3週間お休み中の「青春アドベンチャー」、8月29日(月)から始まる新シリーズ『軽業師タチアナと大帝の娘』のキャスト全13名の皆さまからのメッセージを連日お届けしています。
今日は主人公タチアナの師、ティモフェイ役と「語り」、さらにタチアナの父親役をお願いした石川禅さんです。
【石川禅さん メッセージ】
タチアナの師匠ティモフェイは、中世に活躍した、ロシアの芸能の礎となるエンターティナー、スコモロ-フの数少ない生き残り。並木先生が本作で描いたのは、実在したスコモローフを遥かに凌駕した能力を持っている憧れの存在です。キャッチコピーになった、「陶酔に身を委ね、大地に渦巻く精霊たちの力を借りて跳べ!」。実はこれは作品の中でティモフェイがタチアナに指南する台詞。大地の精霊と共に生きる彼は、その能力も思考も行動も、およそ人間社会の定規では測ることが出来ない人物なのです。
収録当日。受付で入館手続きの用紙に俳優名等の必要事項を書き込み提出すると、確認していた職員さんが怪訝な顔で、「あのすみません、記載されたお名前の他に活動名をお持ちですか?」。なんと、あろうことか僕は、名前の欄に本名を書いていたのです! 8度目のNHKオーディオドラマ出演にして初めてのミス!いやそれとも、人間社会に順応出来ない人物を本番前から実践していたのでしょうか(笑)。
さて、今回も語りを務めさせて頂きました。華やかな共演陣、雅やかな冒険活劇。どうぞお楽しみに。
昨夏の並木陽さん作の『1848』に続き、「語り」=三人称客観ナレーションと主人公を導く「師」のポジションをお願いしました。
番組サイトの紹介文にある通り、物語が進むとともにロマノフ王朝の政争劇を描いていくことにはなりますが、朝夏まなとさん演じるタチアナの人物像は気風のいい快活な軽業師です。前作『1848』と比べて全体のトーンは明るく、石川禅さんに演じていただいた師匠ティモフェイの造形など、その極めつけと言ってよいでしょう。
「語り」をお願いすると、卓越した指揮者によるオーケストラ演奏のように、時に繊細に時に大胆にドラマのリズムとスタジオの空気を操って下さる石川禅さん。一方、ティモフェイ役では、自由闊達なお芝居の悦びを追及していただけたご様子でした。
ティモフェイは、超人的な身体能力を持つ神出鬼没な脱俗の自由人で、少年漫画か映画に出てくるカンフー・マスターのようなキャラクター、つまりほぼ精霊そのもの。技芸に対しては厳しく求道的ながら、どこか余裕と遊び心を感じさせてくれる石川禅さんに通じるものがある気がします。
そういえば収録の時、購入しようかどうかと迷いに迷われているとお話されていた高性能フライパン、その後どうなさったのか気になって仕方がありません……。
『軽業師タチアナと大帝の娘』キャストボイス、次回は愛月ひかるさんからのメッセージをお届けします。
『軽業師タチアナと大帝の娘』(全15回)
~陶酔に身を委ね、大地に渦巻く精霊たちの力を借りて跳べ!~
【NHK FM】
2022年8月29日(月)~9月2日(金)午後9時15分~午後9時30分(1-5回)
2022年9月5日(月)~9月9日(金)午後9時15分~午後9時30分(6-10回)
2022年9月12日(月)~9月16日(金)午後9時15分~午後9時30分(11-15回)
【出演者】
朝夏まなと 野々すみ花
藤岡正明 渡辺大輔 愛月ひかる 石川禅
上口耕平 栗原英雄 川口竜也 塩田朋子
桜咲彩花 廣田高志 大河原爽介
【作】
並木陽
【音楽】
日高哲英
【スタッフ】
演出:藤井靖
技術:浜川健治 林晃広
音響効果:今井裕 柴田なつみ 横山健太
【あらすじ】
18世紀ロシア。亡きピョートル大帝が西への窓を開き、新たな風を取り入れようと築いた都ペテルブルク。急速な西欧化の一方でロシアの伝統を蔑ろにした暴政に対する不満も燻っていた。そんな世相もどこ吹く風、黒革の仮面で顔を覆う軽業師タチアナの陽気な口上が響く。「紳士淑女の皆様、太陽の沈まぬ夏の夜のつれづれに、この一時はあらゆる憂いを忘れ、我らが妙技に酔いしれられませ!」
古い技を受け継ぐ芸能者スコモローフの末裔が、腐敗した権力者の気まぐれから思いがけない危機に陥り、人々との出会いを重ねながらシベリアと帝都を股にかけた冒険を繰り広げ、やがて陰謀渦巻くロマノフ朝の中枢に関わっていくグランドロマン。