ニュース速報

七尾旅人さん 自宅療養者へ「フードレスキュー」 SNS発で広がる共感・支援の動き

NHK
2021年10月6日 午後0:00 公開

新型コロナウイルスの感染者が急増し、病床の不足から多くの人が自宅療養を余儀なくされていた8月22日、シンガーソングライターの七尾旅人さんが、Twitterでこう呼びかけました。

「今ひとりきりで自宅療養して食料も届かず、ひもじい思いをしてる人へ  何か買って持って行こうか?」

この投稿は次々とリツイートされ、自宅療養の人たちに食べ物を届ける“フードレスキュー”として、全国に広がっていきました。
“フードレスキュー”はもともと食品ロスを防ぐ取り組みを指す言葉ですが、コロナ禍のいま、新たな食料支援の活動として注目を集めているのです。

始まりは、1つのつぶやきから

七尾さんはこれまでも、社会の出来事と向き合いながら活動を続けてきました。
東日本大震災の被災地支援に力を入れ、そのときの経験を『圏内の歌』など楽曲にも反映させてきました。

先月、新型コロナで自宅療養中の母親が死亡したニュースや、妊婦の受け入れ先が見つからず新生児が亡くなったニュースにふれ、七尾さんは大きなショックを受けました。

シンガーソングライター 七尾旅人さん 「本来なら救われたはずの命が失われてしまう。コロナの中で自宅に放置された家族が今まさにこの時も亡くなっている、子どもが親を失っている。そういうことは一刻を争うことなので」

自分にできることはないかと考え、始めたのが"フードレスキュー"でした。
これまでにきた依頼は30件ほど。おかゆなどの食料品だけでなく、子ども用のオムツなど、1人ひとりの要望を聞き、遠方の人にはネット通販を利用して届けています。

七尾旅人さん 「いちばん最初にメールくださったのは関西の学生さんだったんですけど、友達も親戚も頼れないって書いていましたね。『メールするのすごく迷ったんですけど、助けてください』『保健所とつながらないんです。だから次の一手はどうしていいか分からないです』と。買い物にも行けないし、保健所という最初の窓口に連絡がうまく取れてない人がこんなにもあるのかと。勢いで始めた活動だけどもこれはやってくべきだと思いましたね。こういう人きっといっぱいいるぞと思って」

広がる“フードレスキュー”

七尾さんのツイートから 1か月。
現在、 約1万リツイートされ、「自分もフードレスキューをする」と言う人が全国に現れています。

ゾニーさん(兵庫県在住) 「3軒行ってきました。1軒はちょっと遠いところだったのでウーバーイーツとかもちろんないですし、都市部にいる人たちは割とすぐ手に入るようなものが数日かかったりとかする。気楽に頼めたり、気楽に『行くよ』って言えたりするような形でつながっていけばいいなと思っています」

N a N a N a さん(東京都在住) 「たまたまツイッターを開いたら、そこに七尾さんの『遠慮しなくていいよ』っていうあたたかい言葉があって身にしみて。これは私も賛同したい、何か力になれるならと。本当に困っている方が『助けて』って言える場所ってすごく大事だなと思いました」

ここまでの広がりは、七尾さんにとっても意外だったと言います。

シンガーソングライター 七尾旅人さん 「『みんなもこういうことしませんか』って呼びかけは一切行ってないんですよ。『僕はこういうふうに行動してみます』という表明をしただけなんで。そういうことで状況が変わることがあるんだなというのはびっくりしましたし、うれしかったですね。この1年半で社会が失ってしまったものってあると思うんですけども、でも新たに獲得していく、何か希望的なものというのもきっとあると思っていて」

“フードレスキュー” 医師や企業へも

患者と向き合う医師たちも、フードレスキューを始めました。
24時間体制で往診を行っているグループ「ファストドクター」では、これまで、食料の確保に困っている患者たちを多く目にしてきました。
そんなときに知ったのが七尾さんのツイートでした。すぐに賛同し、行動に移しました。

共感の輪はさらに広がります。医師たちの取り組みを知った商社が食品メーカーに呼びかけ、およそ4万点の食料品が無償提供されることになったのです。
9月14日から、東京23区内での往診時に自宅療養者に渡しています。

(映像提供:ファストドクター)

食料を受け取った患者は、安堵の声を漏らしました。

食料を受け取った患者 「いつ食料が(自治体から)届くかわからない状況で本当に不安だったんですけど、安心できました」

ファストドクター代表 菊池亮 医師 「少しでもまずやってみるということが大事なんだということを、(七尾さんに)教えていただいたような気がしています。こうした取り組みが少しでも患者様の不安を取り除く材料になればと思っています」

七尾さんからのメッセージ

SNS上の、ひとつの投稿から始まり、多くの人の善意で広がった今回の取り組み。
しかし七尾さんは、感染しても思うように入院できず、食料さえ得られない現状にもっと目を向けてほしいと言います。

七尾旅人さん 「互助とか共助、そういうものがもう少し定着したとしても、公助が機能不全を起こしていることを許してはいけないと思うんですよ。公助が足りてないという構造を強化してはいけないんですよね。僕たちがやってる事が。僕らが互いに助け合うから公助はいらないですよ、なんて事にしちゃいけない。脆弱な社会を修復しようとする自然発生的な作用みたいなもの、決して美談ではない。いまの社会の弱さです」

自宅療養者の数は感染者数と同様、ピーク時より減少してきています。ただ、第6波も想定される中で、私たちができること、そして、公的な支援のあり方を考えて行くことが重要ではないでしょうか。

(おはよう日本 ディレクター 西川多紀)

【2021年9月27日放送】

あわせてこちらも

コロナ禍のフジロック 現場で何が