旧統一教会 改革できるのか? 改革推進本部長に問う

NHK
2022年10月2日 午後8:36 公開

9月22日に「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会が開いた記者会見。そこで教会は、信者やその家族の社会生活を困難にする過度な献金にならないよう指導を徹底することなど、「教会改革」の方針を発表し、内部に「教会改革推進本部」を設置した。

教会のこれまでの活動の何が問題だったと考えているのか、そして、それを改めることは出来るのか。

NHKスペシャルでは「改革推進本部」のトップの勅使河原秀行氏に単独インタビューを行った。そこで語られた改革の内容や韓国の世界本部との関係など、詳細を伝える。

(NHKスペシャル取材班)

旧統一教会など、特定の信仰を持つ親の子ども“宗教2世”の問題を取材し、安倍元総理大臣の銃撃事件が起きる以前から、様々な番組で取り上げてきたディレクターたち。事件後も「クローズアップ現代」などを足場に旧統一教会の幹部や関係者への取材を繰り返してきた。まもなく事件から3か月となる、9月30日。向かったのは、旧統一教会がインタビューの場所として指定したある地区の教会だった。

迎えに対応した教会長、そのすぐ横に、「献金箱」と彫られた木製の重厚な箱があった。教会を訪れる信徒がここに“善意”で寄付をする、それが教会の活動資金になっているという。

奥の部屋から、勅使河原氏が現れた。元証券会社の社員で、これまでアメリカにある旧統一教会の関連企業で勤務したあと、その後日本の教会本部で人事や財務を担当する総合企画局の副局長を務めていた。

1992年には、タレントの女性と旧統一教会の「合同結婚式」に参加したことが報じられ、話題になった人物だ。

マスク越しでもやや緊張した面持ちとわかる勅使河原氏。取材班はまず、教会の改革推進本部について、このタイミングで設置した理由と、その改革の目的をたずねた。

勅使河原「安倍元首相の銃撃事件、このこと自体が本当にショッキングで、思いもよらぬことでありましたけれども、それが家庭連合に対する恨みが動機であったということで、大変私どもも非常に驚きまして、それ以降、政府のほうも動いて、省庁間の連絡会議を持って、家庭連合との関連した被害というのがあるならば、調査しないといけないということが始まりました。政府が私どものことで調査をするということは、今までにも例がなかったでしょうし、宗教法人としてはあってはならないことだと思います。そして、マスコミ報道によって、多くの宗教二世や、元信者といわれる方々がテレビや雑誌に出て、非常につらかった経験や苦労した体験を赤裸々に告白している姿がありました。そういったことも非常に胸の痛い話でありますし、もし、それが本当に起きているということであれば、それは改革をして、なんとか対処しないといけない問題であろうと。そういうことで、まず、自らの足元の教会、そして、信徒さん個人と向き合って、必要に応じて適切な改革を講じるということが大切であると」

山上容疑者の家庭など“献金問題”についての見解は

勅使河原「もともと本人が破産をする理由も全くないのに、献金が理由で破産するということは、これはあってはなりません。そう考えたときに、献金のそのお金の『性質』、これはすごく重要なことだと思うんです。やはりその献金を捧げたときに、信徒さんがたくさん貢献するということ自体は、自分で使うよりも、その世のためにと言って出されるわけですから、立派な行為じゃないですか。ただ、それが行き過ぎて、通常の生活も送れないようになってしまうとか、これはもう行き過ぎなんですね。だから、そういうことがあってはいけないというのは、一貫して主張してきましたけれども、今回はもうさらに徹底して言わなければいけないということですね」

Q:2009年のコンプライアンス宣言のときの指導を再度徹底するということだとすれば、2009年以降進めてきた指導というのは不十分だったということか?

勅使河原「残念ながらそう言わざるを得ない面があった。私の感覚からするとですね、宗教は、たとえ1人であったとしてもですね、恨まれるということはやっぱりあってはいけないと思うんですね。だから、そう考えたときに、そういう献金を奨励するスタッフの隅々に至るまで、そうならないように限度とか、あるいはその勧め方とかですね、これらは注意すべきであって、今、マスコミからこれだけ言われているということもですね、これは謙虚に反省すべき点があるんではないかと思います」

繰り返された“過度な献金”をなくすことが出来るのか?

