防災力を高める学校のフェーズフリー

NHK
2023年12月15日 午後5:58 公開

出演:鳴門市教育委員会学校教育課

村上 若奈さん

(2023年12月15日(金)放送)

「学校のフェーズフリー」とは?

 「フェーズフリー」というのは、いつもの暮らしがある「日常時」と、災害が起きた「非常時」という2つのフェーズについて分けることをやめて、両方に活用できるアイデアを取り入れていこうとする考え方です。
 これまで学校現場では、非常時に備えた防災の教育は、特別に設けられた内容や時間で行うものと捉えられてきました。ただ、それだけでは、子どもたちに十分な防災力をつけることは難しいとも感じていました。
 そんなときに出会ったのが、フェーズフリーという考え方です。
特別に設けられた時間だけではなくて、日々の生活の中で、それも子どもたちが気づかないうちにどんどん防災力を高めていけたら、子どもたちの災害時のリスクはとても小さくなるのではという思いから、ぜひ取り入れたいと考えて「学校のフェーズフリー」をスタートさせました。

学校のフェーズフリーの具体例 

 例えば、小学校6年生の算数「速さ」の学習では、人と津波の速さの比較を取り上げました。津波の地上での速さは時速およそ36キロです。
これを秒速に直すと10メートルになり、100メートルを10秒で駆け抜けることになります。
陸上競技の短距離でオリンピックに出る選手並みの速さであることが分かります。
 また、50メートルを5秒で駆け抜ける計算になるので、自分たちの50メートル走の記録と比べても桁違いに速いことが実感できます。
 津波の速さという、子どもたちが興味を持つ題材を取り上げたことで、意欲的に速さの学習に取り組むことができました。
 また、自分の走る速さと比較することで、津波の脅威の大きさに気づき、避難行動を迅速に行う必要性を感じることができました。
 算数科の学習の充実を図りつつ、非常時への気づきがある取組となっています。

子どもたちに期待される効果

 学校現場ではこれまで、防災訓練や防災に関する学習を中心に、子どもたちの防災力を高めてきました。しかし「災害」は子どもたちにとって常に身近にある存在ではないので、学習の直後は高くなる防災意識も、持続し続けるのが難しいという課題がありました。
 私たちが取り組んでいる「学校のフェーズフリー」は、子どもたちにとっては防災学習のつもりがなくても、知らず知らずのうちに防災への意識をアップデートしてくれます。
 そして、学校生活のあらゆる場面で、子どもたちの防災力を高めることができます。
ですから、従来の防災教育と学校のフェーズフリーの両方を取り入れることで、社会や子ども自身の脆弱な部分を補って、災害時の危険を最小限にすることができると考えています。
 災害はいつ起こるか分かりませんが、日頃の備えが子どもたちを動かす原動力となって、自分たちの命を守る行動をとることができるように、日々取り組んでいます。

「学校のフェーズフリー」今後は?

 現在鳴門市では、現場の先生方に「学校のフェーズフリー」のよさを伝えて、普及させていこうとしている段階です。全ての先生方がフェーズフリーの考え方を積極的に取り入れることで、子どもたちの命を守るための防災力の貯金が、毎日コツコツと貯まっていくような学校現場の実現をめざしています。
 そして次の段階が、全ての人がフェーズフリーを取り入れていくようになることです。
 子どもたちが気づかないうちに防災力が高まることが、教職員の提供する「学校のフェーズフリー」なので、多くの子どもたちは、フェーズフリーという言葉自体を知らないと思います。
 しかしフェーズフリーは、日常生活の質を高めつつ、非常時に備えていくことのできる、とても優れた考え方です。
 一部の学校ではすでに行われていますが、最終的には「フェーズフリー」という考え方について子どもたち自身が知ることで、自分たちの力で生活の質を高めながら、災害に備えていけるようにしていきたいと考えています。