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デジタルアート界で注目!「NFT」とは?
NHK
2021年4月28日 午前11:12 公開

ことし3月、老舗オークションに出品されたある作品が大きな話題となりました。
落札価格は6900万ドル、日本円で約75億円。アメリカのアーティストBeepleが10年以上かけて描いた5000枚のスケッチをコラージュした作品ですが、壁に掛けて鑑賞するような「形のあるもの」ではなく、画像ファイルつまり「データ」の状態のものです。

こうした「デジタルアート」の市場が拡大するカギとして注目されているのが、新たな認証技術「NFT」です。いったいどんな技術なのか、取材しました。

“コピーできるから…”「売買」が難しかったデジタルアート

赤ちゃんの泣き声と、その音の振動で絵の具が跳びはねる様子をハイスピードカメラで撮影した、約30秒のビデオアート「音のいけばな」。3月、海外のオークションサイトで約50万円の値が付きました。

制作したのは京都大学特定教授で芸術家の土佐尚子さん。40年ほど前から最新のテクノロジーを駆使した作品に取り組んできたデジタルアートの第一人者です。実は作品をオークションにかけたのは今回が初めてでした。

デジタルアートはまったく同じものが簡単にコピーできるため、一点物の絵画のように、値段をつけて販売することが困難だったのです。

土佐尚子さん 「“デジタルアート”って言ってしまうと安くなってしまうというか価値が劣るというか。コピーがすぐできちゃうでしょ、というのが一般的な認識なんですよね。作品そのものをデータで売るという選択肢を捨てていたところもあります」

ちなみにこれまで作品を販売する際には、コピーしにくくするため専用のプログラマーを雇い、USBでデータをやりとりするなどしていたそうです。

デジタルアートを変える新技術「NFT」とは?

そんな土佐さんの背中を押したのが、「NFT」=Non-fungible Token(非代替性トークン)という新たな認証技術です。

NFTは、作家が自身の作品に付ける「証明書」のようなものです。暗号資産に使われる技術を応用したもので、作品データそのもののコピーを防ぐことはできませんが、NFTはコピーされません。そのため、特定の作品だけをオリジナルとして販売することができるようになりました。
土佐さんはNFTの登場で、実物の絵画や彫刻と同じように、デジタルアートの価値が認められる時代がくるのではないかと考えています。

土佐さん 「いまこのチャンスは、ある意味デジタルアートが社会的権利、社会的価値を上げるステップアップ(の時期)だと思うんです」

作家が自由にイラスト販売を NFTが可能にする新サービス

NFTの登場によって、作家が自由に作品を販売する場が広がっています。

都内にあるベンチャー企業では3月、NFTをつけたイラストを作家が直接売り出せるサービスを始めました。

この日、販売したのは5枚のイラスト。1枚およそ7万円の値段ですが、開始から20分で完売。
「7万円1枚売れました・・・いま2枚売れました。完売しました!」販売サイトの売れ行きを興奮気味に見つめるのはこの会社の代表・小澤孝太さん。

小澤さんがサービスを立ち上げたきっかけは、大学時代に洋服のデザイナーとして活動していたときの苦い経験でした。

小澤孝太さん 「クリエーターとしてものづくりはやってみたものの、本当に全然お金も稼げなくて賞味期限切れのパンとか毎日食べてました」

小澤さんは、作家がお金の心配をせずに創作活動に打ち込める環境をつくりたいと、このサービスを始めました。
サービス開始から1か月近く経った4月上旬の時点で、すでに90人以上の作家からの応募が来ているといいます。

小澤さん 「(企業からの依頼に合わせて描くより)自分の好きな作品、イラストを描いてお金を稼げたら一番うれしいと思っているイラストレーターさんは多いと思います。このNFTという手段があるということを若手クリエーターさんには知ってほしいなと思ってます」

転売されても作家に還元される NFTの新たな仕組み

NFTが作り手にもたらすメリットはもうひとつあります。

このサービスに参加した人気イラストレーターの桜もよんさんが注目しているのは、作品が「転売」されたときの仕組みです。

これまでアートの世界では、作品を一度10万円で売ったとして、その後にいくら高値で転売されても作家に一切還元されないという課題がありました。しかし、NFTでは取引の履歴がすべて記録されるため、作品が転売されるたびに一定の割合を作家側に還元することが可能です。

桜もよんさん 「イラストって基本買い切りなんですよね。別の収入をいただけるというのはありがたい」

サービス運営会社の代表・小澤さんはNFTがさまざまな創作の分野にも今後広がりを見せると考えています。

小澤さん 「日本にはNFTと非常に相性が良いコンテンツがたくさんあると思っています。例えばアニメや漫画です。いま、コロナ禍でオンラインの時代になってきて、データが価値を持つという時代になるのは必須であるし、ごく自然な流れかなと思っています」

デジタルアートにとどまらない!広がる用途 注意点は?

NFTを使った事業をめぐっては、現時点でLINEやメルカリなどのIT企業も参入すると発表。デジタルアートだけでなく、購入者限定で聴くことができる楽曲の売買などにも使われていて、市場が急拡大しています。

さらに、活用事例はデジタル分野に留まりません。実物の絵画の額縁の裏などにNFTを埋め込んだ専用のタグを貼り付けることで、偽造が出来ない鑑定書として使われるケースも増えています。
がん作(偽物)をなくすことが急務となっている既存のアート市場を救う新たなインフラとして期待されていて、作品の価値に影響する売買や展示、修復などの履歴も記録することが可能です。

ただ、注意点もあります。

NFTに詳しい増田雅史弁護士によりますと、海外では作家になりすまして勝手にNFTをつけた作品を販売したケースが報告されています。また現在のデジタルアート市場では投機を目的とした売買も多く、適切な値付けかどうかを見極める必要もあるとしています。

こうした課題に向き合いながらも、NFTがデジアルアートの普及や作家の支援につながってほしいと思います。

(科学文化部 記者 加川直央)
(おはよう日本 ディレクター 村上由和)

【2021年4月19日放送】