Q:改革の骨子の中で、信者の経済状態に比して過度な献金にならないよう十分に配慮しなければならないと明記しているが、献金が過度であるかどうかという判断は、誰がどのように行うのか。

勅使河原「今回、改革案の本文では、信徒さんが献金を捧げて、その後、通常の社会生活を送れないとか、あるいは、借りたお金で献金するとか、そういったことが過度な献金という意味なんだということを今回、はっきりさせました。この基準というのは、自己申告ベースで大体わかります。そう難しい基準じゃないんです。そう考えれば、まず本人がまず判断するし、次に受け取る側も大きな金額については、聞きとりをするなど再確認して、記録にとどめる、そういったことをやっていくということがあります。

基本的に宗教ですから、良心に基づいてみんな行動してるんですね。疑うという立場に立てば、もうこれはキリがないわけです。それこそ財産証明とか収入証明というか、何かを客観的な数字とか、ただ、どこまでも宗教なので、良かれと思ってやることが前提ですから、何も何と言うか、税務署が税金を正しく徴収するのに、客観的なエビデンスを求めていくっていう類いとはちょっと違うと思うんですね」

Q:具体的にその収入の、信徒の収入のどのくらいを超えたら過度ではないかなど、何らかの数字的な目安はあるか。

勅使河原「今回、本部でも議論したんですけど、結論としては、10分の3という毎月の収入の3割を超えると、そのお金の性質というものがどういうものなのかということを確認する必要があるというふうに判断しています。通常、月例献金という感じで献金しますが、キリスト教は聖書の伝統に従って、基本的には収入の10分の1という基準があるんですね。

(旧統一教会の創始者である)文先生はかつて、『新しい天の伝統』とおっしゃられて、可能であればということですけど、10分の1を『教会に』、さらに10分の1を『国のため』、さらに10分の1を『世界のため』といって、10分の3という基準を一度出されたことがあるんです。これは、義務とかノルマとか、もちろんそんな話ではないんですけど、信徒として、国のため、世界のためという価値観の中でね、それができたら望ましいと。そういう10分の3についての一応、根拠はある。これを超えれば、相手の内容を確認して、そして記録に残していくと。記録に残されたものは、その上の上部組織の教区だったり、あるいは改革推進本部だったり、そこでチェックできますから」

(インタビューが行われた部屋にも故文鮮明氏と韓鶴子総裁の写真が)

9月の記者会見では具体的な数字が示されなかった「過度な献金」について、その指標が初めて明かされた。

Q:家庭状況によっても10分の3というのがどれくらいの負担になるのか、異なってくる。過度かどうかを10分の3という目安で判断できるのかどうか疑問もあるが。

勅使河原「10分の3というのは『記録をとる基準』であって、過度かどうかはあくまでも、通常の生活をきちんと担保できるということと、そして、その献金というのは借金でするものではないと。だから、当然、原則は収入の中からということになりますね。だから、過度という点ではそこですよね。一方で、やはりどう考えても固定的数字の目標というのは、難しいんだろうと。やはり、そこは人間と人間なので、主観的といいますか、そういう金額では定められないんですけど、通常の生活が脅かされないということが本当に大丈夫なのかということを確認するということですよね、大きな規模の献金ということになれば」

Q:それらを進めていけば、山上容疑者の家庭のケースや、宗教二世の問題で苦しんでいる家庭でのトラブルや、苦しみはなくなるのか。

勅使河原「今のが徹底されれば、ほぼなくなると思います」

Q:できるのか。実行性は?

勅使河原「今回、その監督機関の文化庁に、年に一度予算計画を出すんですけど、その計画も基本的にはもう規模を半分以下に一応抑える方向で大体調整がつきましたから。従って、まあ、そういう過度な献金にはならずに教団として十分運営、あるいは教団が目指すことをやっていけるような体制に内部的にはもっと構造改革が必要になってくると思うんですけど」

Q:献金などで得られる収入をこれまでと比べて半分以下にするという計画?

勅使河原「そうですね。献金ですから、あくまでも実際、予算目標を立てたとしても、そのとおりになるかならないかなんか全然わからない。企業の売り上げ目標とは違います、あくまで献金でありますから。ただ、そうすることによって1つのメッセージになるんじゃないかと思います」

Q:具体的な金額は?

