#みんなの更年期

NHK
2022年4月16日 午後10:50 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2022年4月16日の放送内容を基にしています)

<「孤独な更年期」から「みんなの更年期」へ>

NHKのアナウンサーとして働き始めて30年。いつも明るく元気でいることを心がけてきた私、武内陶子ですが・・・。実は、「これ以上、仕事を続けられない」と思い詰めた時期があります。

武内陶子アナウンサー「わたしもう、かなり長い間、更年期の症状に悩まされていたんですよね。5年くらい前、いきなり首から上だけカーッと暑くなって、かいたことのない変な汗がダーッと出てきて、言葉が出なくなる。仕事中、放送中もアタマが真っ白になって。なんでこんなに毎日・・・どうして私がこんなことになるんだろうと」

仕事や家事のさなかにも突然襲ってくる、「めまい」や「頭痛」。更年期はおおむね45歳から55歳、閉経前後の10年間を指します。

この時期にあらわれる、さまざまな症状。日常生活に支障がある場合、「更年期障害」と診断され、治療の対象になります。

取材をはじめたきっかけは、いまからちょうど1年前。私たちは生理の問題など、女性であるがゆえに直面する社会の壁について取材していました。そのなかで寄せられた1人の女性の声。更年期障害がきっかけで、雇い止めにあったというものでした。

日本の働く女性を年代別に見ると、最も多いのが「更年期世代」。社会を支える、まさに「核」となる存在です。

この世代に何が起きているのか。

私たちは40代50代の女性を対象に、大規模なアンケート調査を実施しました。症状を経験している人はおよそ4割。調査をもとにした専門家の推計では、更年期障害で離職した人は46万人、経済損失は年間4200億円にのぼっていました。

1人の声から始まった私たちの取材。この1年で当事者から寄せられた声は、3700を超えました。そこからは、この社会のさまざまな課題が見えてきました。

職場の無理解。医療現場で直面する壁。そして、身近な人こそが、カギを握っているということも。

“孤独な更年期”から、“みんなの更年期”へ。きょうは一緒に考えてみませんか?

<更年期症状とは? 多岐にわたる症状とそのメカニズム>

取材班に寄せられた3700の声。多くの当事者がつづっていたのは、次から次へとあらわれる症状に対処することの難しさでした。

大阪府・50代「47歳ごろから生理が不規則となり、肩こり、不眠、頭痛が出てきました。病院探しに疲れ果て諦めました」

この声を寄せてくれた平山久美さん、50歳。ダンスを通じた心理療法を行うセラピストです。更年期障害と診断されたのは、3年前。仕事中はつらさを見せないようにしていますが、昼夜を問わず、激しい頭痛が襲います。1人暮らしの久美さん、食事中にも、食べ物を飲み込みづらくなる嚥下(えんげ)障害が現れるようになりました。

平山さん「とにかく息ができないから、あと何秒もつだろうと思ったりとかして。症状が多岐に渡りすぎて。そりゃ症状のデパートって言われますよね」

病院に行っても、なかなか症状の改善につながらないという声も少なくありません。

48歳のこの女性は、去年からさまざまな体調不良に襲われ、そのたびに、医療機関にかかってきました。

48歳女性「動悸(どうき)と寝汗がして循環器(内科)に行って、耳の閉塞感と耳鳴りがして耳鼻科に行って、首の痛み・肩の痛みで整形外科に行って、めまいで脳神経内科と脳神経外科」

それぞれの医療機関で、処方された薬を飲み、対症療法を続けましたが、症状はよくなりませんでした。去年12月、6つ目のクリニックで、ようやく更年期による症状だと診断されました。今は、漢方薬で、症状を和らげています。

48歳女性「早く『更年期の可能性もあるよ』って聞きたかった。悩む時間とか、ふさぎ込む時間とか、悶々(もんもん)とする時間は、もっと少なくて済んだかなと思いますね」

寄せられた声には、けん怠感やめまい、急に汗が噴き出すホットフラッシュなど、70種類近くの症状が挙げられていました。

更年期にこれだけの多様な症状があらわれるのには、女性に特有の理由があります。思春期になると卵巣から分泌されるようになる、女性ホルモン「エストロゲン」。20代から30代にはピークを迎えます。ところが閉経が近い更年期にさしかかると、この分泌量が乱高下しながら急激に減少。これがさまざまな症状の原因になるのです。

そもそもエストロゲンには、骨を丈夫に保つ、血管をしなやかに保つ、気持ちを明るく保つなど、女性の身体や心にとって重要な役割があります。

エストロゲンの減少によって、健康を維持する基本的な機能が損なわれ、さまざまな不調に見舞われます。さらに、脳がつかさどる自律神経も変調をきたします。

通常、脳は暑いと判断すると、皮膚の血管の血流量を増やすようにうながします。これによって、皮膚から熱が発散されます。しかし、エストロゲンが減少すると、自律神経が変調をきたし、暑くないのに血流を増やし、ホットフラッシュを引き起こします。自律神経の不調は、動悸(どうき)・めまい・頭痛などの原因にもなっているのです。

