「危険だから知らない相手とSNSでつながるのはやめなさい」

親の立場からするとそう言いたくなりますが、頭ごなしに禁止するのは逆効果かもしれません。竹内准教授は「心の問題」を強調しました。SNSでしか知らない人に、会いたいと思ってしまう、子どもの気持ちを理解しなければ解決に結びつかないというのです。その手がかりを求め、取材したのは、大学生がSNSに潜む危険を減らそうと取り組む「ソーシャルメディア研究会」です。

大学生が中心になって、ボランティアでSNSの投稿をチェックしています。援助交際など犯罪につながる危険性があるものを見つけたら、警察に連絡します。インターネットの問題を考えるイベントなどをきっかけに始まり、2年間でおよそ250件の投稿を警察に報告しました。

年齢が近いだけに大学生は、問題のある投稿をする中高生の気持ちも分かると言います。

学生 「承認欲求を満たしたいとか、病んでいるとか、寂しさを感じている言葉がだいたい出てきます」 「居場所がなくて、寂しくてパパ活で人とのつながりを求めてするという人も増えています」 「学校で明るくやっていても、心の奥で何か悩んでいることがあるかもしれない。その悩みを解決しなければ、多分この問題はいつまでも解決しないと思う」

中学校の教師だった経歴を持つ竹内准教授は、こうした「寂しい」「居場所がない」と感じる子どもの気持ちを理解することが問題解決の前提だと考えています。実際に、文化祭や合唱コンクールなど学校行事が多い時期は、SNSなどのトラブルが極端に少ない傾向があるそうです。現実の生活が充実していれば、SNSで見知らぬ人とつながる必要性が減るためではないかと竹内准教授は分析していました。「SNSばかりやって」と表面上の行為をとがめるのではなく、子どもの心の奥底の気持ちに向き合う大切さを取材していて強く感じました。

最後に、私たちの印象に残った竹内准教授の「たとえ話」をご紹介します。道路を使わなければ事故に遭わない。しかし、使わないわけにはいかない。交通ルールを守っていても事故は起きるかもしれない。インターネットが道路と違うのは、手を伸ばせば助けられるかもしれない子どもがたくさんいるということ。そのためのルールを子どもたちと一緒に考えていくことが大切なのです。

(おはよう日本 アナウンサー 渡辺健太)

(おはよう日本 ディレクター 近藤伸郎/五十嵐哲郎)

【2021年4月30日放送】