勅使河原「そればっかりはちょっとあんまりですね、遠慮させていただきたいと思います。ですから、まあ、過度にならないようにということを組織的にも、対個人と接するときにおいても徹底していくつもりです。先ほど申し上げましたとおり、金額というよりはね、その文化庁の報告している予算規模を半分程度までは大幅に切り下げることによって、非常に活動が緩やかなものになるのではないかと思います。どこの宗教にしても、献金が幾らあるとかそんなことは言っていないと思うんですね」

勅使河原氏は具体的な金額は明言を避けたが、予算規模を半分以下にするという方針をメディアに対して初めて明かした。

Q:改革が遂行されているかチェックする仕組みとか、その効果の測定。これは、どうやって行うのか。

勅使河原「今、考えていることは、そういうコンプライアンスが守られているかどうかということはですね、やっぱり信徒さんに無記名でアンケートをとるのが最も効果的であると思われますので、そういった調査を定期的にやるように1つには考えています」

Q:あくまでも家庭連合の内部でのチェック機能というのを強化するというふうに聞こえるが、外部によるチェックみたいなものは考えていないのか。

勅使河原「外部の方がチェックするというのは、果たしてどうやったらそれが可能なのか。例えば、献金という行為は、現場の全国の300近くある教会で現場でなされているわけじゃないですか。しかも、その…何て言うんですかね、どっかの外部の方がなんかアポイントをとって行くとかね、そういう次元ではチェックのしようもないかと思うんですね」

Q:2009年のコンプライアンス宣言以降も被害を訴える声が実際にあった。教会内部の取材で、やはり内部だけでチェックするということが、そこが、コンプライアンスの徹底が甘くなった一因だという証言が複数あった。

勅使河原「そういう点に関しても、これから責任役員の皆さんとも話をしながら考えていきたいと思います。検討していきたいと思います」

まずは内部での改革を進め、その先に外部からチェックする仕組みの導入について、勅使河原氏は「コミットはしないが、あり得るとは思う」と語った。

韓国 世界本部との関係は?

NHKが韓国で行った旧統一教会の世界本部の関係者などへの取材によれば、「日本教会が韓国の本部からの独立性を保ち、自主的な意思決定をすることは不可能だ」という複数の証言がある。

一方で、9月に教会が行った記者会見の中で勅使河原氏は「予算全体の減額について日本の権限と責任において実行し、世界本部の了承も得ている」と説明した。韓国の本部とは今回の改革についてどのようなやりとりがあったのか。

勅使河原「やはり改革の必要性を論じるなかで、海外への送金…海外の支援ですよね、それ以上にまずは足元の国内の教会なり、個人の家庭なりをもう一回見つめ直さないといけないという判断をいたしましたので、その事情も世界本部に説明して、私たちで決めたということですね」

Q:韓国の世界本部が変わらなければ問題は解決しないのではないか、という指摘もあるが。

勅使河原「うーん、韓国本部も別にそんな無茶な人ばっかりということではないので、彼らだってわかるんですね。話せばわかるというか、やっぱり事情を説明して、できないものはできないということじゃないでしょうかね。ですから、どういう情報源かは存じませんけど、決してそういうことはないですよ」

Q:世界本部にとって日本からの支援額が非常に大きなウエイトを占めるということは取材を通じて明らかになっている。そこを減らすんだという、日本側のいわば“自主的な決定”ということについては、本部からしてみれば、「余計なことをしてくれるな」というふうにならないのか?

勅使河原「私どもとしてもね、今はまずこの国内の諸問題に対処すべきだと。それがもしやらないとしたらね、責任とれるのかといったときに、彼らもとれないですよね。やっぱりどんなことも持続的に発展可能な状態じゃないかぎり、存続できないわけですから。それは何を言ってこようがですね、できないものはできないということですね」

Q:そこは、自ら説明や説得をしたのか。

勅使河原「まあ、私は財政を担当する者の1人ですから、そういう話はしますし、責任役員の皆さんとそして、韓国本部とも話していますよね」

勅使河原氏によれば、今回の日本側が示した改革の方針は、韓鶴子総裁、世界宣教本部長など、韓国の最高幹部の了解は基本的には得られているという。

世界本部に対して、なぜ日本からの支援額が飛び抜けて多いのかという点も取材班が注目した部分だ。

Q:飛び抜けて日本が多い、日本からの支援額が多いというのは、どういう理由が。

勅使河原「まず、そういう事実が本当にあるのかどうか、まず私はよくわかりません。私は日本のことしか知らないので。世界のさまざまな拠点の全てのまとめているのが、世界本部だったり、グローバル財団というところですけど、そこに入ってくるお金が日本だけが圧倒的に多いかどうかっていうのは、私はちょっと確認したことがないのでわからないです。そのグローバル財団は、ひと昔前は宣教財団と言っていたんですよ。この宣教財団に日本はお金を送るんですけど、その宣教財団に他国からどういうお金が来ているかというのは、全くわからないですね」

