3/6(月)から二週にわたって放送の『昼も夜も彷徨え』、出演者の皆さんのメッセージをご紹介しています。
前回の成河さんに続いて今日はライラ役、咲妃みゆさんの声をお届けします。
【咲妃みゆさん】メッセージ
電話もテレビもインターネットもない時代。誰かの放つ力強い言葉が、人々の思想に多大な影響を与える様を体感できたような収録時間でした。演じさせていただいたライラは、物静かではあるけれど根底には静かな炎を宿している女性です。台詞一つ一つを発する上で、いかにその炎を覗かせることが出来るかを追求しました。
青春アドベンチャーでは、有り難いことに毎度難しいお役に挑戦させていただけるのですが、今回も大変挑み甲斐のある素敵なお役と出逢えたことに感謝しています。そして錚々たる共演者の皆さんのお芝居には心が震えてばかりでした。特に、成河さんと入野さんの演技を目の当たりにしながら、こんなに互いを想い合う兄弟が実在したらどんなに素敵だろう…と感じました。
お聴きくださる皆さまにも、この物語が辿る旅路をお楽しみいただけたら嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。
原作者の中村小夜さんが大切に育て上げられた物語、『昼も夜も彷徨え -マイモニデス物語-』を全10回、150分足らずのオーディオドラマにさせていただくにあたって、脚色の並木陽さんとはヒロインのライラを軸にドラマを構成しようと最初に決めました。
主人公モーセは、正義感が強く喧嘩っ早いところもありますが基本的には理知と論理の人。そのモーセが、ライラという悩める少女と出会うことで、より深く、そして厳しく人の心のありようと向き合うことになる過程が、「中世ユダヤの大思想家マイモニデスの偉人伝」に留まらず、この物語を、今を生きる私たちにとって切実なものにしている、と思ったのです。
さりとて、あまり言葉を発しないライラの人物像を音声ドラマで表現するのは至難の業。そして芝居巧者の成河さんとの長い対話のシーンもあります。そんなわけで、「毎度難しいお役」で恐縮ながら、早々にライラは咲妃みゆさん以外に考えられないという結論に達した次第です。
『ベルリン1989』、『悠久のアンダルス』以来、久しぶりにご一緒できた咲妃みゆさんの声と演技は、やはり唯一無二のものでした。きっとライラを生きる咲妃さんの声の繊細な波動が、この物語の世界を追体験なさる皆さまの心の深いところにも届くに違いないと信じます。
『昼も夜も彷徨え』キャストボイス、次回は入野自由さんからのメッセージをお届けいたします。
『昼も夜も彷徨え』(全10回)
~僕はいつも、兄さんを守れるのは僕だけだって思ってた。~
【NHK FM】
2023年3月6日(月)~3月10日(金) 午後9時15分~午後9時30分(1-5回)
2023年3月13日(月)~3月17日(金) 午後9時15分~午後9時30分(6-10回)
★「聴き逃し」配信あり(放送から1週間)
【出演者】
成河 咲妃みゆ 入野自由 渡辺大輔
川口覚 土井ケイト 塩田朋子 清水明彦
今泉舞 大滝寛 外山誠二 粟野史浩
福長里恩 野地祐翔
【原作】
中村小夜(『昼も夜も彷徨え マイモニデス物語』)
【脚色】
並木陽
【音楽】
関向弥生
【スタッフ】
技術:大塚茂夫
音響効果:太田岳二 横山健太
制作統括と演出:藤井靖
【あらすじ】
時は12世紀半ば、十字軍の時代。北アフリカ、マグリブ地方では異教徒にイスラーム教への改宗を強要するムワッヒド朝の下、ユダヤ教徒たちが息を詰めて暮らしていた。高名なラビの息子である若き学者モーセ(成河)は、医学や様々な学問に興味を持ち、父や妹たちを呆れさせているが、弟ダビデ(入野自由)は兄を深く理解し、彼が学問に専心できるよう心を砕いていた。心の拠りどころとなるはずの宗教が弱い立場の者を抑圧する矛盾に、強い意志と知の力で闘いを挑むモーセが放つ言葉は、やがて地中海を超え一人の傷ついた少女ライラ(咲妃みゆ)のもとに届き……。中世の精神史に大きな足跡を刻んだ学者の精神の彷徨を想像力豊かに描く。