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東京オリンピックで「アイヌ文化」を発信

NHK
2021年8月12日 午前5:00 公開

8月5日から8日にかけて、札幌市で行われた東京オリンピックの競歩とマラソンのオープニングイベントとして、アイヌの人たちが踊りを披露しました。
先住民族・アイヌの文化を国内外に発信することで、オリンピックが掲げる「多様性と調和」を表現する狙いがありました。

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◎アイヌの歴史をめぐる経緯

明治政府の同化政策

アイヌの人たちは明治以降、独自の文化を否定され、長い間、差別や貧困に苦しんできました。明治政府がいわゆる同化政策で、アイヌの人たちに日本の文化を強制したからです。

成人女性の証しとされた入れ墨などが禁じられたほか、学校では日本語を学ぶよう求められ、アイヌ語や伝統的な風習は急速に失われていきました。また、明治政府の政策で、土地の多くを失い、自由に行われていたサケ漁や毒矢を使った狩猟も禁止に。生活の糧を失う人も少なくありませんでした。

また、明治32年に施行された「北海道旧土人保護法」では、アイヌの人たちは保護の対象とされましたが、苦しい生活状況は十分に改善されず、いわれのない差別や偏見を助長する結果を招いたとも指摘されています。

平成9年、この法律がアイヌの人たちの求めに応じるかたちで廃止されました。代わって施行された「アイヌ文化振興法」のもと、アイヌ文化の復興に向けた施策が積極的に行われるようになりましたが、生活水準の格差や差別の解消にはつながらなかったと指摘されています。

アイヌ施策推進法で「先住民族」と明記

平成19年に大きな転機を迎えました。国連で先住民の権利に関する宣言が採択されたのです。翌年には、日本の国会でも「アイヌ民族を先住民族として認めるよう求める決議」が全会一致で採択されました。その後、政府内での検討を踏まえ、平成26年に政府は北海道白老町にアイヌ文化発信の拠点となる施設を東京オリンピック・パラリンピックが開催される前に整備する方針を決めました。

そして令和元年に施行された「アイヌ施策推進法」で、アイヌの人たちは初めて「先住民族」と明記されました。
ただこの法律に対しては、研究者やアイヌの人たちの一部から、伝統的なサケ漁の実施や樹木の利用など、先住民族としての権利が回復されていないといった批判も出ています。

先住民政策に詳しい恵泉女学園大学の上村英明教授は「海外では先住民族が国と対等に交渉でき、権利が確立されている。日本でも、アイヌ民族と『和人』と呼ばれている我々が対等ではなかった溝を埋めていくための丁寧な作業が必要だ」として、アイヌの人たちの権利回復に向けた合意形成を急ぐべきだと指摘しています。

遺骨をめぐる課題も

また、アイヌの人たちの遺骨をめぐる課題も残されています。

明治から昭和にかけてアイヌの人たちの遺骨は、研究目的で各地の墓地から掘り出されるなどして全国12の大学で1500体以上が保管され、不適切な管理も明らかになりました。

アイヌの人たちの一部は、先祖に故郷の墓地で眠って欲しいと返還を求め一部は実現しましたが、大部分の遺骨は身元がわからないなどとして、北海道白老町に整備された民族共生象徴空間=ウポポイにある慰霊施設に集約されました。このため、縁もゆかりもない場所に集約されていることに批判も出ています。

【2021年8月12日放送】