北の海 よみがえる絶景

NHK
2022年1月9日 午後10:05 公開

(2022年1月9日の放送内容を基にしています)

北海道のアイヌが残した不思議な言い伝えがある。「カモメが空を飛び交うと海の色が消える」。幻だともいわれていたその現象が、実は今、北の海で次々と目撃されている。真っ白な雲が海に落ちたような幻想的なみなも。冬、数kmにわたって海が白く染まるのだ。それだけではない。北の海では、ほかにもまか不思議な現象が起き始めている。北海道の海で一体何が起きているのか。不思議な海の現象を、最先端の撮影機材で徹底追跡。季節を巡り繰り広げられる北の海の驚異のスペクタクル。その真相に迫る。

<幻の白い海 神出鬼没の美景をとらえろ>

雪吹き荒れる2月。アイヌの伝承にも残る幻の白い海を追って、私たちは石狩湾へと向かった。白い海は、地元では「群れが来る」と書いて「群来(くき)」と呼び、「大漁のお告げ」ともいわれてきた。最近になってその光景を目撃したという漁師が、語ってくれた。

漁師「ここからブロックの手前まで沖も真っ白で、一切下見えないから」

漁師「牛乳を混ぜたような色になる」

漁師「乳白色だよ。温泉に入っているみたいな色」

それは、一体、いつ起こるのか。

漁師「どんなときか本当に分からない」

漁師「凪(なぎ)になって最初の日は来ない。2日か3日後に来る。今までの感じでは」

漁師「朝方とかが多いのかな」

漁師たちから複数の目撃情報が寄せられた小樽市の銭函(ぜにばこ)海岸。

ここに観察拠点を作り、白い海の撮影に挑む。証言によると、現れる可能性が高いのは夜明けごろ。撮影できるタイミングは、ごくわずかだ。合計8台の水中カメラを海岸線のあらゆる角度に仕掛けて待ち構える。

固定カメラの死角には水中ドローンが巡回。夜を徹して、極寒の海に来る日も来る日も潜った。観察開始から2週間後、穏やかな凪の日が続いた。午前3時。

カメラマン1「白くなってるぞ!」

カメラマン2「うそ⁉」

撮影の準備中に予想外の出来事が起きた。暗がりの中、大急ぎで海の中を確認する。

ライトに照らされた先は、白く濁り始めていた。目を凝らすと、体長30cmほどの魚の群れ。ニシンだ。

しかし、一瞬しか観察できない。白く染まった暗い海での撮影は困難を極め、なすすべもなく夜が明けた。

広がっていたのは真っ白な漁港。波けしブロックの外まで海が白く染まっている。これこそが、アイヌにも語り継がれてきた伝説の光景「群来」。

海の白さが消え始めたころ、水中を調べてみた。海藻についた粒の正体は、大きさ1mmほどの卵。「かずのこ」としてもおなじみのニシンの卵だ。

瞬く間に白く染まった海と一夜にして現れた膨大な数の卵。まさに、幻でも見ているかのようだ。

<幻の白い海 世界初実験で見えた戦略>

研究者の協力の下、海が白く染まる現象を、実験室で再現しようと試みた。幅10mの巨大水槽に人工海藻を入れ、繁殖期のオスとメスのニシン700匹を飼育。

そこに「ある物質」を投入すると、ニシンに変化が現れた。

泳ぐ列が乱れて、不規則な動きが増えていく。しばらくすると、水が白く濁った。ニシンが一斉に精子を出していた。

実は、あらかじめ投入したのは、ニシンの精子。それが刺激となり、水槽の中を泳ぐオスが次々と放精(ほうせい)し、水を白く染めたのだ。すると、メスにも変化が現れた。人工海藻に近寄り小刻みに震えながらお尻をこすりつけている。産卵だ。メスはそれぞれが6時間もかけて数万個の卵を産みつけていた。魚の産卵時間としては極めて長い。

多くの生き物は、パートナーを決めて繁殖を行う。ところがニシンは相手を選ばない。群れのオスが一斉に放精して、海全体を精子で満たす。群れが一丸となり、産みつけられた膨大な数の卵を一気に受精させる。受精率を極限まで上げるしたたかな戦略だと考えられている。

