~人は本当に大切な事は、何も語らないまま生きて死んでいくんだね~
【ラジオ第1】
2022年5月15日~6月26日 毎週日曜 午後7時20分~午後7時50分
【出演者】
西田敏行 竹下景子
【原作】
向田邦子
【脚色】
樋口ミユ
【音楽】
小六禮次郎
【スタッフ】
演出:小見山佳典
技術:林晃広
音響効果:石川恭男
【あらすじ】
向田邦子唯一の長編小説「あ・うん」のドラマ化。時代は、戦争の足音が忍び寄る昭和10年から始まる。一人の女性を巡る男同士の思いを東京下町の庶民の暮らしとともに、情感を持って描く。
第1話「狛犬」
昭和10年春。中小企業の社長・門倉修造は、水田一家を迎えるため準備に忙しい。親友の水田仙吉が3年半ぶりに転勤で東京に帰ってくるのだ。水田はつましいサラリーマンで性格も地味だが、門倉は色男、軍需景気で羽振りがいい。二人は20数年来の「戦友」だった。それは、まるで神社の鳥居に並んだ一対の狛犬「阿・吽」のようだった。
第2話「蝶々」
門倉は仙吉の妻・たみにプラトニックな愛を感じている。その事は、たみ自身も、娘のさと子さえ分かっていた。父の初太郎は元山師で、破産し家族に心労をかけた。仙吉は父とは口も利かない。門倉には妻・君子がいたが、カフェの女給・禮子と付き合っている。禮子に子供が出来た。
第3話「青りんご」
さと子は君子の紹介で帝大生・辻村と見合いをした。夜学しか出ていない仙吉は身分不相応と断わる。しかし、さと子は、辻村の言った「自由恋愛」という言葉に身体が熱くなった。そんな折、羽振りの良かった門倉の会社が倒産した。
第4話「やじろべえ」
辻村と密会していたさと子は、仙吉からきつく叱責された。君子は門倉と別れようと思い、仙吉の妻・たみに、どうしたらいいか決めてくれという。返事のできないたみ。そんな折、初太郎が倒れた。盧溝橋事件の半年前だった。
第5話「四角い帽子」
昭和12年。門倉は軍需景気にのって再び羽振りがよくなっていた。仙吉は、門倉に紹介された神楽坂の芸者・まり奴に入れあげ、たみを心配させた。初太郎の弟・作造が家に転がり込み、なにかと騒動を起こす。辻村と別れたさと子は、早稲田の演劇学生・石川と出会い、彼に惹かれていく。
第6話「芋俵」
水田家に見知らぬ男が怒鳴り込み、カカアを出せと凄む。作造がその女・ふみを夫から匿っていたのだ。さと子は隠れて石川とデートを重ねていた。マルクス、エンゲルスという言葉を初めて知った。石川は財閥の社長の息子だったことが分かるが、ある日、特高に連行されていってしまう。
最終話「四人家族」
門倉は料亭で仙吉に喧嘩を売り、仙吉と絶縁する。仙吉がジャワ支店長として転勤することが決まり、門倉は最後の別れを言いに水田家を訪れる。ぎこちない二人。すると、召集令状を受けた石川が、別れを告げにやって来た。軍靴の音が響く。時代は大きく動こうとしていた。