こうした更年期の症状は、当事者やその家族の人生にまで大きな影響を与えています。

福岡県・40代「常にイライラして、夫にも子どもにもあたっていました。子どもはまだ小学校低学年で、かわいそうなことをしました」

夫との関係が悪くなり、離婚にまで至ったという女性もいます。

エッセイストの葉石かおりさん、55歳です。仕事で知り合った年下の夫。いつもかおりさんを気遣ってくれるやさしい人でした。ところが、あるとき突然、蛇口をきちんと閉めないなど、夫のささいな行動にも、怒りがこみ上げるようになりました。

葉石さん「怒りとしてぶつけてしまう。注意じゃなくて、自分の感情のはけ口みたいな形。イライラが抑えられないのを、彼にぶつけていたような気がします。『この人一体どうしちゃったんだろう』と思っていたと思うんですね」

自分でも原因が分からないまま、5年が経ったころ、離婚のきっかけとなる出来事が起きました。

葉石さん「飼っていた猫に向かって、『何やってんの!』ってどなってしまったんですよ。それを見ていた夫が、『猫にどなったってわからない、かわいそうだよ』って。非常に穏やかで、怒りを口にするような人ではなかったので、彼にとっては精いっぱいの発言だったと思うんですけど」

離婚したあと、更年期障害と診断されたかおりさん。怒りを抑えられない原因は、女性ホルモン・エストロゲンの減少だと医師から告げられました。

葉石さん「え?って。ホルモンなんて考えたことなかったし、そんな知識もなかったんですね。症状が出なかったときは、本当に穏やかな生活でしたので。私はいちばん大事な家族を言葉で傷つけて、それはもう辛かったですね」

武内アナウンサー「わたしも家族との関係、特に子どもたちとの関係がいちばんの悩みでした。ある時期から子どもたちが『ママ怒ってるよね』って、必ず聞いてくるようになって、初めて私はいつも怒っていたんだ、ということに気がつくんですね。更年期は、すべての女性が通る道、閉経前後のある時期のことを言いますが、症状の有無、そして程度は人によって差があって、そのことが同じ女性どうしでも、なかなか理解しあえない、その原因になっているんですよね。一方、取材班には、男性からもこんな声が寄せられています」

40代男性「よく耳にする女性の更年期症状に近いことが、2年前ほどから出てきています。イライラ、ほてり、やる気がない・・・男性にも更年期症状があることを知りましたが、どこに相談していいのか分からず困っています」

更年期は閉経前後の時期を指すので、男性にはありませんが、ストレスなどが原因で男性ホルモンが低下し、女性の更年期障害と同じような症状が出る「LOH(ロー)症候群」などが、いわゆる「男性更年期障害」と呼ばれています。

ここまでは更年期の症状や、それが原因で、それぞれのみなさんに起こった問題などを見てきましたが、実は社会にも大きな影響が出ているんです。

私たちは専門機関と共同で、更年期と仕事に関するインターネット調査を実施しました。対象は、40代から50代の女性、2万6000人あまり。このうち、およそ4割の人が「更年期の症状を経験している」と回答しました。

治療が必要な不調があるとみられる人のうち、「仕事を辞めた」「降格した」「正社員から非正社員になった」など、マイナスの影響があった人は、15.3%。日本全体では、75万人にのぼると専門家は推計しています。

いったい何が起きているんでしょう。

<更年期ロス 仕事も誇りも奪われて・・・>

更年期障害によって、この春、仕事を辞めることになった女性がいます。電子部品を作る工場で働いていたユウコさん、52歳です。ほぼ毎日激しい「めまい」に襲われています。

3人の子どもを育て上げたユウコさん。子どもたちが自立し、これからは自分のために、手に職をつけたいと、機械加工の仕事に就きました。しかし去年12月、更年期障害と診断されたころから、仕事中にも症状に見舞われるようになり、フルタイムで働けなくなりました。

以前の給料は月18万円ほどでしたが、パートタイムでは時給も下がり6万8000円に。先月末、退職したユウコさん。第二の人生は、思わぬ壁に阻まれることになりました。

ユウコさん「動けるうちは頑張ろう、なんて思っていたんですけど、急に動けなくなっちゃったので。本当、人生の曲がり角にきたかなって感じです」

長年、正社員として築いたキャリアを失ったという女性も少なくありません。

東京都・40代「キャリアアップを目指して仕事に打ち込んできましたが、更年期の症状で降格。部長以上は男性のため、まだまだ男性社会だと感じます。自分の身を守るため退職という道を選びました」

