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“音声を文字化する” テクノロジーが可能にした新しいコミュニケーション

NHK
2021年7月1日 午後3:00 公開

“私たちが話をしている音声を、瞬時に文字化する”。

そんなテクノロジーが身近にあるのをご存じですか?

こちらをご覧ください。

これは、2年前にグーグルが無料公開した「音声を文字にするアプリ」です。

ひとりずつマイクに向かって話せば、かなり正確に文字にします。

私はスマートフォンにこのアプリを入れていて、パラアスリートの取材をする時などによく使っています。相手の受け答えが文字化されるので、マスクをしていたり、距離があったりしても、話の内容がずいぶんと把握しやすくなりました。

そしていま、この音声を文字化するグーグルの技術をベースにして、新型コロナで制限が生じた様々なコミュニケーションをサポートする、新たなテクノロジーの開発が進んでいます。

オンライン会議をサポート 広がる字幕システム

まず、ご紹介したいのが、音声を文字にするテクノロジーを、オンライン会議に応用したシステムです。

利用者である会社員の柿沼理美さんは、聴覚に障害があり、オンライン会議で音声が不明瞭になったり、参加者が同時に話したりすると、内容についていけなくなることがあります。

そこで、所属部署が試験的に導入したのが、こちら。

話し手の顔が映っている画面の枠の中に、文字が表示されるシステムです。

参加者が3人、4人と増えても、話し手にだけ字幕が表示されるため理解しやすくなっています。

柿沼理美さん
「口の形を頼りにしている私にとっては、顔と字幕が同時に出ると、とても見やすくて、対話がスムーズです。ひとつの画面に出てくるところが、すごくいいなと思いました」

“対面の会話も文字に” 実用化を目指して

オンライン会議の字幕システムを開発した筑波大学の研究室ではいま、対面で会話する人の間に文字を浮かび上がらせる研究を行っています。

こちらの幅30センチあまりの透明なディスプレー。会話の音声が文字になって表示されます。

使い方は至って簡単で、会話する二人の間に置くだけ。すると…。

ディスプレーの研究を行っている鈴木一平さんに、開発のきっかけをお聞きしました。

それは、鈴木さんの所属する研究室に、聴覚に障害があるメンバーがいたことでした。

ふたりは普段、グーグルのアプリで会話を文字化しながら話をしています。

しかし、スマートフォンと相手の顔を交互に見ることで、目の動きがあわただしく、疲れてしまうときがあり、さらには、互いの表情やジェスチャーなどを見逃してしまうことも。

“顔を見ながら話がしたい”

鈴木さんのその思いから、ディスプレーの開発が始まったのです。

鈴木一平さん 「ディスプレーがあれば、耳が聞こえないということを意識せずにコミュニケーションがとれるようになるのかなと。人と人だけではできないようなことを助けてくれるものになると思っています」

“このディスプレーがあれば、飛まつ防止のパーティションなどが設置された場所でも、やりとりがスムーズになるはず”。

そう考えた鈴木さんたち開発チームは、今月、市役所の窓口で、実証テストを行いました。

その評判は、障害のある人にはもちろん、障害がない人にも上々でした。

来訪者 「いま、パーティションもあるし、相手の声がすごく聞きづらい。このディスプレーがあればいいですよね」

市役所の窓口担当者 「「はい?もう一度」と相手に聞き返す場面がすごく多くて。このディスプレーがもう少し活用できれば、そういったストレスが減るのではないかと思います」

障害のある人のためのテクノロジーは誰にとっても役に立つ。

それが鈴木さんの信念です。

鈴木一平さん 「コミュニケーションがとれないというのは、すごくつらい、苦しいことだと思うんです。コミュニケーションは、社会を社会たらしめているものかなと思うので。解決できる未来がくるといいなと思っています」

今回、「音声を文字にするテクノロジー」を取材して感じたことは、この技術を使うことで、障害のない人も自然と意識が変わっていく、ということです。

ディスプレーを開発した鈴木一平さんは、この装置を使用して実際に会話をするうち、「機械が読み取りやすいように発音し、ことばを選ぶようになった。つまり、ふだんから伝わりやすい話し方を心がけるようになった」と話していました。

「必要は発明の母」という言葉がありますが、コロナ禍で生まれた、こうしたテクノロジーが、多くの人にとって生きやすい社会へと導く、手助けになるのかもしれません。

私は、テクノロジーには、「障害を障害でなくする力がある」と思っています。

障害があるなしのギャップを埋めるということだけではなく、みんなの気持ちや心の距離を、自然と縮めることにつながると思うのです。「障害を意識しなくなる」未来がやってくることを願っています。

【後藤佑季リポーターが取材】東京パラリンピックの精神を映像で表現 “障害”“LGBTQ”…多様性のある社会へ

(NHKパラリンピック放送リポーター 後藤佑季)

【2021年6月16日放送】