どうなる日本経済!? 後藤達也さんと中空麻奈さんが斬る①

NHK
2022年8月17日 午前10:59 公開

「こんなに値段が高いの!?」「収入が全然増えない」――。いま日本経済の先行きに不透明感が漂っています。 

「物価を上げるプレッシャーはずっと続いていく」との指摘もある中、今後の日本経済はどうなるのか、私たちはどうすればいいのか?気鋭の専門家2人にとことんインタビューしました。 

答えるのは、経済分析一筋30年、外資系証券会社のストラテジストの中空麻奈さんと、経済を分かりやすく伝え、SNSのフォロワー数が約38万人を超えている後藤達也さんです。 

(おはよう日本キャスター 副島萌生)

▼放送の動画はこの記事の文末にあります▼

ウクライナ情勢、新型コロナ…リスクが多い日本経済 

まず聞いたのは「これから景気がどうなるのか」です。中空さんは期待を込めて「よくなる」と予想。一方後藤さんは「停滞が深まる」と答えました。 

一見正反対の見通しを示した2人ですが、「リスクが多い」という点で共通していました。 

中空さん 

「このまま放っておくとどちらの方向に行くかというと、ともすれば悪くなる。その下方の圧力は強いと思っている」 

――下方の圧力が効いてしまう要因は何でしょうか? 

中空さん 

「たくさんあると思っているが、例えば外部要因から見ても、ロシアによるウクライナ侵攻はいつ終わるのか。長期化していくと物価が上がっていきますよと。物価が上がっていく中で、世界中で金利をいま上げている。金利を上げていることがさまざまな資金調達コストを上げたり(日本も含めて)企業業績に影響してくる」 

後藤さん 

新型コロナについては最近感染者がかなり増えているけれども、従来だと例えばレジャー、旅行に行くとか外食に行くという消費が鈍る面がある。それに加えて供給の面、なかなか働きづらいというところが増えてきている。視聴者の方も実感があるかと思うが、ご自身が感染したり、家族あるいは身近な会社の仲間がかかったりして出社できないということ、連鎖するようなことが結構起こっていると思う。供給の面からしてみてもコロナは経済の足かせになりうる」 

物価高はいつまで続く? 

――私たちの生活を圧迫している物価高はいつまで続くと見ていますか? 

後藤さん 

「やはりこの先1年ぐらいは強いインフレはどうしても続くと思う。エネルギーにしても円安にしても、だいたい半年から1年ぐらいは物価上昇に影響しやすい傾向もあるので、この半年ぐらいで為替もかなり円安が進んだということがあるので、その残存効果みたいなものは効きやすいと思う」 

中空さん 

「私は、いつまでとなかなか言えないぐらいまだまだ続いてしまうと残念ながら思う。ロシアによるウクライナ侵攻が続いている限り、やっぱり金額、価格は上がっていってしまう」 

――ウクライナ情勢が落ち着いたら物価高も落ち着くことにならないでしょうか? 

中空さん 

「1つのポイントにはなると思う。でも元どおりかと言われると、サプライチェーンとか一国に依存してはいけないとか、1つのエネルギーや1つの食料品に依存していてはいけないことに今回の問題でそれぞれの国は気付いた。それに合わせて政策をとっていくので、また違う動きにはなってしまうと思うが」 

賃金上昇のために「雇用の流動化を」

物価高の影響を抑えるために必要なこととして、2人が口をそろえるのが「賃金の上昇」です。日本の賃金はこの30年ほぼ上がらなかったとされています。2人はその背景として、不況の中で雇用を守る日本型のシステムがあり、一定の効果もあったと分析しています。 

ただ、年功序列や終身雇用が今の時代にそぐわなくなり、成長産業への人の移動を妨げているのではないかと指摘します。

中空さん 

「私は日本のこれまでの雇用体系、年功序列とか終身雇用とかが功を奏してきたと思っているが、やはりだんだん時代に合わなくなってきていると思っている。時代に合わなくなってきているものをちょっと正していきましょうという動きが必要だと思う。 

いちばんいいのは全員を雇ったままどんどん成長して、すごく収益も上がってもうかることだが、それができるかというと、そしてすべての企業にそれができるかというとわりと難しい。私は雇用の流動化ということも同時に図る必要があると思っている」 

後藤さん 

「景気が多少よくなったり株価が上がったりしても賃金はなかなか上がらないということが、この10年で分かったことだと思う。そこに横たわっているのは、中空さんがおっしゃった雇用のところは大きいと思っている。 

私はやはり雇用を流動化すれば賃金は上がりやすいというところはあると思う。例えば『どうせこの人は会社を辞めないだろう、無理を言っても働き続けるだろう』となると、重たい仕事を任されつつもなかなか賃金が上がらないということが起こりやすいと思う。これまでの日本ではそういう企業が多かったと思う。でも結局辞めてしまうと、30歳40歳になって辞めてしまう人が場合によって(給料が)いいところへ行ってしまうとなると、それは健全な労使関係というか、雇い続ける側も『どうせお前らは辞めないから安い給料でもいいだろう』とはならなくて、きちんと仕事を与えたり、きちんと対価を支払い賃金を上げたりというふうになる。これまで日本経済で20年30年続いてきた常識みたいなものが、少し変わっていくことが大事なんじゃないか」 

そのために後藤さんは、リスクをとってでもより高い賃金を求めて転職しやすい環境を整備する必要があると見ています。後藤さん自身、2022年3月に18年勤めた大手新聞社を退職しました。 

後藤さん 

「伝統的な日本企業だと、その社内の中でこれは何点だと上司に褒められる。いい点数を取った、90点だと言われていたとしても、じゃあ外に出た時にそのまま90点の評価が得られるかというと、あくまで会社の中でしか通じないことは結構あると思う。 

会社を辞めることは外でどう評価されるか分からないし、慣れてきたこれまでいた会社で使えていたスキルが外でどこまで使えるか分からないので不安なことはもちろん多いと思うけれど、(会社に)残っていることは残っていることで結構リスクがあるかなと思った。 

特に20代30代、あるいは10代の人がこれから社会に出ていくにあたっては、そのへんの意識を持つことは、厳しいかもしれないけれど避けられなくなってきているんじゃないか」 

中空さんは「雇用のあり方を幅広く議論する時期にきている」と指摘します。 

中空さん 

“ジョブセキュリティー”というんですかね、雇用があるほうが安定だということと、(雇用の流動化で)給料が上がったほうがいいよねという、どっちがいいですかということは、みんなで考えたほうがいいかもしれない」 

後藤さん 

「どの程度軸足を移すのかは、確かにいろんな国民の意見も聞きながら政策の方向性を考えることは大事かなと思う」 

中空さん 

「雇用の流動化を図るとなると一時的にせよ職を失う人が出てくると思う。そのために日本政府として万全なセーフティーネットを用意しなければいけない。これは、ないと困ると思う。こういったことをやることによって、おのおのの働きに見合う報酬が手に取れるような労働市場があったらいいんじゃないか」 

▼対談のようすを動画でも(この動画は8分35秒あります)▼

【2022年8月17日放送】