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"慎重に急げ" 独占密着!ワクチン輸送の舞台裏
NHK
2021年4月26日 午後12:26 公開

2月12日、新型コロナウイルスのワクチンを乗せた航空機が成田空港に到着しました。日本へのワクチン輸送を一手に担うのはANAグループです。
実は、輸送をどの会社が請け負うか、経営悪化が深刻な航空会社にとって死活問題でした。ライバル社との契約競争を勝ち抜いた秘策とは?
さらに、マイナス70℃以下で運ぶための厳しいミッションの数々。
"120分の搬出作業を40分に短縮せよ" "精密機械並みに慎重に扱え"
緊迫の舞台裏に密着しました。

"ワクチン輸送の契約をなんとしても勝ち取れ"

プロジェクトが始まったのは去年5月。緊急事態宣言下、発着便数はANAグループ全体で前年の15%にまで落ち込んでいました。

プロジェクトを率いるのは今岡和哉さんです。
"ワクチン輸送の契約を何としても勝ち取れ"
まだどこの国でワクチンが開発されるのかもわからない中での、前例のないミッションでした。

情報がほとんど得られないまま4か月がたったころ。ファイザーの輸送代理店から突破口となる情報を耳にします。

マイナス70℃以下での保存が必要であることや、どのくらいの大きさの貨物として積み込まれるかなど、輸送の仕方を検討するための具体的な情報を初めて得ることができました。

しかし、ワクチンの輸送がどこの国からになるのか、依然として確信が得られない状態でした。

仮にファイザーとの契約を目指すにしても、アメリカのシカゴ、ベルギーのブリュッセル。
他の会社であれば、インドのムンバイ、韓国のインチョンになる可能性もあると分析しました。

こうした中、ある賭けに出ることを決断します。採算が取れず運休になっていたブリュッセルやムンバイとの直行便を復活させることにしました。直行便があれば、契約する際に有利になると考えたのです。しかし契約に至らなければ、不採算路線を抱えるリスクも負ってしまいます。

今岡さん 「一回飛ぶということはすぐ明日あさってやめますとはいえません。必ずしも貨物が来るか分からない中で復便せざるを得ない」

その後、日本向けのワクチンはブリュッセルから出荷されることが確定しました。直行便の復活が決め手となり、契約を勝ち取ることに成功したのです。

 "慎重に急げ" -70℃のワクチン輸送

しかし、立ちはだかったのが「マイナス70℃の壁」でした。輸送中のワクチンを冷やすのはドライアイスですが、航空機に積み込める量は規定で決まっています。
機体の到着から、貨物を降ろし、トラックに引き渡すまで、通常120分かかりますが、温度が上がらないよう、40分に短縮することが求められました。

航空機の到着場所をワクチンを最も早く運び出せる場所に変更し、20分短縮。
残りは、ワクチンだけを先に運び出すベテランスタッフを配置することで短縮する作戦にしました。

4月上旬、その作戦に密着することが許可されました。
この日到着する航空機では、最大200万回分のワクチンが5つのパレットにまとめられて運ばれてきます。
到着直前、予期せぬ事態が発生しました。

本来は、荷台にローラーが付いていて、パレットごと積み込めるトラックのはずでしたが、用意されたのは、ローラーのついていないトラック。そのため、パレットの解体が追加で必要になったのです。

急遽、作業の場所と、人員の確保に追われました。前例のないワクチンの輸送。
こうした予期せぬ直前の変更にも柔軟に対応します。

10時10分頃、航空機が到着。制限時間40分のワクチンの搬送がいよいよ始まります。
しかし作業開始直後、またしても不測の事態が発生。衝撃を和らげる緩衝材がうまく入りません。ワクチンは振動にも弱く、精密機械並みの慎重さが求められています。このままでは運べません。
機転を利かせたのがベテランスタッフです。

貨物用のベルトでしっかり固定することで、振動を防ぐことにしました。

牽引車両も通常の時速15キロから10キロに制限。急ぎたいけれど慎重に。
じりじりするような作業が続きましたが、なんとか制限時間内に終わらせることができました。

今岡さん 「すべてのワクチンの輸送が無事完了できたときにようやく大きな達成感。今はまだひとつの輸送の過程にしか過ぎません。ワクチンが1日も早く普及して自由な行き来ができる世の中に1日も早くなってほしいというふうに願ってます」

ワクチンの輸送量はこれから増えていく見通しです。夏場には駐機場の路面温度は50度を超えるということで、慎重に急ぐことが求められるワクチン輸送の現場は今後も緊張が続きます。

(社会部 記者 山田沙耶花)
(千葉放送局 記者 山下哲平)

【2021年4月14日放送】