俳優・山田孝之さんに聞く「バブル。狂乱の時代にタイムスリップした僕が見たものは」

NHK
2022年4月28日 午後3:25 公開

誰もがマスクをつけ街を歩く姿はもはや日常になった。今年内閣府が発表した国民生活に関する世論調査。日常生活での悩みや不安について「感じている」「どちらかといえば感じている」と答えた人は77.6%に上り、この質問項目の記録がある1981年以降で過去最多となった。

不安で縮こまる現代の日本。しかし、かつて、途方もない自信にあふれた時代があった。いまから33年前、そうバブルの時代である。

「東京ブラックホール」いまから5年前に放送が始まったNHKスペシャルは今回で3回目に及ぶ。

終戦直後の1945年~1946年を扱った第一回放送の「戦後ゼロ年」、最初の東京オリンピックが行われた1964年を扱った第二回「破壊と創造の1964年」。番組に共通するのは、俳優の山田孝之が、21世紀の若者にふんし、時空を超えて当時の映像の中に入り込み、追体験していく構成である。第三回目の放送となる今回は1989年の「バブルの時代」を山田が追体験していく。

番組の完成直前に、その追体験について山田にインタビューを行った。

<自分はバブルを感じていない>

1983年に生まれた山田はバブルの当時6歳、鹿児島県にいた。

「鹿児島の薩摩川内市にいて、両親二人で喫茶店をやっていたので、“バブル”っていう感覚はないんです。時代っていうより、たぶんうちの家庭は、何もなかった気がしますね。自分たちの親の世代、もしくは、おじいちゃんとかの世代ですよね。その人たちが見ると『自分たちはこんなにがつがつしてたんだ』みたいに、素に戻れるという感じがします」

昭和天皇が崩御したこの年、宮内庁坂下門は弔問の人たちでごった返していた。この時代の映像の中に入り込んだ山田は、キャバクラで働く同世代の若者に出会い、アパートで暮らしながら当時を生きる人たちと出会っていく。

高給ディスコでは1本200万円ものワインまで登場した。大企業に勤めるサラリーマンは、タクシー代はすべて経費で落とせた。1万円札をひらひらさせながらのタクシー争奪戦がおこり、運転手が客を選べる時代だった。

<バブルの時代には行きたくない>

「元気っていうか、なんかもう、すごい刺激物を与えられ続けて、なんかみんなぶっ飛んじゃってたみたいな感じに見えました。別のドラマでも、バブルがもうはじけるタイミングだったり、あとバブルのさなかの、なんか“調子乗っちゃってる”設定のキャラクターを演じたこととかはあるんですよ。でも、その時代に行きたくないですね。絶対合わないです。その人たちと。感覚が(笑)」

2022年に生きる山田が感じたバブルの時代への違和感とは―

「やっぱり、欲がすごすぎて。僕も欲はあるけど、なんか、その時代は『奪ってでも』みたいな、もう頂点上り詰めるみたいな…。要は人の上に行きたいっていう感覚がちょっとわからなくて、本当にあの時代にいたら、僕はなんかまず友達できないだろうなあ、と思うんです」

この時代に行われた国の世論調査。コロナ禍の現代とは全く違う“希望”を多くの人たちが持っていた。

「日常生活に悩みや不安を感じていない」と答えた国民は、51%。調査が始まった昭和33年から現在に至るまで、この調査で「不安を感じていない」回答が半数を超えたのは、この時期だけである。一方で山田がバブル時代に感じたのは別の感覚だった。

「みんながみんなでは、もちろんどの時代もそうではないでしょうけど。なんか息苦しかっただろうなって思いますね。もうとにかくみんな横見て、競い合って、とにかく上見てっていう。立ち止まったり、振り返ったりすることがよしとされなさそうなので、あの時代は。『一回ちょっとみんな落ち着いてさ』って、『休憩しようよ』っていうと、『はっ?お前何言ってんの?』みたいな。なんか、そういう時代だから、みんな疲れていた人が多いんじゃないかなって思います」

<十分平和で潤っているんじゃないかと>

バブルの時代、ひとつの栄養ドリンクのCM からこの時代を象徴する流行語が生まれた。「黄色と黒は勇気の印、24 時間戦えますか?ビジネスマン、ビジネスマン、ジャパニーズビジネスマン。」経済を動かすためにオフィスビルには深夜まで煌々と明かりがついていた。都心の地価は高騰し、多くのサラリーマンは長い通勤時間がかかる郊外に家を求めた。終電を逃すと次の日の仕事のためにカプセルホテルに泊まる人たちも多かった。1989年、バブルの年のサラリーマンの労働時間は、いまと比べて、年間400時間も多かった。

「常に時代はぐちゃぐちゃしてますけど、なんかこのときよりは、いまの世代のほうが気楽に生きられてるんじゃないか、なんかちょっと安心して生きられるんじゃないかなとは思います」

現代まで長く続く日本の迷走の元凶とも言われるバブル。そして新型コロナウイルスの感染拡大。しかし、バブルの時代から戻ってきた山田は、いまの社会を世論調査の「不安」とは異なる物差しで見ている。

「僕が学生時代のときよりもっと前にバブルがあった。いま考えると、バブルがはじけて下がってたところから上がっちゃってない?って、すごく思ってます。国の借金のこととか…いろんな数字はありますけど。それでも、人から奪ったりもせずにみんな食べていけて、もう一般的に生きていけてるから、十分平和で潤ってるんじゃないかと思っています」

そんな山田孝之さんが、バブルという狂乱の時代を追体験することで、いまの私たちが失ったもの、得たものを浮かび上がらせていく。NHKスペシャル「東京ブラックホールIII 1989-1990 魅惑と罪のバブルの宮殿」は、5月1日(日)夜9時放送予定。

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