愛車に乗り続けて53年 共に歩んだ家族の歴史

NHK
2022年7月12日 午後2:17 公開

昭和40年代前半に製造されたトヨタの「初代カローラ」が、いまも現役で走り続けています。青春時代にあこがれの車を買った男性は、デートにも子育てにも同じ車を運転してきました。その間カローラは累計販売台数が5000万台を達成し、"世界で最も売れた車”として知られるようになったのです。男性が半世紀以上思いを乗せてきた愛車は、このたび家族の歴史とともに博物館に収められることになりました。 

“調子はばっちり” 地球14周、今も現役です!

今も現役で走る初代カローラの持ち主は、千葉県に住む浅田正吾さん(77)とその家族です。 

通勤や買い物、旅行など、53年間にわたって、この車に乗り続けてきました。 

浅田家の初代カローラは、いまも調子は絶好調だといいます。 

メーターは6万3000キロと表示されていますが、本当の走行距離は56万3000キロ。 

桁がないので表示されないのです。 

実に地球をおよそ14周した計算です。 

豊田市にとって貴重な資料 博物館に展示へ

浅田家の車は、半世紀あまりの時を経て里帰りすることになりました。 

メーカーのおひざ元、愛知県豊田市の博物館に常設展示されることになったのです。 

豊田市の博物館は、先端的な技術を生み出した市の歴史や文化などをテーマに、総工費約88億円をかけて旧豊田東高校の跡地に建設中で、2024年にオープンする予定です。 

豊田市は、市民が誇れる博物館にするために、浅田さんの車は欠くことができない貴重な資料だと考えています。 

豊田市博物館準備室 高橋健太郎室長

浅田さんのカローラは、昭和から平成、令和と生きてこられた方の人生や家族形成というものと非常に深く関わっています。家族と培ってきた思い出というか記憶みたいなもの込みでその車に乗っています。非常に価値が高いというふうに判断させていただきました」 

家族に寄り添い続けた53年

浅田さんが車を購入したのは昭和44年。独身だった24歳の時です。 

当時の年収の2年分を思い切ってつぎ込み、初めて車を手に入れました。 

高度経済成長とともに、マイカーが一般家庭にも普及し始めた時代でした。 

浅田正吾さん

当時は、車が欲しいなって感じでした。若者だったから

その後、妻の美津子さん(71)とのお見合いに出かけたときも。 

そしてデートや京都への新婚旅行も、この車で行きました。 

浅田さん夫婦に娘ができてからも、ドライブや海水浴など家族との思い出の多くの場面に、この車がありました。 

美津子さん

私(出身が)福島ですから宮城県をぐるっとまわったり、あと東京で待ち合わせしたりしたときも、みんなその車と一緒でした

そして、こんな写真も残していました。 

左側が生後間もない長女の八千代さん。 

そして右側が初孫の彩海さんです。ともに助手席に寝かせて撮影しました。 

その2人はいま、40代と20代です。 

浅田正吾さん

家族と共に歩んできたんですね、あの車は。それで手放そうって気持ちが全然なくなっちゃってね

部品が手に入らないときは海外から

車を半世紀以上にわたり維持できたのは、機械いじりが好きだったことも要因の1つです。 

販売会社に部品がないと言われてからは、ほかのメーカーのもので代用することも。 

フェンダーミラーはタイから、タイヤはインドネシアなど、古い日本車が走っている東南アジアから取り寄せたりして、メンテナンスを続けてきました。 

30年以上乗り続けられている車は1.9%

自動車の登録情報を取り扱う団体によると、新車で購入されて30年以上乗り続けられている車は、2021年3月末現在、1.9%しかいないということです。 

そのひとりが俳優の伊藤かずえさんです。 

32年間、日産シーマに乗り続けています。 

伊藤さんは「乗り心地の良さなど、良さを上げたらキリがありません。車は相棒であると同時に家族の一員です」と話していました。 

博物館では浅田さん家族の歴史も紹介へ

浅田さんのカローラは、2022年7月末に豊田市側に引き取られる予定です。 

博物館では車とともに浅田さんと家族の歴史なども紹介する予定だということです。 

愛車の里帰りを前に2人は…。 

美津子さん

やっぱり愛着があるからさみしい、本当に長い間ご苦労様です」 

浅田正吾さん

よく53年も動いたよね。永久保存になるっていうのがうれしかったですね。また会いたくなったら、博物館に行けばいつでも会えるんだから」 

大切に手入れをしながら53年、家族と共に歩み続けてきた初代カローラ。 

博物館の展示という思いも寄らない出来事が、家族の新たな歴史の1ページに刻まれます。 

(おはよう日本 チーフプロデューサー 鈴木章広、ディレクター 鈴木俊治)

【2022年7月2日放送】