Q:もう完全にベールに包まれている、知る術もないということか。

勅使河原「まあ、もちろん…ちゃんとしたルートでそれを知りたいということで聞けばわかるかとは思いますね」

信者やその家族、“二世”に対する教会の今後の姿勢は

先日の会見の冒頭で、「公共の福祉に資する宗教法人が、たった1人でも恨みを買うことがあってはならない」と、述べた勅使河原氏。信者やその子どもなど家族が、献金や信仰の継承に伴う苦悩、葛藤を抱えたとき、教会としてどのように対応していくのか。

勅使河原「小さい頃はともかくとして、だんだん自我が目覚めて成長していけば、見たり、聞いたりする範囲も広がってくる、大人になっていくわけです。そういった場合はですね、納得性が大事じゃないですか。その本人が納得するかどうか。例えば、教理の中身や理念、また、お父さん、お母さんの生き方、いろんなもの全部が子どもたちの判断基準になるわけです。従って葛藤があるとすれば、そこに納得できないものがあるということですから、まず家庭において向き合って、よく話を聞く。その子がなぜそう思うのか、なぜ葛藤が生じているのか、よく聞くというのが、まず大事ですよね。聞いた上で親としては親のよかれと思う理由があるので、その辺を話しながら、葛藤を解決していく。まず、これが基本だと思います。家庭連合(旧統一教会)も全信徒さんに対して、よく子どもたちと向き合うんだと。例えば、献金もね、それがもし子どもたちが反発するような状況であればね、やってはいけないと指導しています」

“二世”の問題に関しては、まずは家庭内の親子の関係や対話から、そして教会も親の信徒に対して指導を行うというのが、あくまで勅使河原氏のスタンスである。

過度な献金を本当に防げるのか?

取材班は旧統一教会の“二世”から、高額の献金を求められたやりとりの画像を入手した。

韓国で進められている「天苑宮」の建立のため、183万円の献金を教会が信者に求めるやりとりだ。

教会は、信者の経済状況がわかっていながら献金を求め、信者が124万2000円の献金を行うと、「私も本当に胸が痛いです。そんな大変な中から(中略)よく捻出できました。頑張りましたね」という言葉を送っている。

今回のインタビューで、こうしたやりとりが行われている実態を勅使河原氏に問うと、即座にこう答えた。

勅使河原「もうそれは止めてもらいます。献金ってどこまでも義務ではないので、だからそれは本人がそうしたいという、要するに教理に対して共感し、そして本人の選択でやるということは、ただし、そのやるという判断も今回加わったのは客観的に見て普通、通常の生活が営めないじゃないかという場合は止めるということですよ。これからは」

(韓国で建設が進む教会施設 日本からの献金が充てられている)

Q:ということは、これまでの対応にはやっぱり問題があった、足りないところがあったということか。

勅使河原「そうでなければ、今のようないろいろと…いわゆる二世たちがもうかくもたくさん…実際は知りませんけども、何人いるのかは。実際は、家庭連合に残って通常の信仰を保っている人たちのほうが圧倒的に多いとは思うんですけれども、しかし、そういう人たちがいるという事実はあるわけですから、これはやっぱり反省しないといけないと思ってます」

実は、旧統一教会は、NHKスペシャルのインタビューを受けるにあたって、内部で“二世“に対するアンケートを行っていた。緊急で行ったと言うことで期間は1日半。回答を寄せたのは2016人だったという。

教会によれば、忖度なしに回答してもらうために全て無記名でのアンケートだったという。調査を実施した教会長は、自ら持ち込んだボードを使って説明した。

ただ、このアンケートの見方には注意が必要だ。回答者のうち、80%が教会に1か月に1回以上通っている信者、つまり今もかなりの信仰を持っている人であるということ。つまり、トラブルなどがあって、教会と断絶したり、距離を取ったりしている二世はほとんど含まれておらず、このアンケートが実態全てを映しているわけではない。

