『ラングドックの薔薇』 石川禅さん

NHK
2023年6月6日 午後5:00 公開

6/19(月)から2週にわたって放送の『ラングドックの薔薇』、出演者の皆さんからのメッセージをお届けしています。

【石川禅さん】メッセージ

嘗て、そのあまりに高潔な信仰心が危険視され、大勢力を持つ宗教団体から、徹底的に弾圧されたキリスト教の一派がありました。「ラングドッグの薔薇」は13世紀の南フランス、ラングドッグ地方、異端審問により人々が火炙りで処刑される世の中で、自分の生き方を探す若者達を描いた作品です。僕は今回、その若者達の1人、ラングドッグの領主トロサ伯の息女ジョアナ姫を守る老騎士ガストン役を頂きました。

ガストンのモデルにさせて貰ったのは、僕が演劇学生だった遥か昔、一人暮らしをしていた街の映画館で見た、巨大なダンゴ虫が暴走する、あの名作アニメーション映画に登場する男達。谷を救うために奮闘する少女と共に、及ばずながらも闘いに挑む、あの、老いて尚血気盛んな3人組。目指すのは、誠実で勇猛果敢だが、幾星霜を過ごした年齢ゆえに、どこか抜けていて大らかな彼等を1人に集約したような人物。因みに剣の腕は衰えておりません(笑)。過酷な旅の道行きに、ホッと一息つけるような存在になってくれれば幸いです。

しかし、どうやらこの男、それだけではなさそうです。さてさてガストンの真の目的とは。時代の波に翻弄された大人達のそれぞれの思惑が十重二十重に絡み合い、理想と現実の狭間で葛藤する主人公達を取り囲みます。冒険活劇の奥で、歴史の息遣いが聞こえるような重厚な物語。並木陽先生の新作。どうぞお楽しみに‼︎


近過去の青春アドベンチャーでは『1848』、『軽業師タチアナと大帝の娘』と、続けて「語り」を兼任していただいた石川禅さん。今回はガストン役に全力を傾注していただきました。

『1848』(2021年)

『軽業師タチアナと大帝の娘』(2022年)

メッセージの原稿を頂戴して「ああ、さすが禅さん、すべてお見通し!」と嘆息し、何とも言えない可笑しさと嬉しさの入り混じった感情がこみ上げて来ました。

並木さんと物語や人物造形の構想の練り直しを「あーでもない、こーでもない」と積み重ねていた時期、まさに「巨大なダンゴ虫が暴走する、あの名作アニメーション映画に登場する男達」を引き合いに出していたからです。

いつでも何の作品でも収録スタジオにいていただきたいと思わせてくれる青春アドベンチャーの守護神、石川禅さん。その絶品の老け芝居が冴えるガストン役に、どうぞご期待ください。

『ラングドックの薔薇』キャストボイス、次回は今井朋彦さんからのメッセージをお届けいたします。

『ラングドックの薔薇』(全10回)

~俺にはとっくに、騎士を名乗る資格などない。~

【NHK FM】

2023年6月19日(月)~6月23日(金) 午後9時30分~午後9時45分(1-5回)

2023年6月26日(月)~6月30日(金) 午後9時30分~午後9時45分(6-10回)

★「聴き逃し」配信あり(放送から1週間)

【出演者】

海宝直人 廣瀬友祐 坂本真綾 彩乃かなみ

音くり寿 石川禅 今井朋彦 川口竜也

桜咲彩花 廣田高志 秋山エリサ 木下祐子

【作】

並木陽

【音楽】

日高哲英

【スタッフ】

技術:大塚茂夫

音響効果:菅野秀典

制作統括と演出:藤井靖

【あらすじ】

地中海と大西洋に挟まれピレネーの山並みを望む南フランス、ラングドック地方。長きにわたりフランス国王の支配の外で独自の文化と繁栄を誇ってきたが、その豊かな領土を欲した国王による「異端」討伐を名目とした軍勢によって、諸侯は屈服させられていた。

戦いが止んで数年を経た1237年。没落貴族の子弟ペイレ(海宝直人)と幼なじみのギレム(廣瀬友祐)は、“ラングドックの薔薇”と謳われる地方領主マルケジア(坂本真綾)が催す宴席で再会。二人して思いがけない危険な旅に巻き込まれる羽目になる……。

時代の変化に呑まれゆく土地で育った“その後の世代”の若者たちが、迷いながらも自分の道を見つけ出していく姿を描く時代ロマン。