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“おちょやん”主演 杉咲花さんインタビュー ほぼ全文掲載

NHK
2021年4月30日 午前10:23 公開

最終回まであと1か月というタイミングで、朝の連続テレビ小説“おちょやん”主演の杉咲花さんにインタビューしました。名シーンの舞台裏、大女優を演じるプレッシャー、コロナ禍の中でのドラマ作りで感じたこと、そしてファンなら気になる父、テルヲについて、たっぷりと語ってくれました。
聞き手は、朝ドラ愛があふれる、おはよう日本キャスターの高瀬耕造アナウンサーです。脱線?も含めて、放送に入りきらなかった部分まで一挙公開します。

朝ドラ “おちょやん”ヒロインの素顔は

高瀬:よろしくお願いします。

杉咲:よろしくお願いします。

高瀬:和装じゃないですよね、そりゃ。

杉咲:そうですね。洋服です。

高瀬:そうですよね。いや、すっきりした感じに。

杉咲:本当ですか?

高瀬:何がすっきりかは分からないけど(笑)

いつになく緊張気味の高瀬アナ。やや動揺した挨拶から始まりました。とまどうのも無理はないのかもしれません。このインタビューの時点では(4月9日)杉咲さんが演じる千代は、一座を背負って立つ、頼もしい大人の女性。清楚なワンピース姿のこの日の杉咲さんとはずいぶんギャップがあります。

喜劇の世界に生きる大女優を演じて

ご存知のかたも多いでしょうが、ここからのインタビューの前提となるので、朝の連続テレビ小説”おちょやん”のストーリーをご紹介します。

明治の末、大阪の南河内の貧しい家に生まれたヒロイン、竹井千代は小学校にも満足に通わせてもらうことができず、9歳のときに、道頓堀の芝居茶屋に女中奉公に出されます。そこで目にしたのが、華やかな芝居の世界。

彼女は女優を志し、芝居の世界に飛び込んでいきます。そこで、喜劇界のプリンス、天海一平と出会い、結婚。

喜劇女優として少しずつ成長していく…というお話。物語の後半は戦争の影響も色濃く出てきます。

高瀬:まもなく撮影が終了するというタイミングですけれども、今どうですか。終わろうとしている心境は。

杉咲:いや、もう寂しすぎて。

高瀬:寂しすぎて?

杉咲:本当に毎日楽しかったので、千代を演じられないっていう事と、現場のみんなにもう会えなくなっちゃうっていうのが本当に寂しくて、もう一生撮影していたいって思っています。

高瀬:一生撮影していたい。

杉咲:そうですね。年末にお正月休みがあって東京に帰っていたんですが、その帰り道に新幹線の中で現場にいないと自分にできることってほとんどないんだなって思ってすごく寂しくなってしまって、それぐらい”おちょやん”の撮影している時間、期間は休みもいらない、と思っていました。

喜劇の舞台シーンの苦労

杉咲さんが演じる千代は後に大阪を代表する大女優になる人物。ドラマの中で何度もある舞台のシーンをどう演じるか、悩むこともあったと言います。

杉咲:“おちょやん”っていう作品自体も喜劇でもあるので、クスッと笑えるようなシーンが結構あるんですけど、やっぱり台本読んで面白いって思ったところを面白くしようって思ってしまっている自分がいて。でも、千代は決して人を笑わせようと思ってやっているわけではなくて、一生懸命やった結果が滑稽に見えたり、くすっと笑えたりするっていう、そのバランスがすごく難しくて。人に笑ってもらうって本当に難しい事なんだなって改めて痛感しました。

高瀬:笑われるのと笑わせるのも違いますし、芸人の皆さんが普通にやっている事は、いざやろうとすると難しい?

杉咲:そうですね。

高瀬:笑われるタイプですか。笑わせるタイプですか。

杉咲:笑われるタイプだと思います。すっとぼけてるところがあるみたいで。自分でも感じます。だから笑われてしまいます。

高瀬:みなさんで演じている中で、舞台のクォリティもかなり上がっていった感じですか。

杉咲:そうですね。撮影してない時も一座のみんなの仲が良すぎて、常にツッコミが飛び交っている現場で。 チームワークがどんどんよくなっていくからこそ、演じている時もテンポ感がどんどん出来てきてすごく楽しかったですね。本当に家族みたいな、スタッフさんも含めて千代にとっての鶴亀家庭劇が自分にとっての現場みたいな感じでしたね。 「手違い話」っていう劇中劇をやった時、一座が作られて初めての劇なんですけど、まだ集まってすぐで、最初はみんながバラバラで気持ちが同じ方向に向いてないっていう状態から、ちょっとずつ団結力が生まれて、いいお芝居になっていくっていう設定で、その落差を付けるのにすごくみんなで悩みました。

高瀬:「まだメンバーとそこまで打ち解けてないですよ」感を出すために、ちょっと“ぎこちなさ”をあえて出すっていうことですか?

