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「再開できない」 被災地の町内会

NHK
2021年4月27日 午後4:31 公開

夏祭りなど地域のイベントの開催や、防犯パトロール、ごみの集積所の管理などを行う町内会。自治会・区会などとも呼ばれます。日常生活では、地域住民の交流や行政との橋渡しを担う身近なコミュニティーですが、いざというときに頼りになる存在でもあります。西日本豪雨によって甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町では、町内会が主体となって無事に住民を避難させることができた地区がありました。一方で、被災から3年がたとうとしている今も、かつてのような活動を再開できない町内会が相次いでいることがNHKの独自の取材で分かりました。

西日本豪雨 住民の“共助”で無事に避難

「平成最悪の豪雨災害」、西日本豪雨。倉敷市真備町では、町の面積のおよそ3割が浸水し、逃げ遅れた住民など51人が犠牲になりました。

そんな中、住民全員が安全に避難を果たした地区があります。およそ40人が暮らしていた原田団地です。町内会の住民が互いに連絡をとりあって、避難勧告が発令される1時間半前に避難を開始。移動が困難な高齢者は、近隣住民が手助けすることで、高台に避難することができました。

原田団地 自治会長 東末明さん 「隣近所というのは大事です。町内会の活動を通して普段から顔をあわせているからこそ、避難が難しい高齢者の状況などを把握することができます。遠い親戚よりも、近所3軒両隣じゃないけどやっぱり助け合わないと」

再開できない町内会 その理由は“移転”や“高齢化”

しかし、あの日から3年がたとうとしている今も、かつてのような活動を再開できずにいる町内会が少なくありません。その 1つが「井領地区」です。豪雨で、すべての住宅が5メートル以上浸水しました。地区にはもともと、 14世帯が暮らしていましたが、戻ったのは4世帯だけだといいます。半年ほど前に自宅を再建し、地区に戻ったという須増伸治さんによりますと、最近、地区ではかつての住民どうしが集まって話をする機会もないといいます。さらに、豪雨によって住民たちで使っていた集会所も倒壊し、活動拠点も失いました。こうした状況から、今後、町内会をどうするのか、具体的な方針も決められずにいます。

井領地区 住民 須増伸治さん 「被災前は住民たちで集まっていろいろな話し合いをしていましたが、被災から3年がたち、いまではそうした活動がないことがあたりまえになってしまいました。住民からは『住民どうしの活動はなにもかもやめてしまおう』という声もあがり始めています」

中には、町内会を「解散」した地区もあります。もともと50世帯余りが暮らしていた、ある地区では、被災直後に町内会を解散しました。いまでは40世帯近くが戻ってきていますが、住民の高齢化もあり、町内会を再開できずにいます。この地区に住む80代の夫婦は、「みんな歳だし、協力して一緒に何かやろうっていう元気がない」と話していました。災害に備える必要性は感じながらも、地域の清掃や子育て世代の支援などさまざまな役割を担う、かつてのような町内会の活動は自分たちには困難だといいます。

町内会は実数の把握が困難

活動を再開できずにいる町内会は、どれだけあるのか。倉敷市に問い合わせたところ、正確な数は把握していませんでした。町内会は住民による任意の団体のため、届け出る義務がないからです。
しかし、取材を進めると、市の広報紙の配布状況から、かつてのように活動を再開できずにいる町内会が少なくない傾向がわかりました。市は、広報紙を配布する担当の住民を、主に町内会ごとに登録しています。西日本豪雨の前、真備町では、 384人が登録されていました。それが、4月の時点で271人と、およそ3割減っていることがわかったのです。専門家は、被災地で再び災害が起こるリスクはゼロではないことから、自治体などが積極的に支援してコミュニティーを再生させる必要性を指摘します。

被災地のコミュニティー支援に詳しい 岩手大学 広田純一 名誉教授 「(町内会などの)コミュニティーは自然にはできないんですよ。個々の基礎コミュニティーが被災してしまっているわけなので、自然治癒を待っていてはそういったこと(解散など)になってしまうから、やっぱり治療しないといけない。当事者だけではなかなか今は難しくて、行政なり外部のNPOなどが協力してやることが一番良いと思いますね」

町内会 再開させるための方策は?

真備町では、地元の住民たちが主体となって、町内会の活動再開の支援にあたっています。しかし、住民どうしでできる支援には限界があり、本格的な再生には道半ばの状態です。
では、町内会の再開に向けて、どんな具体策があるか。専門家が指摘していたのは、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町の事例です。町が住民の中から「地域コーディネーター」となってくれる人を選んで、町内会の再生や地域の活性化などにあたってもらっています。さらに、地域コーディネーターには、町が主体となって定期的に研修を実施。専門家がコーディネーターをサポートする体制も整えています。

大槌町 前コミュニティー支援担当者 高橋伸也さん 「地域の防災・減災の取り組みとか、コミュニティーが活性化することで行政が助かる部分はあると思います。『コミュニティーは住民のものだから』と支援を行わないのではなくて、行政には住民と伴走していく姿勢が求められているのだろうなと思います」

取材を進めていて印象的だったのは、町内会がもともと抱える活動の多さです。活動を再開させるためには、住民と行政が一体となって、町内会にとって本当に必要な活動は何かを考え、活動を取捨選択することも必要だと感じました。

(岡山放送局 記者 周英煥)

【2021年4月23日放送】