<幻の白い海 大産卵が生み出す命の連鎖>

今回確認された群来は、幅およそ2km。推定800億もの卵が産みつけられていた。

群来が起きた海岸に次々と鳥たちが集まってきた。お目当ては海藻についた卵。食べ物が少ない冬場のまたとない恵みだ。

ごちそうを求めて、さまざまな生き物が現れる。それでも卵は食べ尽くされることはない。海底は、途方もない数の卵で埋め尽くされているからだ。幻の白い海は、捕食者を圧倒するスケールで卵に命を吹き込もうとするニシンの一大プロジェクトだった。壮大な営みが、北の海の豊かさを支える。

<幻の白い海 復活にかけた漁師たちの格闘>

なぜ、群来は最近になって再び現れ始めたのか。背景には、漁獲高日本一、北海道の漁師たちの格闘が秘められています。明治から大正にかけて、北海道では一大産業だったニシン漁。最盛期には年間100万トン近くを漁獲していたといいます。これは、北海道の現在のすべての水揚げに匹敵するばく大な量です。「魚に非ず」と書いて「鯡(にしん)」。無尽蔵に取れたため、食用だけでなく肥料としても高値で取り引きされました。ニシン漁師は巨万の富を築き、その財で御殿を建て栄華を極めました。漁師歴70年、かつてのニシン漁を知る竹内司さんです。

漁師歴70年 竹内司さん「ニシンが来る来ないによって一年の生活が決まった。それほどまでにニシンというのは、おれらの先代からすれば『宝の魚』だった」

一獲千金を夢みて、漁師たちは目の前の宝に夢中になりました。

竹内さん「人を惑わす魚だ。あいつは。今でも、おれは人を惑わす魚だと思ってる。博打(ばくち)は、なかなかやめられないというのは分かる。(ニシン漁は)博打打ちと同じだもん」

長年の乱獲に環境の変化も加わり、漁獲量は激減。時を同じくして、群来も消滅したのです。

宝の魚・ニシンを取り戻そうとかじを切ったのは25年前。地元の漁業関係者によるニシン復活作戦が始まりました。現在、毎年200万匹の稚魚を育て、海に放流しています。さらに未成熟なニシンを取らないなどの地道な資源管理を続け、およそ半世紀ぶりに群来が復活したのです。

<幻の白い海 よみがえる宝の魚>

ひと冬をかけた今回の取材。石狩湾沿岸で、14回もの群来に遭遇しました。中でもこちらは、これまでにない貴重な映像。夜が明けてもなお産卵が続き、海面にあふれ出るほどニシンが押し寄せています。

かつて、巨万の富をもたらしたという宝の魚。その記憶をほうふつとさせる姿です。

石狩湾漁協 上山稔彦 副組合長「北海道みんな一緒になって、自分たちでとった卵を集めて放流した。孫子の代まで取れるように、自分たちも放流事業と資源管理は大事だと思う」

長い時間をかけてよみがえりつつある神秘的な光景。それは、北の海の漁業復活ののろしでもあるのです。

<突如現れてうごめく巨大渦 陸海空から正体を探れ>

北海道で桜が咲き始めた4月下旬。さらに奇妙な海の現象があると聞き、私たちは、日本海に浮かぶ島々を訪ねた。手がかりは、海に突如現れる「巨大な渦」。カモメが吸い込まれそうになるほどの渦の下に、異様な光景を見た漁師がいる。

地元漁師「海の中に雲があるような感じ。真っ黒くなって、それがアレ何だろうと思ったら移動している。少しずつ10mくらいの大きいのが、渦を巻きながら移動している」

渦の正体を探る撮影チームを結成した。リーダーは、生涯をかけて海のスペクタクルを追う水中カメラマンの中川隆さん。毎年、現地に通い続け、渦が発生する海域の有力な情報を手に入れた。