杉咲:はい。そうですね。最後にやっぱり、千之助さんに振り回されながら、みんなが必死に食らいついてアドリブで返していくという内容です。でも私たちの手元に渡されている台本は、アドリブとされている部分もちゃんとセリフとして書かれていて。監督に注意されたのが、そういう内容の劇として完成されてしまっているから、その場で必死に、私だったら千代がおきんっていう役を演じて、出てきた思い浮かんだセリフっていうことを大切にしてほしいっていうふうに。

高瀬:難しいリクエストですね。

杉咲:そうですね。結構複雑だなって思っていました。

稲妻が走った? 大阪ことばの“啖呵”

さらに、話題はドラマの中で杉咲さんが話す“大阪ことば”に。杉咲さんは東京出身ですが兵庫県出身の高瀬アナが聞いても違和感のないものだったと言います。

高瀬:見事な大阪弁、大阪ことばですね。

杉咲:ありがとうございます。クランクインする1年ぐらい前から方言指導の先生に教えて頂いて、毎週3泊ぐらい大阪に通いました。

高瀬:そんなにやってたんですか。私が本当に衝撃を受けた言葉がありまして。「やったろうやないけ!」と千之助さんに啖呵を切るシーンです。私もう稲妻が体の中に走るぐらいウオーと思ったんです。

杉咲:本当ですか。

高瀬:大阪の人を演じた朝ドラで、あそこまでシャープな、かつ強い言葉を話すヒロインっていなかったと私は勝手に思っているんです。

杉咲:うれしいです。

衝撃!高瀬アナのモノマネ 杉咲さんのリアクションは??

高瀬:一緒にやっている桑子アナウンサーも言っていたのですが、千代ちゃん、ヒロインの存在がすごく大きく見えるんです。ドーンと真ん中にいる存在感がすごい。

杉咲:そうなんですか?そんなふうに言って頂いたのは初めてなので、うれしいです。

高瀬:ですから、好きすぎて、ずっと見すぎて特徴ちょっと掴んじゃって。千代は何か言いたげな時はあごを引く、あごを引いて下を見つめるみたいな。

と言いながら見せたのが下の写真の表情です。

杉咲:お恥ずかしいです(笑)

高瀬:そのくらい、ずっと見てまして。

杉咲:ありがとうございます。

#朝ドラ送りを見てもらいました

高瀬アナがどのくらい“おちょやん”を愛しているかという話から、朝ドラ送りの話題に。

朝ドラ送りとは、8時のドラマ放送直前、首都圏のみで放送しているおはよう日本の中で、高瀬アナウンサーがドラマについて語る、謎のコーナーです。
おはよう日本の公式Twitterをフォローすると首都圏以外の地域にお住まいの方にもお楽しみいただけます。

●リンク:これまでの朝ドラ送りはこのページでご覧いただけます

高瀬:撮影中は大阪に住んでいるという事ですから、ご存知ないかもしれませんが、実は朝ドラの直前に私が朝ドラ送りと呼ばれるものをやっています。

杉咲:いつもありがとうございます。

高瀬:すみません。勝手にやっていたんですが、その噂を聞いたことは?

杉咲:もちろんありますし、東京に帰ってきた時とかに高瀬さんの朝ドラ送りを拝見しました。

高瀬:まずいですね(笑)

杉咲:本当に愛情たっぷりの朝ドラ送りありがとうございます。

高瀬:ちょっとですね、それをこちらに用意したので。

杉咲:え?なんですか?

用意したタブレット端末で過去の朝ドラ送りを杉咲さんに見てもらいました。

●リンク:杉咲さんに見てもらったのは、この回です

杉咲:これ、見てました(笑)

高瀬:ちょっと親にも確認して、子どもの時に行った、兵庫県の三木市か三田市だったと思うんですけれども、たまたま野外コンサートやってて。初めて見たアイドルだったんですよね、いしのようこさん。

杉咲:そうだったんですね。

高瀬:その、いしのさんがこうやって菊さんになって出てきて。

杉咲:思い出深い。

高瀬:兵庫県なんです、私。だからヨシヲのことばも、あれ微妙に大阪からずらして神戸のことばになっていますよね。

杉咲:なってました(笑)

高瀬:いちいち細かいところにですね、私、興味を持って。同じ朝の番組として一方的にですね、つながっていたいというのが、朝ドラ送りのココロです。思いをちょっとあふれさせすぎることがあるかもしれませんけれども(笑)

コロナ禍の今と重ねあわせて

毎朝、放送されるのが当たり前と思われていた朝ドラ。しかし、コロナ禍でドラマの制作をとりまく環境も一変しました。

高瀬:前作“エール”の放送が途中で休止になったりする事もあり、“おちょやん”はいつから放送できるんだろうとか、ある意味、“エール”以上に影響を受けていた部分もあったと思うんですが、自分のお仕事に対し、いろいろと考えた1年でもあったんじゃないですか?

杉咲:私自身おちょやん”の台本を読むっていう時間が多かったんですけど、そうじゃない時に結構いろんな映画とかドラマとか、音楽聴いたり本読んだりとかして、なくても別に生きていけるけど、あった方がずっと豊かで、エンターテインメントっていうものに自分がどれだけ救われているのかっていう事を改めて実感した期間でした。

高瀬:多くの視聴者が、なかなか今したい事もしにくい、行きたいところにも行けないっていう中で、毎朝おちょやん” を本当に楽しみにしている方が多いと思います。

杉咲:うれしいです。

高瀬:特別な作品になったと思っています。

杉咲:ありがとうございます。

“おちょやん”は谷が深すぎる?

