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米軍撤退の裏で拡大するタリバンの支配

NHK
2021年5月18日 午後3:08 公開

アフガニスタンの今 拡大するタリバンの支配地域

「アメリカ史上、最長の戦争」とも呼ばれるアフガニスタンでの軍事作戦。バイデン大統領は4月14日、現地からのアメリカ軍の完全撤退を表明し、その期限を同時多発テロ事件から20年となることし9月11日としました。事件の首謀者、オサマ・ビンラディン容疑者の引き渡しを拒否した当時のタリバン政権を崩壊させるために始まったこの作戦。ピーク時にはおよそ10万人規模のアメリカ軍部隊が駐留していましたが、現在はおよそ2500人に減少。ただ、その撤退の隙を突くように、タリバンなど武装勢力の支配地域は拡大しています。

地図の赤とピンクで示した箇所がタリバンなど武装勢力の支配地域や係争地域、灰色はアフガニスタン政府の支配または影響下にある地域です。ここ数年、赤とピンクの範囲は徐々に拡大し、2018年時点ではなんと国土の46%に。現在では半分を超えたという分析もあります。タリバンの勢力拡大の背景には何があるのか、現地にNHKのカメラが入りました。

農民を支配して得る タリバンの財源

タリバン支配地域の1つ、北部バグラン州の農村部。畑の中にいるのは自動小銃を持ったタリバンの戦闘員です。

農民を取り囲み、税金の名目で「みかじめ料」を要求し、現金を受け取っていたのです。タリバンは、アメリカ軍や国際部隊の撤退による「力の空白」につけ込むように、こうした農村部を中心に支配を拡大しています。

農民は、多いときは月収の半分近くをタリバンに支払うこともあるといいます。

支配地域の農民 「これはタリバンに税を徴収された時に渡されるもの(領収書)です」 「タリバンの要求を断ることはできない。もし断れば拷問を受ける」

タリバンからの重い負担に苦しむ農家の中には、「ある植物」の栽培に手を染める人たちもいます。

アヘンやヘロインの原料となる「ケシ」です。アフガニスタンでは、より高い収入が得られるとして、栽培する農家が後を絶ちません。

ケシ農家 「以前は小麦を栽培していたが、(タリバンに)金を払うことができず、栽培が簡単で高収入が得られるケシに切り替えた」

タリバンはこうしたみかじめ料などのカネを財源にして着々と武器を購入。アメリカ軍の支援を受けたアフガニスタン政府の治安部隊に対抗するための戦闘能力を高めているとみられます。

若者を勧誘し戦闘員に

さらに、コロナ禍で困窮する若者へのリクルートも活発化させています。タリバンの支配地域では、タリバンとつながりのあるイスラム教の聖職者が「高額の給料を約束する」とうたって、戦闘員の勧誘に力を入れています。勧誘を受けて、ことし3月にタリバンの戦闘員になった21歳の男性を取材しました。任務は、政府の検問所の襲撃や武器の購入。月収は日本円でおよそ9万円。以前の仕事の3倍以上だといいます。

タリバンに加入した男性 「多くの若者がコロナ禍で失業、困窮している」「タリバンは高給を払ってくれて生活の支援もしてくれる」

現地で取材を進めていると、タリバンの指揮官の1人に接触することができました。

タリバン指揮官:「戦わなければ、勝利を手に入れることはできない」

タリバン戦闘員:「若者を取り入れれば、神の力で必ず勝利することができます」

自爆攻撃のやり方などを訓練し、これまでに500人以上の若者を戦場に送り出したといいます。

指揮官は、アメリカ軍など外国の部隊が完全に撤退するまで戦い続けると強調しました。

指揮官:「我々は多くの若者たちとともに聖戦を続けていく。アメリカ軍などからアフガニスタンの土地を取り戻すまで続けていく」

人とカネを安定的に確保し、じわじわと勢力を拡大するタリバン。そうした中でのアメリカ軍の拙速な撤退は、タリバンと結びついた国際テロ組織の復活を招き、アメリカ本土が再びテロの脅威にさらされる可能性も指摘されています。この20年間、国際社会は「アフガニスタンを再びテロの温床としない」ことを目標に掲げ、復興を支援してきました。しかし、その努力は今、極めて厳しい局面を迎えています。

(イスラマバード支局 イスラマバード支局長 山香道隆)

【2021年4月21日放送】