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マイトレジャー 塩見三省さん

NHK
2021年11月8日 午前10:00 公開

今回のマイトレジャーは、俳優の塩見三省さん。
「あまちゃん」の琥珀の勉さん役が印象に残っている方も多いのでは。

7年前に脳出血で突然倒れ、いまも左半身にまひが残りますが、
苦境を乗り越えて俳優として第一線で活躍しています。
そんな塩見さんの復活を支えた宝ものとは?
それは、あの国民的スーパースターから送られたものでした。
聞き手は比田美仁アナウンサーです。

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比田:「今の体調はご自身ではどのように感じていらっしゃいますか?」

塩見:「現状維持ですね。リハビリをやらないと難しいですけど。
怠けるとそのパフォーマンスはガクッと落ちますから、
1日1日歩いたりスクワットしたりして、
そういうものを取り入れながら体力維持にはつとめているんですけど。」

■今年6月に自身のエッセイを出版した塩見さん。
その中で、当時の状況や7年間の闘病生活についてつづっています。

2014年3月。自宅で過ごしていた塩見さんは、
突然身体に異変を感じ、病院へ運ばれました。
診断は脳出血。危険な状態が3日間、続きました。そして…

塩見:「いちばん最初に感じたことは『あぁ生きていたんだ』ってことですね。
それから、こういう体になってしまったということを分かったときに、
自分のこれからの行く道というか将来というか、その事を思うと、
ある種の恐怖と絶望が襲ってきましたよね。
やっぱり悔しさとか『冗談じゃない』情けなさとか」

■入院生活は6か月に及びました。
退院後、リハビリの専門病院に通い始めた塩見さん。
そこで、思いがけない出会いを果たします。

塩見:「『1・2・1・2』と言って、
すごく大きな声で歩いてらっしゃる方がいて。
誰だろう?と見たら『長嶋さんじゃないか!』っていうことになって。」

■そこにいたのはなんと、あの長嶋茂雄さんでした。
2004年に脳梗塞で倒れ、その後リハビリを続けていたのです。

塩見:「長嶋さんがトレーニングをなさった後に僕がリハビリするって、
その時間の間が15分ぐらいあったんです。
そのうちに長嶋さんに挨拶するようになって
『塩見くん、頑張ってやらないとダメだよ』っていうことになって。」

■こうして、塩見さんは長嶋さんと言葉を交わす間柄になりました。

塩見:「あるとき長嶋さんにちょっと弱音を吐いたんですよね。
『苦しい。ちょっと苦しい。』って感じで。
そうしたら『塩見さん、でもこれも人生だよ』って言われたんですよね。
それで俺、結構グッときちゃって、ちょっと泣いちゃったんですよね。
そしたら長嶋さんも『頑張れ、頑張れ、頑張れ』って言って、
もう本当に館内みんな振り返るぐらい大きな声で、
私自身に言ってくださったんですよ。
それでなんかこう、すごい人だって。だって同じ病気なんですよ、長嶋さん、僕と。」

■そんな塩見さんの宝ものは…?

塩見:「長嶋茂雄さんからいただいた帽子です。
ツバに“長嶋茂雄、3”というサインを書いてくださったんです。
『塩見さん、辛い時は甲子園の投手も、
辛い時は、マウンドでツバ見て頑張るんだ』って言われて。
嬉しくって、これをかぶって、その年の夏は一生懸命リハビリをしていたんですけど。」

■流した汗で帽子のサインが消えてしまうほど。
無心にリハビリに取り組むうちに、ある思いが芽生えました。

塩見:「これは自分の生活・性格をこの病気っていうもので試されているんだという。
ここからは、俺はこの身体で生きていくんだっていう。

リハビリして、そしてやっていくんだっていう、
そういう力強さを持たないと、これからはダメだっていうことを、
この帽子も含めて、その長嶋さんと出会った日々っていうのが
何か僕にとって大きな転換というか。

自分とっては本当に宝もの。
あの日々がなかったら、失意に身を委ねてそのままだったり、
こんな形でこうグッと世の中に杖をついて胸張って歩いていくっていうことは、
あの人から教わったような気がします。

今はその病気になってこんな体になったってことが、
なんかこう…『ギフトだったんじゃないか』という気持ちになってきましたね。
今までの生き方みたいなものとまた全然違ったものを、
また自分が勝ち得たんだっていうか。」

■病と向き合ってきた塩見さんは、今、伝えたい思いがあると言います。

塩見:「番組を視聴なさってる方も、若い人も主婦の方も、 サラリーマンの方も年取った人も、 いつか自分も思いもよらないシリアスな問題が 自分に降りかかってくることがあると思うんです。

それは自分一人では無理だけれど、 いろんな人がいっぱい助けてくれることもあるし、 助けてほしい時は『助けてくれ』って言って。 友人達だったり家族だったり、本当に大きな声を出して 『俺は今苦しい、助けてくれ』って言うことを叫んで、 時間をかけていいから、すぐに前を向くってことは無理ですから、 自分で時間をじっくりかけて一つ一つクリアしていけば、 絶対に怖がる必要はないと思います。」