ウクライナ “命がけの避難” その実態は

NHK
2022年6月8日 午後3:39 公開

銃撃や地雷、厳しい検問の末の連行・・・ロシア軍が掌握したと主張するウクライナ南部の州などから避難を試みようとする市民たちを待ち受ける苦難とは?避難者の声を発信している通信社への取材から、その実態が見えてきました。 

ロシア軍が検問を強化 避難はいっそう難しく

ウクライナで、ロシアは南部へルソン州とその隣ザボリージャ州について、全域または一部を掌握したと主張。一方で、ウクライナ軍の反撃によりヘルソン州北部の地区が解放されたとも伝えられ、激しい攻防が続いています。ヘルソン州のヘンナディ・ラフタ知事は、ロシア軍が支配を強め、住民の避難がいっそう難しくなっている現状を訴えています。 

NHKは、そうした地域からなんとか避難してきた人たちの声を伝えている現地通信社を取材し、ロシアが掌握したと主張している地域でいま何が起きているのか、聞きました。そこから見えてきたのは、避難を試みる人たちが直面している厳しい現実でした。 

今回取材した民間の通信社「EXPERT-KR」は、ヘルソン州に隣接した都市クリビリフにあります。 

クリビリフにはこれまで市外からおよそ4万2000人が避難してきたといわれており、通信社の記者たちは多数の避難者にインタビューを行ってきました。通信社のアンドリー・ブラセンコ記者は、最近いっそう検問が強化されているようだと話していました。 

<ブラセンコ記者>

通信社EXPERT-KRブラセンコ記者

「ヘルソンから避難してきた女性は、90kmほどの道中で30回以上ロシア軍の検問を受けたと話していました。検問は1回につき数時間かかります。ロシア軍は未舗装の小さな道でも検問を行うようになっており、ウクライナ側への移動が妨げられています」 

さらに避難者からは、ロシア軍が検問で、ウクライナ軍の関係者と疑われる人を見つけ出し、連行したという証言も得られました。 

ブラセンコ記者

「ロシア軍は、避難者を道路に並ばせて屈辱的な検査を行っています。服を脱がせてタトゥーを探したり、スマートフォンの履歴を見たりして、ウクライナ軍の関係者などを見つけ出そうとしているのです」

特にウクライナの国章や国旗、スローガンなどのタトゥーを入れていたり、スマートフォンの履歴にロシアに批判的な投稿などが見つかったりした人たちは、連行される可能性が高いといいます。また、検問時にロシア兵から金銭の支払いを要求されたという体験談も多数ありました。最近強化された検問によって、市民の避難がさらに困難になっているということです。 

命の危険も 地雷で車が爆破

通信社が行ってきたインタビューからは、避難に命の危険が伴う実態も明らかになってきました。ヘルソン州の自宅がロシア軍による砲撃を受けて、5月にクリビリフへ避難してきたという女性は、避難途中に経験した出来事について証言しています。女性は家族や知人と13台の車に分乗して移動していましたが、その途中、2台前を走っていた車が突然爆発したというのです。 

<ヘルソンからの避難者>

へルソンから避難してきた女性

「検問後、畑の中の道を走り始めてすぐでした。私の兄の名づけ親が乗っていた車が地雷で爆破されました。3人が亡くなり、 2人は入院しています」

爆破されたあとに周囲を見回すと、ロシア軍が仕掛けた爆発物と思われるものが 5つほど見つかりました。女性たちはそのまま進むのは危険なため、う回することを余儀なくされました。同様の出来事についてほかの避難者も証言しており、避難の途中で砲撃やロシア兵による銃撃、地雷による被害を受ける事例が相次いでいるということです。 

危険を承知で…市民による救出活動も

いまは避難者ひとりひとりの居場所を把握するのが難しいこともあり、ウクライナ軍や行政による救出活動では対応しきれないといった厳しい現実があります。こうした状況下でブラセンコ記者が注目しているのが、避難を支援しようという市民の動きです。 

<市民の支援サイト投稿>

SNSで、クリビリフなどの市民たちが支援の簡単な内容と電話番号を公開。連絡してきた人の身元と居場所を電話で確認したうえで、助けに行く動きが広がっているのです。多くの場合はロシア軍が掌握したと主張している地域の手前まで車で迎えに行っていますが、なかには、さらに先に進んで助けに行こうとする市民もいるといいます。 

ブラセンコ記者 

「支援者たちは、助けに行くことでどういった危険にさらされるのか、分かっているはずです。それでも危険を承知のうえで避難者を助けようとする人はたくさんいるのです。支援活動をしている男性が避難を助けた女性は、それまで4回避難に失敗していましたが、男性が来た5回目でようやく成功しました」 

ブラセンコ記者は「市民が避難を阻まれたり、攻撃の対象になったりしている現状は到底許されない、その理不尽さを伝えたい」と現地で取材を続けています。そしていま強く望むことは、即時停戦だと訴えていました。 

(おはよう日本 ディレクター 江口ひな子) 

【5月28日放送】

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