新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行して1か月。 今、子どもたちの間で新型コロナ以外のさまざまな感染症が急拡大しているといいます。いったいなぜなのか?小児医療の現場を取材して、その背景に迫りました。
(おはよう日本 ディレクター 立山遼 記者 廣川智史 小林紀博)
溶連菌やRSウイルスなどの感染が拡大 小児医療の現場は
小児医療の現場は今、どのような状況なのか。東京・港区の小児科クリニックでは、長引く発熱やのどの痛み、おう吐などの症状を訴えてやってくる子どもが先月から増え続けています。
クリニックの時田章史院長に話を聞くと、感染拡大の時期が通常は重ならない複数の感染症が、いま同時に広がっているといいます。
クリニックばんびぃに 時田章史院長
「さまざまな感染症が一気に増えるということは、私は小児科医になってかなりたちますが、このような経験はあまりないです」
時田院長に、先月のある2日間に診断したウイルスなどの検査キットを見せてもらいました。
確認されたのは、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、溶連菌、アデノウイルスなど。RSウイルスは細気管支炎や肺炎、溶連菌は心臓疾患など、重篤化したり、深刻な合併症を引き起こしたりするおそれもあります。
適切な治療をするために、原因となるウイルスや細菌をできるだけ特定する必要がありますが、多くの種類の感染症が拡大する中で、診断も難しくなっているといいます。
クリニックばんびぃに 時田章史院長
「これだけいろんな感染症が増えると、やはりひとつひとつの診断にかなり時間を割いたり、患者さんが多いのにもかかわらず、さらに時間を丁寧にやらなきゃいけないという意味で、非常に苦慮しているところになります」
小児科では病床もひっ迫
今こうした感染症が拡大していることで、小児医療の現場がひっ迫しつつあります。港区の母子医療の専門病院では、小児科の病床がほぼ満床になっています。そのほとんどがRSウイルスなどの感染症によるものです。病床のひっ迫は救急医療にも影響を及ぼしかねないといいます。
愛育病院 小児科 浦島崇医師
「ほとんど5月下旬ぐらいから常時満床ですね。満床になると、救急車で受診を必要とする方々の受け入れがなかなか難しくなってきてしまって、少し遠方の病院にまで受診する必要があったりとか、受け入れ先の確保が難しくなってくると思います」
なぜ今、一度に感染拡大?背景は
なぜ今、こうした感染症が一度に拡大しているのか。
今拡大している感染症の1つ、溶連菌感染症のデータを順番に示しながら見ていきます。 まずは、新型コロナ感染拡大前の2019年の東京都の溶連菌感染症の患者報告数のデータです。週ごとに集計しています。
2019年のデータからは、年間を通じて、感染の拡大と収束を繰り返しているのがわかります。
しかし、2020年(紫色のグラフ)から状況が変わります。
紫色で示した2020年のグラフを見ると、当初は、例年のように感染が広がりますが、新型コロナの感染が拡大したころから、感染が収まっているのがわかります。
今回取材した医師や専門家によると、これは「コロナの感染対策が、同じように飛沫感染をする溶連菌などの感染対策にもなったため」だと考えられるということです。
続く2021年(緑色)と、2022年(青色)も、感染が大きく広がることはありませんでした。
ところがことし2023年、赤色で示したグラフを見ると、5月ごろから急激に感染が広がっていることがわかります。
こうした傾向は、全国的に、また他の感染症でも同様に見られています。感染拡大の背景について感染症の専門家は次のように話しています。
かからないためには?もしかかったら?
こうした感染症について何を気をつければいいのか、冒頭で話を聞いた、小児科クリニックの時田院長にポイントを聞きました。予防には、手洗いや消毒など基本的な感染対策が有効で、発熱が続くなど気になる症状がある場合や水分が取れないときなどは、医療機関に連絡し、受診してほしいということです。