お知らせ

  • 朗読・藤田三保子さんからのコメント

この番組について

古くから読み親しまれている日本の文学、そして海外文学の翻訳版を、人気の俳優・声優が朗読します。月曜から金曜まで毎夜15分、朗読の世界に浸ってください。 今回の作品は太宰治「津軽」〈新潮文庫〉です。 (全35回) 物心ついてからの日々、男として、作家として、夫として、父として、常に苦悩する人生を送った太宰治。 第二次世界大戦末期、“死”を意識した太宰が生まれ故郷の津軽に旅して、津軽の人びとの暖かい人情に触れ、自己の存在を確認し、人の心の真実を写し取ろうとした紀行文風小説の傑作「津軽」。太宰治35歳の時の作品です。今回は、藤田三保子の朗読でお届けします。 私(津島修治)は故郷金木村に帰ることになり、その際に津軽各地を見て回って懐かしい人々と再会します。そして小泊村を訪ね、かつて自分が子守をしてもらった、越野たけ(実在名・タケ)とも再会を果たします。この作品は、津軽地方の地理や人びとを描いた紀行文のように読めますが、太宰研究者の多くは、この作品を自伝的小説とみなしています。 ◆太宰治 1909年6月青森県生まれ、本名津島修治。裕福な家庭に育つが、青森中学在学中のころから作家を志望、創作活動を始める。弘前高校時代に芥川龍之介の自殺に大きな衝撃を受け、1929年に自殺を図る。30年東大に進むが、11月湘南・江の島で心中未遂事件を起こし、その後も重ねて自殺を図る。1935年「逆行」は芥川賞を逃して次点、36年「晩年」を刊行。39年に結婚、家庭を設け父となり執筆に励むが、1948年に「人間失格」執筆後、6月13日に愛人と入水自殺、38歳。遺体が発見された6月19日は、奇しくも太宰39歳の誕生日で、今も「桜桃忌」として太宰ファンに供養されている。

  • 朗読 藤田三保子 (俳優)

    朗読歴も20年を超えました。 その中で「太宰治」を取り上げたこともあり、私なりの 太宰像を持っていましたが、この「津軽」では、また別の 一面を見た気がしました。 あの時代の「次男」等、要するに長男でない男性の、次第に歪んでいく心理。また、父親が地域の中で 立派であればあるほど、何とか親を追い越して行きたいと無意識の中に植え付けられていく焦り。認められたいと思っているのにもかかわらず、 だんだん家族から切り捨てられていく、離れたくないのに、離れていく自分。敗北者だと自ら認めながら人にはそれを言われたくない頑固さ。いつも泥に足を取られながら、郷土愛、家族愛に救われて浮かび上がって、 生きている、魅力的な「主人公」だと、感じるようになってきました。 「津軽」は紀行文でありながら、なかなかにタフな「津軽人」や 太宰自身が立ち上がってきます。太宰治の文とタフで幸せなファイトをしました。 どうぞ、お楽しみください。 藤田三保子

放送

  • NHK-FM
    毎週月曜~金曜 午後9時15分

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