 「家庭連合(旧統一教会)の二世として生まれて良かったと思いますか?」

 □心から良かったと思う  44.3%

 □良かったと思う 30.6%

 □どちらとも言えない 17.0%

 □良かったと思わない 4.1%

 □全く良かったと思わない 4.0%

旧統一教会が独自に行ったアンケートでは、全体のおよそ4分の3が「二世に生まれて良かったと感じている」と答えているという。回答者の80%が毎月教会に通う信者であることを踏まえれば当然の数字かもしれない。一方で、約8%が「良かったと思わない」と回答し、その理由として、「苦労が多い、特に親子問題、金銭感覚があわない」という経済的な事情が多くあげられたという。

実際、信者の家庭が献金などによって「貧しい」状態にあることは、このアンケートでも裏付けられた。

「家庭連合(旧統一教会)の二世として生きてきて、これまで一般家庭と比べ自分の家庭が貧しいと感じたことはありましたか」

□感じたことがある 33.4%

□やや感じる 26.3%

□どちらとも言えない 11.0%

□あまり感じない 16.4%

□感じたことはない 12.9%

アンケートに回答した“二世”のうち、およそ6割が貧しさを感じていたという。

教会長は、二世や家庭の実態や貧しさを把握する難しさを吐露した。

教会長「この教会、私の教会にも115人の二世がいるのですけど、その115人のうち38人とは面識ももてていない状態です、その38人に対して会ってお話もしたい、そういったメッセージを発信し続けてはいますけども、簡単ではありません。それは親自身が子どもに向き合えない、という点もありますし、子ども自身が教団の関係者と会いたくないというのもあります。ですので、例えば私が山上家の教会長だったら、私自身が当時の状況を踏まえて何か出来たかというと、正直なところ、自信はありません」

最後に勅使河原氏は、今回の事件が起きるまで、教会の改革に踏み切れなかったことについて、こう語った。

勅使河原「たとえば2009年以降民事訴訟というのは4件なんですね、2009年から13年間で4件ですから、1年に1件も起きていないんですよ、だからそういう中において、その深刻さの程度に、その深刻さに対する認識が甘かったというのはあります」

Q:訴訟にまでなったケースが少なかったとしても、外から見えにくいという事は、教団内部からも気が付きにくい、事態が見えにくくなっていたのでは。

勅使河原「まあ、あるやもしれません。要するに私が人事部長でもあるので、色々とそういういわゆる私たちは職員の事を『公職者』と呼んでいますけど、公職者にかかわる問題というのは私のところに来るようになっているんですね、でもそれもやっぱり私の耳にまで届くというのはやはりそれくらい大きな問題という事なんですけど、もちろん私の方で、私自身ももっと『これは問題だ』といってつまり制度的問題だと、叫べばよかったのかもしれませんけど、やはりそこに対するその真剣さというかそれが足りなかったといわれても仕方ないですよね」

Q:教会内部の声だが、このままだと第二第三の事件が起きてもおかしくないという強い危機感があるというような発言もあった。それは本当にこの教会は変われるのかという疑念が払しょくできていないことの表れかと思うが。

勅使河原「私もサラリーマンではないんですね、サラリーもらっていますけど、でもそういうサラリーマンとしてやっている訳じゃなくて、私なりに私に与えられた責任において、宗教者ですから神様に対してとなりますけども、自分の責任を果たさないといけないと、こう思っています、それが今教会改革の推進本部長ですから、その与えられた職責にみあった改革を成し遂げていきたいなとこう考えています」

今回の勅使河原氏の発言について、宗教社会学が専門の上越教育大学・塚田穂高准教授は次のように語る。

「具体的な数字などを出したことは評価したいが、実効性は不透明だ。物販を介した『霊感商法』が控えられるようになった後も、韓国への送金のために強要的な高額献金に振り替わったように、今度は韓国現地での献金など別の方法に替わるだけではないかと懸念が残る。要はこれだけの『あってはならないこと』が、実際にあったということだ。『霊感商法』も依然として認めていない。まずは過去に行ってきた問題行為を認め、被害救済・回復に力を尽くすことが先決だろう。二世への調査も不十分だが、それでも内部に深刻な問題が蓄積されていることが垣間見られる。今回の改革案が本当に実行されるのか厳しく見ていく必要がある」

安倍元首相の銃撃事件からまもなく3か月。社会から注目され、あらわになってきた旧統一教会をめぐる問題。政治と教会のつながりの実態、世界本部と日本教会との関係…その全容をつかむにはまだ至っていない。

苦しむ信者やその家族は救われるのか。引き続き注視していきたい。

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