水中カメラマン 中川 隆さん「去年、少し見えたらしいんですよ。ワクワクして飛んできました」

千載一遇のチャンスを逃すまいと大規模な捜索に乗り出した。まず中川さんたち潜水班はボートで渦を探し回る。

ドローン班は空から広範囲に捜索。

そして陸上班。こちらは渦が現れた時に集まるという海鳥の動きを観察する。

陸海空、持てる手段を総動員した捜索の始まりだ。しかし思うようには進まない。現れる場所、時間、天候、そのほとんどで手がかりがなく、根気よく探し回るしかないのだ。

捜索開始から2週間後、ある違和感を感じ取った。

あちこちに、魚の糞(ふん)らしきものが浮かび、鼻につく臭いがし始めたのだ。

しばらくすると、

中川さん「見える見える」

急いでカメラを向ける。

魚の群れだ。茶色いまだら模様をしている。しかし、海面にカメラを入れた瞬間、魚たちは深みに消えてしまった。その直後、陸上班がカモメの怪しい動きを察知した。カモメが水面にいる魚に次々と襲いかかっていたのだ。

下に群れがいるに違いない。

陸上班は、すぐさま潜水班に連絡。ドローンも現場へ急行。急いで、カモメがいた場所へ向かう。中川さんがすぐに海面の変化を見つけた。

「あれ!あれ!」

「今、渦でき始め。ボコボコしてる」

「巻いてる巻いてる」

「渦ができた!」

突然、海面に渦が現れた。直径3mはある。

下で、一体何が起きているのだろうか。少し距離を置いて潜って近づく。海は10m先も見えないほど濁っている。魚の群れが迫ってくる。

北の海の幸・ホッケだ。追いかけていくと、すさまじい群れ。

みるみる巨大な柱のように大きくなっていく。

一体、何万匹いるのだろう。

<突如現れてうごめく巨大渦 下には海を貫くホッケの大群>

柱は、海面近くから深みへと伸び、海の底へと連なっている。下へ潜っていくと、海底まで届いている。ホッケの柱は、最大で15mにも及んでいた。

中を調べようとさらに近づくと、柱は崩れてしまう。

そこで作戦変更。「浮き」を用意し、360度撮影可能な小型カメラをつけて接近を試みる。

カメラは、渦に吸い寄せられていく。

柱の中心に、見事、吸い込まれた。見上げてみると、柱の中で、ホッケは皆立ち泳ぎをしている。これが、水面に大きな渦を作り出す秘密。数万匹のホッケが立ち泳ぎをすることで強い下降流がおき、渦ができるというのだ。

では、何のために渦を作るのか。謎を解く鍵は、柱の上、水面近くに現れた不思議な「ピンクのもや」だ。

水をすくってみると、「もや」の正体は春に海面で大発生するプランクトン。

ホッケたちは、このプランクトンがお目当てのようだ。上空から見ると、群れのちょうど真ん中に、直径5mほどの渦巻きができている。プランクトンはこの渦によって周囲から集められていた。

<巨大渦を作る魚の大群 世界でここだけの「ホッケ柱」>

ホッケたちが大群で立ち泳ぎをすると、下向きに強い流れができる。すると周囲の水がホッケの柱に引き寄せられ、海面には次第に巨大な渦が生まれる。この渦巻きが海面のプランクトンを集め、海の底まで引き込んでいたのだ。ホッケは柱の中にいさえすれば、食事にありつくことができる。

世界でも北海道でしか確認されていない、巨大な渦を作る魚の大群「ホッケ柱」。それは魚が力を合わせて、春の恵みを得るという前代未聞の巧みな技だった。

<巨大ホッケ柱 復活を支えた科学の目線>

ホッケ柱が見られた背景には、危機的な日本の水産資源を復活させようとする先駆的な取り組みがありました。今やピーク時の半分以下まで漁獲量が減少した日本の漁業。

ホッケもまた、ニシンの穴を埋めるように取り尽くされた魚のひとつです。現在、数を回復させるさまざまな取り組みが打ち出されています。特に力をいれているのが「科学の目線」。北海道の水産試験場が毎年行うホッケの生態調査です。

