『ラングドックの薔薇』 今井朋彦さん

NHK
2023年6月7日 午後5:43 公開

6/19(月)から2週にわたって放送の『ラングドックの薔薇』、出演者の皆さんからのメッセージをお届けしています。

【今井朋彦さん】メッセージ

オーディオドラマとのご縁は長く、私の舞台以外の初仕事はFMシアターだったと記憶しています。あれからどのくらいの作品に出演したでしょうか。ホームドラマあり、古典文学あり、壮大な歴史ものもあれば、タイムスリップの話も。どれも収録時にはセリフしかなかったものが、放送では音響効果や音楽がついて、グッと深まった作品になる。自分では「もうちょっと上手く言えたのに」と悔いが残ったところも、スタッフの皆さんの力を借りていい感じに仕上がっていたり。そんな収録時からの「変身ぶり」もオーディオドラマの面白さの一つかもしれません。さて今回の作品は、またどんな変身を見せてくれるのでしょうか。

                                                         今井朋彦


これまでご出演いただいたオーディオドラマは、まさに枚挙にいとまがありません。

昨日は石川禅さんに「青春アドベンチャーの守護神」という尊称を奉らせていただきましたが、その流れで申し上げれば、「Mr.オーディオドラマ」とお呼びしたいのが今井朋彦さんです。

なんと言っても瞠目すべきは、その息づかい。

少し話が冗長になりますが、オーディオドラマの制作過程にご関心のある方は少々お付き合いください。

まずスタジオで出演者のお芝居の声を録音します。

そのあと効果音や劇伴奏音楽とのバランスも考えながら、番組の時間に合わせて演出者が編集する作業に進みます。

演者の皆さんの熱演もあって、想定よりも長く録りすぎてしまうことがあり、その場合は断腸の思いで台詞をカットせざるを得ません。あるいは巧みな演技によって十二分に登場人物の心情が伝わるため、少し台詞を梳いたほうが、もろもろ按配が良い……というような場合もあり判断に悩みます。

このあたり、長い期間の稽古を経て本番を迎える舞台演劇で通るのであろう試行錯誤の過程を、俳優さんからお任せいただいているような側面があるのかなと想像します。もしかしたら「勝手にお芝居の間を変えられて閉口した」と思われてしまっているようなケースもあるかもしれませんが……。

で、ようやく本題です。

今井朋彦さんの演技は、いつも音楽的なまでに流麗な抑揚とリズムによって完成されていて、安易なカットや編集を許しません。その役としてマイクの前で呼吸されているので、息づかいも表現の大事な一部なのです。

音声編集に使っているソフトでは音が波形としてヴィジュアルに表示されるのですが、息の映像を目にしながら「良い波形だなぁ……」と編集室で悦に入るアブナイ人になることもあります。最近では舞台や映像で演技の魅力的な俳優さんの声を聞くと「ああ、高性能マイクで録音して波形を見てみたい!」と思うことさえ増えてきました。

それもこれも「Mr.オーディオドラマ」の声の威力のお導きだと思っています。

『ラングドックの薔薇』キャストボイス、次回は川口竜也さんからのメッセージをお届けいたします。

『ラングドックの薔薇』(全10回)

~俺にはとっくに、騎士を名乗る資格などない。~

【NHK FM】

2023年6月19日(月)~6月23日(金) 午後9時30分~午後9時45分(1-5回)

2023年6月26日(月)~6月30日(金) 午後9時30分~午後9時45分(6-10回)

★「聴き逃し」配信あり(放送から1週間)

【出演者】

海宝直人 廣瀬友祐 坂本真綾 彩乃かなみ

音くり寿 石川禅 今井朋彦 川口竜也

桜咲彩花 廣田高志 秋山エリサ 木下祐子

【作】

並木陽

【音楽】

日高哲英

【スタッフ】

技術:大塚茂夫

音響効果:菅野秀典

制作統括と演出:藤井靖

【あらすじ】

地中海と大西洋に挟まれピレネーの山並みを望む南フランス、ラングドック地方。長きにわたりフランス国王の支配の外で独自の文化と繁栄を誇ってきたが、その豊かな領土を欲した国王による「異端」討伐を名目とした軍勢によって、諸侯は屈服させられていた。

戦いが止んで数年を経た1237年。没落貴族の子弟ペイレ(海宝直人)と幼なじみのギレム(廣瀬友祐)は、“ラングドックの薔薇”と謳われる地方領主マルケジア(坂本真綾)が催す宴席で再会。二人して思いがけない危険な旅に巻き込まれる羽目になる……。

時代の変化に呑まれゆく土地で育った“その後の世代”の若者たちが、迷いながらも自分の道を見つけ出していく姿を描く時代ロマン。