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コロナ禍で過食・拒食症状が悪化 苦悩する摂食障害患者

NHK
2021年4月7日 午後8:26 公開

過食症や拒食症などの摂食障害。全国で約21万人の患者がいると推定され、その大半は女性ですが、男性の中にも病気に苦しんでいる人がいる精神疾患です。日本摂食障害協会が3月29日に発表した調査報告書によると、コロナ禍で症状が悪化するなど、当事者の93%が感染拡大の影響を感じていると回答しました。小児科医からは初診の患者が感染拡大前の年に比べて約2倍に増えたという報告もあり、コロナ禍で深刻化する実態が浮き彫りになっています。

コロナ禍で症状が悪化 苦悩する当事者

大阪市に暮らすほなみさん(24)が過食症を発症したのは3年前でした。ひどいときには1日8時間、食べては吐くことを繰り返す、強い過食衝動に苦しんできました。

ほなみさん 「我慢するにも我慢できない。なんか惨めで、すごい自分が汚く見えるのに、食べ続けないといけない。心の中がもうごちゃごちゃしている」

家族関係の悩みや学業のストレスが原因であると医師から診断されたほなみさん。追い打ちをかけたのが、新型コロナの感染拡大でした。外出自粛を続ける中、食べものが常に身近にある状況が続き、過食の症状が悪化したといいます。

ほなみさん 「丸一日どうやって過ごせばいいんだとか、そんな不安ばっかりで過食は増すし、もうつらくてつらくて。何回も繰り返すのに、そのたびに死にたいってなってしまう」

周囲に打ち明けられず…孤立する当事者

コロナで深刻な影響を受ける当事者たちの中には、周囲に助けを求められず孤立する人も少なくありません。過食の症状に悩む本城はるかさん、22歳です。過食に費やした費用は3年間で100万円以上。貯金が底をつき生活に支障が出ても、周囲に病気を打ち明けることはできませんでした。

本城はるかさん 「“自分がだらしないから”とか、“意志が弱いから”とか、きっとみんなそう思っているんだろうと思ったら、言い出せなくなってしまう」

行き場のない現状から抜け出したいと、病院の受診を決意した本城さん。ところが、どの病院も最短で3か月の受診待ちで、精神的に追い込まれた本城さんは自殺を図る事態に陥りました。その後、ようやく医療につながることができたものの、コロナの影響で受診の機会が大幅に減ったといいます。

本城はるかさん 「どこに行ったらこの生活が終わるのだろうと、行き場所が全然わからなくなってしまって、結局、1人で抱えている感じがずっと続いています」

思うように医療を受けられない当事者たち。日本摂食障害協会が行ったコロナ禍の実態調査では、約4割が医療やカウンセリングへのアクセスに困難があったと回答しました。

患者の孤立を防げ 開発された最新アプリ

患者の孤立をどう防ぐか。医療現場では新たな動きが始まっています。摂食障害の専門医、大阪市立大学の山内常生さんらが開発し、ことし1月に完成したのが全国初となる摂食障害の記録アプリです。患者に体調や食事の写真を毎日投稿してもらい、アプリを通して医師と共有します。医師は遠隔で患者の状態をそのつど把握することができ、対面での診察が難しいコロナ禍でも活用が期待されています。さらに、食生活や体調に関するデータがアプリに蓄積されることで、専門医にかかることができない患者も周囲のサポートを得やすくなります。

山内常生医師 「摂食障害の専門医ではない、一般的な精神科医や学校教員、栄養士などの方でも、食生活の様子が手に取るように分かれば、常識的な範囲で指導やアドバイスをしていけると思うので、アプリを活用していくことができるのではないかと期待しています」

早期発見・治療のために 周囲の正しい理解が支えの一歩に

今回の取材では、130人近い当事者や家族の方から意見が寄せられました。どの方にも共通していたのが、ストレスや生きづらさといった精神的な苦痛が要因となって発症していたことでした。

しかし、拒食や過食は「ダイエットの延長」あるいは「自分の意志でおこなっている、わがままな病気」といった誤解や偏見が根強く、周囲に病状を打ち明けられないという人が少なくありません。

実は摂食障害は、低栄養や自殺などで患者のおよそ10%が亡くなる、最も死亡率が高い精神疾患とされています。「いかに早く治療につなげられるか」が、回復のカギだといわれる摂食障害。食行動の変化に素早く気付き、当事者が抱えている心の問題にどうアプローチできるか、周囲のサポートが支援の一歩になると強く感じました。

(大阪放送局 ディレクター 小林あかり)

【2021年3月29日放送】