人生、山あり谷あり。泣き笑いがドラマの常。でも、“おちょやん”では登場人物を襲う不幸が多すぎるのではないか、高瀬アナは朝ドラ送りでたびたび指摘してきました。その疑問を杉咲さんにぶつけました。

高瀬:このドラマって「山あり谷あり」の谷が深すぎると思うんです。

杉咲:そうですよね。

高瀬:これぐらいでそろそろと思ったら、まだ落ちる、まだ落ちるか、みたいな。杉咲さんは台本読んでいて、「まだやるか」みたいなのなかったですか?

杉咲:本当に千代は強いなって思いながら演じてました。

戦争でさまざまなものを失ってしまう千代。戯曲「人形の家」を観客もいない中、熱演します。自立して生きていこうとする女性が思いを語る場面です。戦争で失ったもの、再び芝居にかける決意、すべてがこもった杉咲さんの迫真の演技が話題を集めました。

高瀬:今後を見ていく上でもおそらく大事なシーンだろうと思うのが「人形の家」のシーンだと思うんですけど、どう臨みましたか?

杉咲:そうですね。自分の中でもすごく印象に残っているシーンです。戦時中を生きる人を演じるのが今回で3回目ぐらいだったんですが、自分自身、経験したことのない出来事なのですごく難しくて…今回は特に、演じる期間も放送では2週間で、割と撮影も長かったので、今まで以上にいろんな人の戦時中に書いていた日記とか、その時代を生きた俳優さんの本とか、いろいろ資料を読みました。自分の中では、一番この時代を生きる感覚ってこんな感じだったのかなっていう輪郭がはっきりしたような感覚があって。あとは今のこのコロナ禍とも、どこか大切なものが奪われていくっていう意味では通ずる部分があるのかなっていうふうに感じて、そういうのもあったからこそ「人形の家」で千代が言ったセリフはすごく共感できる点がいっぱいあって。でも、これまでも「人形の家」のセリフを言うシーンはいくつかあって、そこは千代は関西の人だから関西弁が抜けてないっていう設定でやっていたんですけど、監督と「このシーンはどっちなんだろう」って話し合って、千代もいろんな経験を重ねて、年も取って、きっと作品の内容を今まで以上に理解していて、描かれていない部分でも苦しい時とか一人になりたい時とかに、あの台本を読んでたんだろうなって思って。だからあのシーンの千代は自分の内面的な感情を放出させたシーンでもあるけど、あくまで「人形の家」のノラっていう登場人物を演じているっていう解釈でやってました。なので、標準語にしようっていう事になって。

高瀬:それ、言われて初めて気付きました。

杉咲:本当ですか。

高瀬:そうだったんですね。もうエネルギーがすごくて。ちょっと後で見返します。やっぱり見ている私たちも、もしかしたら今までよりも少し、戦時中の、もちろん違う事はいっぱいあるんでしょうけど、ちょっと何か感じ入るものがあるのかなって気はしますね。

このあとの見どころ

最終回まで、インタビューの時点で残すところ1か月余り。気になるこのあとの展開を聞いてみました。

杉咲:高瀬さんが先ほどおっしゃった“谷”が、これからもまだあるかなっていう感じです…

高瀬:まだありますか。

杉咲:でも本当にどんな事があっても千代はへこたれずに負けない女性なので。一歩一歩進んでいくので。 「千代だったら大丈夫」っていうのを私自身も台本見て常に思っていました。こういうご時世だからこそ大変な事もたくさんあると思うんですが、”おちょやん”を見るその一瞬だけでも嫌な事を忘れられたり、明日につながる歩を踏み出せる勇気にちょっとでもなったらいいなっていう思いで撮影していたので、皆さんに届いたら、うれしいなと思います。

あらためて問う 父テルヲの存在

インタビューの最後に、高瀬アナがもっとも聞きたかったこと、そしておそらく“おちょやん”ファンの多くも知りたいであろうことを質問しました。ヒロイン千代の父親で、酒もばくちも、そして女も好きなトラブルメーカー、竹井テルヲ。トータス松本さんの演技が強烈な印象を残しました。

高瀬:やっぱり、あのテルヲじゃなきゃ今の千代はなかったっていう事でもあるんでしょうね。

杉咲:本当にそう思います。よくも悪くも千代の人生を動かせる人がテルヲだったんだなって。

高瀬:あえて総括したいんですが、一体テルヲは何だったのか、“おちょやん”におけるテルヲとは何だったのかって教えて下さい。

杉咲:ええ、難しい。そうですね。何だったんですかね。千代にとっての希望であり、絶望でした。

高瀬:・・・! そこに尽きるのかもしれませんね。

杉咲:そうですね。

高瀬:死んだあともどこかでずっとテルヲを感じてしまう、どこかでずっとテルヲを感じようとしてしまう。

杉咲:そうですね。強烈に残りますよね(笑)

【2021年4月16日放送】