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“家族”と認められない 同性カップルの現実

NHK
2021年6月24日 午後3:20 公開

“同性婚”のぞむ人たち しかし社会の現状はいまだ・・・

ことし3月、札幌地裁で出されたある判決が大きな注目を集めました。
同性どうしの結婚が認められないのは、「合理的な根拠を欠いた差別的な扱いだ」として憲法に違反するという初めての判断を示したのです。しかし原告側は、法律を改正しないと、実生活での差別はなくならないとし、控訴しています。

NHKは、3月26日から28日までの3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で、ジェンダーに関する世論調査を行いました。調査の対象となったのは2890人で、このうち52.2%にあたる1508人から回答を得ました。それによりますと、6割近くの人が同性婚を認めることに『賛成』だと答えていました。

しかし、同じ世論調査で、家族から「男どうしで結婚したい」、「女どうしで結婚したい」と聞かれた時、『受け入れられる』と答えた人は、大きく人数が減り45%にとどまりました。

まだまだ、同性のパートナーがいる人たちにとって厳しい状況が続く現在。
当事者たちは、同性のパートナーを「家族」と認めてもらえないことが原因で、生活をする上での困難にさらされることもあります。

同棲が断られたため 1人暮らしを装う

都内の賃貸マンションに2人で暮らすタケシさん(仮名)とハナエさん(仮名)です。
タケシさんは、男性として生活していますが、戸籍上は女性です。
つまり2人は戸籍上どちらも女性。結婚をのぞんでも現状ではいわゆる「同性婚」となり、日本では法的に認められていません。実は、賃貸契約の時、同性カップルの入居は認められないと契約を断られました。いまはタケシさんが1人暮らししているというカタチで、隠れるように同棲生活を送っています。
2人が入居を断られたのは、タケシさんが契約書に「女」と書いたことがきっかけでした。それまで異性のカップルと思い込んでいた不動産業者の態度が急に変わったといいます。

ハナエさん(仮名) 「同性2人で名前を連ねていると審査に通りづらい可能性があるから、仲介業者から1人だけの契約にしましょうといわれた」 「契約書に私の名前が書いてあったはずなんですけど、わざと消したんですよ」

タケシさん(仮名) 「名前を消されているときが一番悲しかったね」

2人は今、いずれ同居を理由に賃貸の更新を断られ、追い出されるのではないかと不安を抱えながら暮らしています。

ハナエさん(仮名) 「どこかでばれたらどうしようっていうのは結構常々恐怖しているというか、ずっと気にしてはいますね」

いまだに、同性カップルの契約が断られてしまう背景には、根強い偏見があると指摘されています。

不動産会社 代表取締役 須藤啓光さん 「管理会社さんとか大家さんに物件を交渉する上で、はっきりと『ゲイカップルは気持ちが悪い』と言われることもあれば、 LGBTというのは認められないというふうに言われることもあったりします。カップルだとしても『別れてしまって一方が出て行ってしまったら家賃を支払えないのではないのか』など、漠然とした先入観からそういったことをリスクとして優先されがちという傾向があります」

家族同然なのに 大事な医療の情報も一切教えてもらえず

さらに、医療の現場でも。

3年前から、戸籍上は同性のパートナーと、家族同然で暮らしてきた竹之娘さん(仮名)。持病の脳疾患で倒れ救急搬送された時、パートナーは処置室に入れてもらえず、治療内容も一切教えられないといわれました。「家族です」と言っても聞いてもらえなかったといいます。

幸いこの時は助かりましたが、万がー命にかかわるような事態になり、治療方法など家族の決断が求められる状況になったら自分たちはどうなってしまうのだろうと、不安でいっぱいだといいます。

竹乃娘さん(仮名) 「緊急時って時間が刻一刻と迫るものだと思いますので、本当にもしもの時に最期の最期そばに居られないんじゃないかという不安は2人して抱えています」

同性パートナー受け入れぬ背景に 訴訟リスク?

実は、医療の場合、法的拘束力はありませんが、厚生労働省はガイドラインを策定しています。その解説編では、病院側が受け入れるべき「家族等」について、法的な意味での親族だけでなく、例えば親しい友人など、患者本人にとって最も身近な人たちを含めると書かれています。

ところが、奈良女子大学の三部倫子教授が、東京・石川・静岡に勤務する看護部長を対象にアンケート調査をしたところ「成人した患者に判断能力がない場合に、異性愛以外の人、つまり、同性のパートナーに対しても手術の同意を認めている病院」は全体の3割程度にしか満たないことがわかりました。

取材したある医療従事者によると、病院側が同性パートナーの受け入れに消極的な背景には訴訟リスクへの恐れがあるのではないかということでした。後から同性パートナーを認めていない血縁者などから「何故本当の家族ではなく他人に任せたのか」などと言われた場合、反論できないということです。

民間の力で現状を変えたい  “パートナーシップ証明書”

こうした中、新しい動きも始まっています。都内にある大学病院では訴訟リスクなどを恐れず、同性パートナーを家族と同じように受け入れられないかと導入の検討を始めているものがあります。

それがスマホのアプリで発行する「パートナーシップ証明書」です。
同性パートナーがどんな人なのか、本当に二人が家族として認め合っているのかを、客観的に証明しようというものです。

運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、戸籍謄本など、複数の公的書類の画像が取り込まれています。さらに、最新の顔認証システムを導入しています。顔をかたむける、笑顔を作るなどの指示に従うことで、なりすましではないことを証明します。

カップルそれぞれが、自分のスマホで個人情報を登録した後、「2人は人生を共にするにあたって真摯な関係です」「責任と義務を持って協力する」など、 4つの項目をお互いが承認しあうことで、パートナーシップ証明書が発行されるのです。

病院では、この証明書さえあれば、同性パートナーを本当の家族として扱っても、親族などに対して説明ができると考えています。

順天堂大学 武田裕子教授 「これをきっかけに理解する職員が増えて、医院全体として、どんな立場の方であっても分け隔てなく医療が受けられるっていう環境を作っていけたらいいなと思います」

開発したのは、 IT企業や広告代理店、医療従事者や弁護士など同じ志のもとに集まった人たちです。

「誰もが納得してくれる証明書」とは、どのようなものなのか。様々な分野のスペシャリストが知見を寄せ合いながら2年かけて開発しました。

一般社団法人Famiee 代表理事 内山幸樹さん 「日本中の企業の福利厚生で使われるようになって欲しいですし、例えば住宅ローンであったりとか、生命保険の受取人であるとか、消費者向けサービスにおいても、家族の証明として使われていただきたいなというふうに思います。将来的には同性のパートナーに限らず、もっといろんな形の、家族の形って生まれていくと思いますので、そういった方々に対して証明書を発行していきたいなと」

アプリを作ったチームでは、様々な企業を地道に回ってはパートナーシップ証明書を広めています。5月の時点で、自治体や大手企業を含む50団体が受け入れており、ある不動産会社では、家を借りる際の証明書として使えるようにしたということです。

(おはよう日本 ディレクター 江口ひな子)
(札幌放送局 ディレクター 班 学人 )
(おはよう日本 ディレクター 村上隆俊)

【2021年5月30日放送】