『失われた夢を求めて』の演出からひとこと。

NHK
2023年6月18日 午後1:00 公開

『失われた夢を求めて』

~誰が何と言おうと、あなたは聖母ですよ。私の愛する母さん。~

【NHK FM】

2023年6月24日(土) 午後10時~午後10時50分(全1回)

★「聴き逃し」サービス ※配信期間は放送から1週間

演出の小見山です。

脚本家の竹山洋さんとは、今回のオーディオドラマが3本目になります。

いずれも三田佳子さんの主演です。竹山さん自身の60年代大学ジャズ研の青春や、コロナ禍で今までの生活が破綻した夫婦の葛藤を描きました。

そして今回のドラマには、三田さんを始め、竹中直人さん、篠田三郎さんに出演してもらいました。いずれも竹山さんの作品に縁の深い皆さんです。

              (スタジオ収録中の三田佳子さんと竹中直人さん。)

4月。脚本の決定稿をいただいた後、10日余りで竹山さんは亡くなりました。本来であれば、この日、一緒にせりふ収録をするはずでした。残念でなりません。

今、私の手元に、竹山さんからいただいた自筆の原稿があります。

竹山さんは、万年筆で原稿用紙に脚本を書かれます。

ほとんどの作家がパソコンで執筆する時代に、もはや稀有な存在だったかもしれません。でも、その独特な字体や推敲した跡を残す生原稿からは、作家の思いの丈がずしんと伝わってきます。まさに、脚本家・竹山洋さんの思いの丈が詰まったオーディオドラマとなりました。ドラマの中で、「さようなら、そして、ありがとう」という言葉が出てきます。竹山さん、さようなら、そして、ありがとう。

                            (演出・小見山佳典)

【出演者】

三田佳子 竹中直人 篠田三郎 冠野智美 

【作】

竹山洋

【音楽】

小六禮次郎

【あらすじ】

8月15日。それは戦争が終わった日ではなく、自分の存在が決められた日だった。終戦の日に、ヨシ子(三田佳子)は、海軍上等兵の国木新一(篠田三郎)にトマト畑で求婚され、結婚した。だが、その結婚は長くは続かなかった。新一の不倫相手が妊娠し、二人の結婚生活は破綻した。

それから70余年。春。桜が満開だった。母のヨシ子が別れた夫のお墓参りがしたいと言い出した。父の新一が亡くなって22年。一度も母は父の墓に手を合わせることはなかった。母は90歳。息子の私(竹中直人)は67だ。母親の車椅子を押しながら、母の記憶をたどる。人が生きる上で大切な“記憶と感情”。これは、ある記憶をめぐる母と息子の物語。