資源回復の要は、繁殖する時期と場所を特定し保護すること。まずは最新の行動記録計を使って産卵期間を推定。さらに、無人潜水艇を使って繁殖地の場所を確認。科学的な手法を駆使し、漁師の経験だけでは知りえない繁殖行動の詳細を、はじめて突き止めたのです。

日本海北部の礼文島周辺が、ホッケの最大級の繁殖地だと分かってきました。ここを守れば、ホッケは増えていくはず。ところが、簡単に対策をとれない難しい事情を抱えていました。ナマコ漁とのあつれきです。

下の画像はナマコ漁の道具です。これを岩場で引きずりナマコを集めます。

ところがナマコ漁の海域は、ホッケの産卵場所と同じ。漁をすれば、卵も壊れてしまうのです。ホッケの産卵期の2か月間、ナマコ漁を禁止にすれば卵を守れます。しかし、ナマコを収入の柱にしている漁師も多くいました。

ナマコ漁師 三上知宏さん「はじめは嫌だなと思いました。生活の部分もあるので、抵抗はありました」

島の漁業を支えてきたホッケのためとはいえ、ナマコの禁漁に対する補償もなく、話し合いはまとまりません。漁師同士で利害がぶつかる中、ホッケの生態を理解することで、考えが変わっていったといいます。

三上さん「島民の漁師さん、皆集まってそこで話をした。あの(繁殖行動の)映像を見て、それが決め手で、これはまずいということになって。挽回するのには、うちら(ナマコ漁師)が禁漁するのが一番良いのかなと思いました」

礼文島をはじめとして、この10年で、ホッケの主な生息地のすべての漁業組合が科学的な手法を元に資源管理を進めました。それが功を奏して、ホッケは危機的な状況を脱し、資源量は5倍以上増加。明るい兆しが見えてきました。

礼文島 香深漁協 高橋宏明 組合長「やっぱり一番生活に大事な魚だから。ずっと将来も同じように取れるように自主的な管理をしながらやっていきましょうという考えがひとつになった」

<巨大ホッケ柱を生む小さな命>

ナマコ漁が行われていない海の底では、ホッケのオスが岩の隙間にある卵の世話をしています。口で新鮮な水を送ったり、掃除をしたり。2か月もの間、卵を守り続けます。

春、親に見守られた小さな命は旅立ちの時を迎えます。大きさはわずか3mmほど。大海原を旅して成長した1年後の春には、ホッケ柱を作る群れに仲間入りします。数万匹のホッケが巻き起こすまか不思議なスペクタクル。その復活は、人が海の生き物と共に生きる道を探り始めた証なのです。

<なるか日本の漁業復活 カギは持続可能な資源管理>

海の資源を取り尽くしたことが一因となり、漁獲量が激減した日本。一方で、世界の漁獲量は高い水準を維持し続けている。世界をリードするのが、漁業の近代化で水産王国に上り詰めたノルウェーだ。

日本ではまだ実践されていない特別な資源管理の仕組みがある。それは個々の漁業者に、魚種ごとの漁獲量を制限して、乱獲を防ぐというもの。取れる量が決まっているため、利益をあげるには効率化が求められる。

その結果、漁業者がまとまり、役割分担して漁を行う動きが活発化した。いわば漁業の「組織化」だ。今、日本でもこうした仕組みが注目されている。

水産庁 資源管理部 藤田仁司 部長「これまでの漁業の競争というのは、先に取る、たくさん取ることが主眼に置かれてきた。(組織化などで)いかに上手に取るか、コストを下げて取るか、さらには取ったものを高く売るか、そっちの競争に向かうことが重要だと思う」

