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相次ぐ内水氾濫 対策は下水道の“見える化”

NHK
2021年7月21日 午後7:21 公開

記録区的な大雨が各地で頻発する中、下水道などの処理能力が追いつかず、住宅地などに水があふれる内水氾濫の被害が相次いでいます。こうした中、自治体では新たな対策にのり出しています。取り組んでいるのは下水道の“見える化”です。

内水氾濫を防げ! カギ握る下水道の“見える化”

茨城県南部に位置する守谷市で、おととし、住宅地の道路が広範囲で冠水しました。大きな被害にはいたりませんでしたが、自治体の担当者は脅威を感じたといいます。想定していない場所で、晴れた日に突如マンホールから水があふれたからです。その日は、台風が通過した翌日でした。なぜ、内水氾濫は起きたのでしょうか。

守谷市では、下水道に流れ込む雨水を、河川に排出しています。ただし、大雨で河川の水位が上昇していた場合には、河川につながる門を閉じ、排出を一時的に停止します。下水道に水が逆流するのを防ぐためです。市内で内水氾濫が起きた当日、門は閉じていました。前日の台風で、河川の水位が比較的高かったからです。天気は回復していたため、下水が急速に増水するリスクは少ないと考えていました。

しかし、予想に反して、下水の水位は急上昇。門は閉じていたため、行き場を失った水が住宅地にあふれました。前日の大雨により、用水路などにとどまっていた雨水が、想定を上回る勢いで、下水道に流れ込んだことが原因とみられています。守谷市は、前日から夜通し、下水道のパトロールを行っていましたが、水位が上昇する兆候をつかむことはできませんでした。

守谷市上下水道事務所 奥野清輝 課長 「下水道の施設というのは、地中に埋設されていますので、やっぱり現場に行ってマンホールを開けたりしないと見えない。常に職員が現場にはりついているというのは、やはり体力的にも、人的な数からも限界がありました」

そこで守谷市が、2021年6月に導入したのが下水道の“見える化”装置です。マンホールの中に、水位や水の流れを捉えるセンサーが設置されていて、得られたデータを送信しています。離れた場所から、リアルタイムで下水の様子を把握することができます。「監視を強化したい」という自治体の需要の高まりを受け、都内のメーカーが開発しました。守谷市では、得られたデータを、下水を河川に排出する門の管理に活用。排出を適切に行えるようになれば、内水氾濫のリスクを減らせると考えています。

下水道の“見える化” 得られたデータを避難にいかせ!

下水道の“見える化”によって得られたデータを、一般市民にも広く利用してもらおうと、取り組み始めた自治体があります。1日200万人以上が利用するターミナル駅を有する横浜市です。駅周辺には、地下街が広がります。

過去、駅周辺では浸水被害が繰り返されてきました。地下では地上の様子が分からないため、浸水がはじまっていることに気付きにくく、避難が遅れるおそれがあります。そこで、横浜市では地下への入り口付近のマンホール4カ所に、センサーを設置。得られた下水の水位データを、2021年6月からネットで公開し始めました。横浜駅を利用する人たちなどに、いち早い避難に役立ててもらうことが狙いです。

横浜市下水道計画調整部 早川正登 部長 「防ぐことのできない水害は必ず発生してしまうだろうということを考えると、ソフト対策などをあわせて町全体として水害に強い町にしていく必要がある」

横浜駅地下街では、地下街の商店主たちなどでつくられた管理協議会が、地下への浸水を防ぐ止水板の設置など、防災対策を担っています。管理協議会では、今回、横浜市が公開し始めたデータを、止水板を設置したり、避難誘導を始める参考として、注視していきたいといいます。

横浜駅西口共同防火防災管理協議会 武笠基和 事務局長 「今まで見えなかった下水道の状況を“見える化”していただくということは、浸水防止の判断材料としては、おおいに期待をしてる」

防災システムの専門家は、急増する異常気象に備えるためにも、下水道の“見える化”などソフト面の対策が急務だと指摘します。

東京電機大学 小林亘 教授 「急激な都市化や、雨の増加に対応するために、下水道の設備を増強することが必要ですが、下水道の敷設は非常に長い距離に及びます。そのため、思うようには増強できないという問題がある。現状では、いわゆるソフト対策と言われているものが、ひとつの対応策だと思います」

守谷市や横浜市が導入した下水道の“見える化”装置は、6年前に製品化されたものですが、去年から利用する自治体が急増。2021年7月時点で、全国41の自治体で導入されているそうです。装置を開発したメーカーでは、集まった下水のデータを、気象の変化と組み合わせて分析し、今後は、下水の水位の予測につなげていきたいということでした。

(おはよう日本 ディレクター 田中志穂)
【2021年7月14日放送】