開幕まで2週間あまりとなったサッカーJ2のファジアーノ岡山。昨シーズン、リーグ戦は過去最高の3位と躍進しましたが、プレーオフでは振るわず、J1昇格を逃しました。新たに9人の選手が加入し、再び、J1昇格を目指す今シーズン。どんな戦いを見せてくれるのか。期待の選手や強化ポイントなどに迫ります。
(岡山局 山田俊輔記者)
北川社長“勝負をかけた”
1月7日。岡山市北区で新体制発表の記者会見が開かれました。冒頭、北川真也社長が昨シーズンの振り返りと今シーズンの方針をおよそ30分にわたって説明しました。新加入9人のうち、完全移籍が3人、期限付き移籍が6人。期限付き移籍のほうが完全移籍よりもコストがかかるそうですが、「今シーズンはJ1昇格の可能性が高いメンバーで構成した。必ずやJ1に昇格したいからこそ、勝負をかけた」と資金を投入した理由を語りました。いつも以上に熱がこもった社長のことばからも今シーズンにかける強い覚悟を感じました。
服部GM “1%でも勝率が上がるメンバーを”
新しく就任した服部健二ゼネラルマネージャーからも興味深い発言がありました。「細部にこだわりながら、1%でも勝つ確率が上がるメンバーを整える」。新加入の選手の母校やクラブなどの関係者にも話を聞き、ファジアーノの選手としてふさわしいかどうか、徹底的に調べたといいます。その結果、「向上心があり、J1昇格への覚悟を決めた選手たちが集まった」と手応えを示していました。さらに大きいのが、昨シーズンの主力メンバーのほとんどがチームに残ったことでした。J2では、前のシーズンを上位で終えると、有力な選手の多くがJ1や昇格したチームに引き抜かれるケースが多いといいます。しかし、ファジアーノは、昨シーズンの試合出場率の上位18人の選手のうち、チームを離れたのはわずか3人だけ。服部GMは「強い覚悟を持って、岡山に残ってくれた選手たちに本当に感謝している」と話していました。「2023年はこのクラブにとって勝負の年になる。チーム一丸となって今シーズンを戦い抜く」と力強く語った服部GMのことばからも、北川社長や選手と同じぐらい強い覚悟を感じました。
木山監督 “優勝するには+10点が必要”
1月8日、岡山市東区の政田サッカー場で新チーム初の公開練習が行われました。その後、私たちの取材に応じた木山隆之監督は「若い選手も増えて、ものすごく活気がある」とうれしそうに話してくれました。
チームが目指す「J2優勝、J1への自動昇格」を果たすために木山監督が必要だと考えているのが得点力の強化です。具体的には昨シーズンリーグ7位の「61点」だったチームの総得点を10点増やすことを目標に掲げています。
得点力期待の新加入・櫻川ソロモン選手(21)
期待される選手のひとりがJ2のジェフユナイテッド千葉から移籍した櫻川ソロモン選手です。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ身長1メートル90センチ、体重94キロの大型フォワードで、昨シーズンはJ2で36試合に出場して7得点。移籍したミッチェル・デューク選手の穴を埋める攻撃の中心として活躍が期待されます。木山監督も「彼の高さやパワーを使っていろいろなことができる可能性があるのではないかと思う。彼の持ち味をチームの中に取り入れていって、戦力になってほしいと思っているので、すごく期待している」と話しています。その櫻川選手は「迫力あるプレーでゴール前で得点するところや起点となるプレーを見てほしい」と話し、「見た目もこういう感じなのですごく威圧的だと思うが、意外とこのクラブで誰よりも優しいと思う」と笑顔とともにちゃめっ気も見せてくれました。
さらなる飛躍期待の高卒2年目のシーズン・佐野航大選手(19)
もう1人。津山市出身の佐野航大選手のさらなる飛躍もJ1昇格を目指すチームに欠かせません。高卒ルーキー1年目だった昨シーズンは夏ごろからレギュラーに定着し、持ち味の巧みなボールさばきや常にゴールを意識したプレーで、29試合に出場して3ゴールをあげるなど、チームの3位躍進に貢献しました。木山監督は「ことしは最初からチームの中でしっかりとした役割を担えるように間違いなく成長する。いろんな可能性を秘めているがゆえに、ものすごく大きな期待をしてしまうが、チームをより勝たせられる選手になってほしい。うまいだけじゃなくて、本当にすごい選手に進化していってくれたらうれしい」と大きな期待を寄せています。
キャンプで見えてきた強化ポイント
チームは1月22日から宮崎県でキャンプを行っています。練習で取り組んでいたのは、得点力アップのカギを握る「左サイドからの攻撃」でした。ファジアーノは昨シーズン、クロスボールの成功率が右サイドはリーグ1位だったのに対し、左サイドはリーグ11位。数字から見ても課題は明らかです。このため、今シーズンは左サイドの選手を補強しました。1人は横浜FCから加入したディフェンダーの高木友也選手。左足からの精度の高いクロスボールが持ち味です。もう1人は、水戸ホーリーホックから移籍のミッドフィルダーの鈴木喜丈選手。こちらも左利きの選手で、ゴール前への正確なボールの供給が期待されます。高木選手はキャンプの初日、雨が降る中、全体練習のあと、自主的に左サイドからのクロスボールの練習を繰り返していました。左サイドからの得点アップに向けてどんなプレーを見せてくれるのか、期待が高まりました。木山監督も「高木選手はスピードがあり、クロスを上げる精度が高い。鈴木選手はパスの質が高いことに加えてボールを前に運ぶ能力もある。2人が持ち味をしっかり出そうとしてくれて心強い」と、手応えを口にしていました。
強豪に2連勝 開幕へ順調な仕上がり
ファジアーノは1月24日に宮崎でキャンプ初の練習試合に臨みました。相手は、昨シーズンJ1で4位の名門・鹿島アントラーズでしたが、新加入の櫻川ソロモン選手や坂本一彩選手らの得点で、5対1と快勝。1月27日のJ2、ロアッソ熊本との練習試合でも櫻川選手が2得点、坂本選手が1得点と活躍し、3対1で勝利しました。新加入の選手が実戦でも結果を残し、開幕に向けて、順調な仕上がりを見せています。
木山監督 ことしにかける思いは“頂”
私たちは木山監督に今シーズンにかける思いを漢字1文字で書いてもらいました。選んだ文字は“頂”。「昇格を目指して去年も戦ってきたが、やるからには、一番上を目指す必要がある。“頂”を“いただきたい”という思いで書いた。みんなが望んでいると思うし、“頂”を目指して頑張りたい」としゃれも交えて意気込みを語ってくれました。笑顔で終わったインタビューのように、今シーズンの戦いを笑顔で終えてほしい。そう願い、2月18日の今シーズン開幕戦を待ちたいと思います。