実は組織的な資源管理で成功した海の幸が、北海道にも存在している。水産物の輸出額で、8年連続日本一を誇るホタテだ。

<輸出額日本一のホタテ 徹底した資源管理が育むスペクタクル>

主な生産地であるオホーツク海沿岸では、幅30kmを超えるような大規模な区画でホタテを育てている。まだ小さな貝を放流し、3年間、海の中で成長させるというものだ。

ホタテの密度は、1m四方につき7枚。よく育つ最適な密度を科学的に割り出し、それを数十kmに及ぶ広大な区画すべてで、徹底的に管理している。

数百人の漁師たちが漁協を中心にまとまることで、目先の利益にとらわれない持続可能な漁業集団へと変貌した。

常呂漁協 山崎知春 参事「ルールは本当にうるさいというか、しっかりやっています。みんなひとつになって進んでいる結果として、今のホタテの水揚げがあると思います」

北の海で次々と起こる生き物たちのスペクタクル。最後は、先進的な資源管理の成功がもたらした奇跡のような絶景だ。

<知床ホタテ30万匹大行進 謎の集結場所に初密着>

初夏を迎えた世界自然遺産・知床半島。

5月、特に何もいない様子の海。

ところが、6月になるとこの通り。

海底が、貝で埋め尽くされてしまった。おびただしい数のホタテガイだ。推定30万匹に上るという。ホタテが自然にこれほど集まる場所は、世界でも知床だけしか知られていない。不思議なことに、ホタテの大群は、数日のうちに突如現れるという。貝がどうやって大集結をするのか、漁師ですら見た者はいない。謎を解き明かすため、長時間撮影できる定点カメラを設置した。すると思いもよらないことが起きていた。映像を見ると、なんとホタテが自ら移動している。しかも、皆一斉に同じ方向に向かって跳びはねている。世界で初めてとらえたホタテの大行進だ。ホタテたちは、まるで集結を祝うかのように跳ねまわっている。中には魚のように泳ぎだすものまでいる。

この独特の動きには、ユニークな仕組みがある。貝の両脇に注目。体内に吸い込んだ水を、勢いよく押し出して進んでいる。

力強い噴射の秘密は、内側の膜に作った小さい隙間。殻を閉じるとき、この小さな隙間から水を押し出すことで、推進力を得ているのだ。

では、途方もない数のホタテたちが一斉に集まる理由は何か。研究者の協力の下、その訳を探った。

周辺の潮の流れを調べると、いくつかの条件が浮かび上がった。ホタテが大集結していた場所は、岸に程近い限られた範囲。この岸辺はM字型の地形になっている。分析の結果、沖からの流れが集中する地点と、大集結の位置がぴたりと一致した。この流れが、ホタテの食料であるプランクトンを集め、大集結を引き起こしているようだ。

さらに集結場所で跳ね回る行動にも意味があるという。ホタテたちによって巻き上げられる泥や砂。海底にたまった栄養も一緒に巻き上げられ、海を漂うプランクトンが一層増える効果がある。研究者によると、ホタテは集結して跳ね回ることで、自ら食料豊富な環境を作り上げているという。それにしても、ホタテがどうやってこの場所を知り一斉に集まれるのか。いまだ明らかにはされていない。

観察を続けていると、突然、ホタテから白いものが噴き出した。これはホタテの精子と卵。ここは大産卵の場でもあるのだ。

海藻に身を隠しているのはホタテガイの子供たち。

親が作り上げた栄養豊かな海なら、子どももすくすくと成長することができる。資源管理に成功したことで守られてきたホタテのスペクタクル。人が自然とうまく関わっていけば、生きものたちは自らの力で活路を見いだしていく。

2020年、日本は漁業について定めた法律を70年ぶりに改正した。ノルウェーなどにならい、主な水産物の漁獲量を、個別の漁業者に割り当てて資源を守る計画だ。

水産庁 資源管理部 藤田仁司 部長「資源管理を中心とした改革によって、資源を持続的に利用する漁業をやっていける環境づくりにつながる。資源を増やしていくことができれば、漁業の復活につながっていくと思う」

北の海で復活を始めた生き物たちのスペクタクル。それは、豊かな自然の恵みを頂いてきた私たちにも、大きな希望を与えてくれる光景だ。底知れぬ可能性を秘めた圧倒的な群れの力は、一方で、もろくはかないものでもある。人がそこに気づき、共に歩む未来を見据えれば、スペクタクルは異彩なエネルギーを放ちながら、これからも続いていく。