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「感染しても入院できない」が解消!? “1人で何役もこなす”『総合内科医』

NHK
2021年11月4日 午後3:00 公開

「新型コロナに感染したけど病院に受け入れてもらえない」。
これまで、そうした厳しい状況が続いてきましたが、理由の一つとしてあげられるのが、専門医の不足です。
感染の初期段階から多くの病院が、呼吸器や感染症など、新型コロナ患者を診られる専門医がいない、あるいは足りないという課題を抱えていました。

そんな中、解決する切り札のひとつになるかもしれないと注目を集めているのが「総合内科医」です。

コロナ患者受け入れに大きな力を発揮! 総合内科医

大阪にある富田林病院。常勤医40人の中規模病院で働く、総合内科医の窪田剛さん(59歳)です。
専門は血液内科ですが、7年前、総合内科医の資格をとりました。

この日診察したのは、糖尿病(糖尿病内科)に、神経性の疼痛(神経内科)、睡眠時無呼吸症候群(呼吸器内科)、食道のへルニア(消化器内科)など、いずれも専門の診療科が異なる患者。

通常、病院には呼吸器や循環器など、その道に精通した専門医が所属していますが、総合内科医は、それぞれの分野で専門医並みの深い知識をもち、診断から治療まで一貫して行う、いわば「オールマイティドクター」なのです。

この総合内科医の存在が、コロナ患者の受け入れに大きな力を発揮しました。
感染が広がり始めた去年4月。
富田林病院には呼吸器や感染症の専門医はいませんでしたが、窪田さんら総合内科医が中心となることで、他の多くの病院に先駆けて、コロナの専用病床を設置しました。
これまでに受け入れた患者は、軽症と中等症を中心に92人にのぼります。(2021年10月26日現在)

総合内科医 窪田剛さん 「呼吸状態を診るのは呼吸器内科の先生が強いとは思いますが、総合内科医のように総合的に診られれば重症化する一歩手前で軽症・中等症の方へ引き戻すことができる」

次の感染拡大に備え、国は病床とともに医師の確保も重要な課題だとしています。
その切り札のひとつになると期待される総合内科医は、専門医を置く余裕のない中小規模の病院にとって、メリットが大きいと言います。

富田林病院 宮崎俊一院長 「感染症や呼吸器の専門医をいざというときに備えて雇うと、その雇った医師たちに、感染症がない平時にはどんな仕事をしてもらうのか、ということになります。経営上難しいですね。平時にはいろんなことに対応し、危機が発生したときには適宜対応可能な、総合内科医のような医師こそ重要な時代になったと思います」

総合内科的な考えが広まれば 患者の受け入れ拒否は減るはず!

コロナ患者の受け入れ強化につなげようと、富田林病院では毎週金曜、総合内科医に必要な知識や診断力を学ぶカンファレンス(症例検討会)を行っています。

この日検討したのは、救急に運ばれてきた腸閉塞の症例。
専門の消化器内科の医師だけでなく、専門外の腎臓内科や循環器内科など、医師8人が原因や治療方針について議論しました。

救急医「外科にちょっと診てくれと言ったら『これは腸石ではないですか』と」 総合内科医「最新のCTあります?」

患者のCT画像に写っていた異物について、外科の医師は腸に石がたまったのではないかと判断しましたが、窪田さんは別の角度から指摘しました。

総合内科医 窪田剛さん 「認知症ではオムツを食べて胃拡張のもとになったというケースもある」

結局、原因の特定には至りませんでしたが、普段からあらゆる可能性を議論しておくことが大事だといいます。

カンファレンスに参加していた医師 「先入観でこうだと思ってしまっていたらもっと大きなものを見過ごしてしまうので、幅広く診察していくことが大事だなと思いました」

こうしたカンファレンスを重ねてきたことで、窪田さんたち総合内科医が休みのときでも、コロナ患者の受け入れができるようになりました。

今後も感染の拡大が予想される中、窪田さんは、総合内科医のような医師が増えれば、患者の受け入れを断る事態を減らせるのではないかと考えています。

総合内科医 窪田剛さん 「この分野だけしか診られないという医師よりは、総合内科的なスタンスを持っている医師の方が、1人で何人分もの役割を果たせます。総合内科的な感覚があれぱ、100点は無理かもしれませんが、 80点がとれればその積み重ねでかなり穴が少なくなると思います」

コロナ後の高齢化社会でも総合内科医は活躍する

さまざまな専門分野を幅広く、かつ深く診ることのできる総合内科医。
現在、全国の内科医11万5000人のうち、現場で働く総合内科医は少なくとも5700人で、資格を認定している日本内科学会によると決して多くはないと言います。
3年前からは、民間病院が加盟する全日本病院協会が総合的に診られる医師の育成プログラムを始めましたが、専門家は、コロナ後の社会も見据え国の後押しが重要だと指摘します。

千葉大学医学部付属病院 谷口俊文講師 「高齢化社会を迎え、1人の患者さんが複数の疾患をもつなど、総合内科医の活躍の場は非常に広いと思います。しかし資格をとるだけでも相当大変なので、取った分の見返り、インセンティブのようなものをつけることも国の仕事として大切なのではないでしょうか」

今後、幅広い病気を横断的に深く診られる医師が増えれば、地方の医師不足の解消にもつながる可能性も指摘されています。
私たちに身近な医療現場で総合内科医が活躍することを期待したいと思います。

(社会部 記者 金倫衣)

【2021年10月26日放送】

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