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マイトレジャー 春風亭昇太さん
NHK
2021年5月14日 午後6:07 公開

落語家の春風亭昇太さん、61歳。

1982年、22歳のときに春風亭柳昇さんに入門。今年で落語家生活40年目です。

大河ドラマ3本出演、NHK番組の司会、さらには城郭研究など、幅広く活動しています。

今回の宝ものは、分野を選ばず活躍する昇太さんを支えるものでした。

(聞き手:安部みちこアナウンサー)

2年前に落語芸術協会の会長に就任した昇太さんは、コロナ禍で、落語界の存続の為、難しい判断を迫られてきました。

「とにかくお客様の前に立てないっていうね…。仕事の方も中止や延期が相次いで、寄席の方も、(去年は)やらないっていうことになったりしましたので…若手の人達とかはすごい大変だと思います、今も。世界中が大変な時期なのでね。でも一瞬でもね、楽しい気持ちになっていただければいいなって風に思ってます。」

大変な時期だからこそ楽しんでほしいと、コロナ禍の1年も、昇太さんは意欲的に仕事に取り組んできました。

「来た仕事を断らないっていう」

安部:スケジュールで重ならなければ、どんなものでも引き受けるということですか?

「基本そういう風にしたいなと思ってるんですよ。」

安部:じゃあ一番好きなお仕事っていうと何になるんですか?

「・・・落語!やっぱり落語家なんでね。・・・本当はお城なんですけど」

大のお城好きの昇太さん。お城を特集する番組では、水を得た魚のようです。

あるときは城郭研究、あるときは俳優、さらには司会者と、落語家の枠におさまらない昇太さん。その多彩な活動を支える人生の宝ものは…

師匠・春風亭柳昇さんからもらったトロンボーン。

今から25年ほど前、昇太さんは落語家仲間でジャズバンドを結成。そのとき、トロンボーンを担当することに…

「誰がどの楽器をやるって言うの決めてる時に、僕の師匠の春風亭柳昇はトロンボーンやってたので、”お前は柳昇師匠のお弟子さんだからトロンボーンだ”って言われて、で、トロンボーンを吹くことになったんですよ。」

安部:まさに無茶ぶりですね!

「無茶ぶりですね。で、”トロンボーンやれって言われてるんです”って(師匠に)言ったら、”じゃあ、これあげる”って師匠の持ってた古いトロンボーンをいただいたんです。」

昇太さんの師匠、五代目・春風亭柳昇さんは、新作落語を数多く創作。18年前に亡くなるまで、落語界の重鎮として活躍。トロンボーンを趣味とし、度々その腕前を披露しました。

昇太さんは、師匠が大切にしていたトロンボーンを受け継いだのです。

宝もののトロンボーンは、いつも柳昇師匠の教えを思い出させてくれます。

「師匠が常々言っていたのが”何でもやってみろ”。落語をやるのは当たり前の話で、”落語以外にいろんなことに挑戦してみろ”と。やってみてダメだったらやめればいいだけ、やらないのが一番良くないから何でもやれって言ってたんですね。」

師匠の教えを受けて、昇太さんはかけだしの頃から古典落語のみならず、新作落語や演劇などに意欲を燃やしてきました。

安部:新作落語をやるとか、俳優として芝居に出るとか、色んなことをやるとき、外野から反対されたことはないですか?

「昔はありましたね。昔は古典至上主義みたいな落語ファンが多くて、新作とかやってると”落語やんなきゃダメだよ”とか言われました。

でも全然へっちゃらだったんですよ。 弟子としてはもう師匠がOKって言ったものは世間に対してもいいって言ってるんですって通せるんですよ。だから後押しみたいなもので、師匠のOKは。それはすごくありがたかったですよね。」

そんな師匠の教えは、昇太さんのトレードマークである眼鏡にも関係しているといいます。

「眼鏡っていうのは、落語やる時に結構ご法度だったんですよ。なんでかっていうと落語って目線で距離感とかを表現するんですね。で、目の表情って大事なんですよ。そういうので、眼鏡がない方がいいので、つけない方がいいって言われたんですね。まぁ、いなかったわけじゃないけど。

師匠に”師匠、眼鏡をかけて落語をやりたいんですけど”って言ったんですよ。”やめろ”って言われるかなとちょっと思ったんですけど、”やればいいよ、やればいいよ”って””やりづらかったらやめればいいじゃん”って言われて。」

「(師匠に)”うまくできたかい?”って聞かれたことがないんですね。いつも”ウケたかい?”って聞いてくるんですよ。お客様を楽しませるんだっていうことですよね。師匠から受けた質問はそれしかなかったです。」

「恐れずに様々なことに挑戦する」。柳昇師匠に後押しされ、昇太さんは落語家として成長していきました。

そして気づいてみれば、落語界で、押しも押されもせぬ存在になっていたのです。

挑戦する昇太さんの傍らには、いつも師匠のトロンボーンがありました。

安部:トロンボーンはいつもどこに置かれているんですか?

「僕の勉強部屋みたいなところがあるんですけど、いつでも吹いたり見たりすることができるように置いてありますね。師匠が吹いていたトロンボーンなので、色々こうね、仕事やって…今すごく楽しく仕事やらせていただいてるんで、この道筋を作ってくれた師匠ですんでね。本当ありがたいなと思ってます。師匠には申し訳ないですけど、僕にとっては仏壇みたいなところがあります。」

おととし、電撃結婚をし、話題になった昇太さん。実はこの裏にも、師匠の教えがありました。

「いや、僕もずっとね、独身でいるんだと思ってたんですよ。だけど、あの…なんでも経験しないと駄目だなと。」

安部:師匠の教えの「なんでも挑戦」が!(結婚)してみていかがですか?

「大変ですね。一人でずーっと自由に生きてきたので、連絡しなきゃいけないんだと。”ご飯どうするの?”とか言われて、”あ、ご飯どうするんだ俺!?”っていう感じですよね。僕は新作落語を作ってる時に、年中夫婦の話が出てくるんですよ。結婚してないのに夫婦の話ばっかり書いてたんですよ。」

安部:結婚前にですか?

「はい、前に。だからそれは多分、何も知らなかったから書けたんですよね。逆に知ってしまうと生々しくなって書けなくなるなと思って。」