災害時の情報格差を乗り越え、皆で助かる防災対策を!

NHK
2023年6月9日 午後5:58 公開

出演:日本防災士会徳島県支部 支部長

瀬部 幸生さん

(2023年6月9日(金)放送)

自然災害の変化と情報技術の進歩

 気候変動の影響もあって、自然災害は、頻発化・激甚化・大規模化してきています。
 例えば、2018年の「西日本豪雨」、2020年の「熊本県の球磨川が氾濫した豪雨」等は、局地的な豪雨によるものです。
豪雨の原因は、❝「線状降水帯」の発生❞ という従来になかった言葉で説明されています。
 地震では、例えば近い将来必ず来ると言われている「南海トラフ巨大地震」についても「南海トラフ地震臨時情報」という情報が2019年に新たに誕生しました。
こうした状況の変化を考えると、防災・減災対策は今までの延長線上での取り組みにおいて「死亡者ゼロ」といった目的を達成することは困難でしょう。
 一方社会は、急速な情報伝達技術の進歩により「DX(デジタル・トランスフォーメーション)社会」の実現に向かっています。
 災害情報を伝えるツ-ルは、従来のテレビやラジオに加えて様々なSNSが普及し、通信手段もハガキ・手紙といった紙媒体からE-mail等の電子媒体に置き換わってきています。
 防災を考える上で今、「自然災害の変容」と「社会の変容」という二つの新局面に直面していると強く思っています。

災害時の情報格差

 今やインターネットは、私達の生活や仕事に欠かせない社会基盤になっています。
津波や地震の高度なシミュレーションが見られるなど、瞬時に必要な情報が手に入る時代です。しかし、パソコンやスマホ等が操作できない人や不得手な人がいるのも現実ですし、見ることは出来ても、多くの情報を的確、適正に処理・運用出来ない人もいます。
 溢れる災害情報、進化する災害用語の定義など、住民が自分のこととして正確に理解出来ているか、疑問です。
 情報技術が急速に進歩・発展する一方で、その潮流に乗れない人も高齢者を中心に多くいます。そのため「災害情報格差」が生じ、真に必要な情報が日常生活の中に浸透していない感じがします。

地域特性に合う防災対策を

 過去に被災された人達からの声やアンケ-ト等からは、❝地域コミュニティーの強さが被害を最小化する❞ との想いが伝わってきます。
 災害は「地域特性」を考える必要があります。
「人へのやさしさ、思いやり」を心に持つこと、「その地域に合った防災訓練」を実施すること、そして訓練を通じての「コミュニティーの復元・強化」、さらに「既存の自主防災組織等の活性化」がカギになります。
 大規模災害では行政もダメ-ジを受けるので、防災上の「行政の限界」ということも言われていますが、「地域の特性」を考えることは極めて意義深いことと思います。

情報格差を乗り越え、皆で助かるために

 私は「防災・減災活動は、人造り・国造り」と考えています。
災害大国・日本にあって、私達は被災後も同じ「土地」に住み続けるのが一般的です。
 徳島県では被災後の早期復興を念頭に、被災後を見据えた準備・実践を進める「事前復興」という考えを取り入れ、令和元年(2019)12月に全国に先駆けて「徳島県復興指針」を策定し、❝公立病院の高台移転❞ や ❝被災者支援のための災害ケースマネージメントの普及❞ 等に精力的に取り組んでいます。私達、日本防災士会徳島県支部も、この事業の一角に参画しています。
 被災前から、災害に強い「まちづくり」や「国づくり」の計画および実施をすることは、未来だけでなく今の地域を良くすることでもあり、大変重要なことです。
 こうした理念を着実に、そして早く実現させるためにも「自然災害の変容」と「社会の変容」を十分自覚した上で、情報格差があることで生じる、行政や防災専門家と住民との間のコミュニケーション・ギャップを一日も早く解消しなければと思います。
 上流の情報が、速く、的確かつスム-ズに下流まで伝わる社会にしなければなりません。実現には時間がかかるでしょうが、努力は惜しんではならないと考えます。
 情報格差を乗り越え、災害時の被害を減らすあたって現時点では、❝「公共機関の対応」と「地域力による対応」の二刀流で臨むことが大事❞ ということでしょう。
 高度な技術や制度を駆使する市町村や県・国などの「公共機関の対応」と、人への思いやりや、やさしさを含めた地域コミュニティーの活性化による「地域力による対応」で、地域特性を踏まえて取り組めば、情報格差をカバーでき「助けてあげる」「助けてもらう」ではなく「皆で助かる」防災・減災対策が出来るのではないでしょうか?