この声を寄せてくれたアキコさん、49歳です。サービス業界で働いてきました。キャリアを積み重ねて、管理職になることをひとつの目標にしていました。

アキコさん「私は子どもがいないので、その分キャリアアップというのは、自分の中で大きなウェイトを占めている。不妊治療をあきらめたのが42歳か43歳のときで。じゃあ人生の中で何があるかといったら、やっぱり仕事だった」

更年期障害と診断されたのは3年前。管理職になってからは、けん怠感やめまいが悪化しましたが、周囲に話すことはできませんでした。

アキコさん「管理職で『更年期です』『調子が悪いです』『スローペースで働きたい』とは言えないですよね。更年期のワードは女性特有で、そのカードを出してしまうと、負けではないけど、男の人たちと同等でいたい」

その後、症状に耐えられなくなり休職。復職すると管理職の肩書きは外され、給与は新卒と同じ程度にまで引き下げられたといいます。

アキコさん「人事部長は『しょうがないね』『嫌なら居場所がないよ』、みたいな感じで言われてしまったので。今まで積み上げてきたキャリアが崩れたというか、私は今まで何をやってきたんだろうと。頑張ってきた自分が、全部否定されたような感じがして、今まで頑張ってきた意味が全くなかったという気持ちになったかな」

働く女性の権利として、「生理休暇」や「産前産後休暇」の取得が労働基準法で定められています。しかし、生理が終わる時期に、すべての女性が経験する更年期を明記した法律はありません。

アキコさんは、20年かけて積み上げてきたキャリアを断たれることになりました。

女性の一生のなかで、更年期はいまや特別な意味をもつようになっています。

戦後まもないころの女性の平均寿命は54歳。ちょうど更年期に重なっていました。しかしその後、平均寿命は伸び続け、今では閉経後の人生が30年をゆうに越えています。

だからこそ、更年期に、仕事や家族との折り合いをつけながら、どううまく乗り越えていくかが、大きな意味をもつようになっているんです。

そのために頼りにしたいのが医療です。更年期をめぐる医療は今、どんな状況にあるのでしょうか。

<医療で対処できないのか> 

更年期の患者が多く訪れる都内のクリニック。更年期の専門医などが所属する、日本女性医学学会の理事を務める岡野浩哉医師です。

岡野さんは、「ホルモン補充療法」と呼ばれる、国際的に標準治療として推奨されている治療法を取り入れています。少量のホルモンを補うことで、エストロゲンの減少をゆるやかにし、徐々に身体を慣らすことで、症状を緩和するというものです。

医師の適切な管理のもとでの治療と、生活習慣の改善などで、多くの患者が日常生活に支障がない程度にまで回復するといいます。

岡野医師「治療があるので、改善もできると。何かを諦める、何かを捨てることを選択する必要性はないですね」

しかし、私たちの調査では、更年期症状を経験している8000人あまりのうち、ホルモン補充療法を受けていると答えたのは、わずか5%でした。

なぜ、日本では、国際的な標準治療が浸透していないのか。

ホルモン補充療法を行っていない医師にその理由を聞くと、知識や経験の不足をあげる声が ほとんどでした。さらに、更年期症状の診療について課題を問うと、目立ったのは「問診に時間がかかり診療報酬が見合わない」「経営的に採算が合わない」という声です。

例えば、同じようにホルモン剤を使った治療を行う月経困難症の場合、初診料と再診料は同じですが、2500円が上乗せされます。一方、更年期障害の場合は、上乗せはありません。

いま国は、出産を支える医療の充実を図っています。不妊の原因にもなる、月経困難症の診療報酬が上乗せされたのは、2020年度。今月からは不妊治療への保険が、幅広く適用されることになりました。日本女性医学学会では、更年期医療についても、手だてを講じる必要があるとしています。

岡野さんらは、長年国に診療報酬の見直しを求めてきましたが、実現のめどはたっていません。

岡野医師「この医療の国民にとっての重要性に関しては、大きなものとして受け取ってもらえなかったというのが現実。形式だけの女性活躍ではなく、女性自らが主役になる社会になれば、それがかなえば社会全体がよく変わる、いい国になると思います」

更年期の医療にきちんと向き合わないことは、別の大きなリスクにつながると、警鐘を鳴らす専門家もいます。日本性差医学・医療学会 副理事長の片井みゆき医師。「女性専門外来」を開いています。

更年期症状などを訴えて、片井さんの外来を受診した人のうち、27%に別の疾患が見つかりました。なかには、脳腫瘍や白血病など、命に関わる病気も隠れていたのです。

片井医師「更年期にはいろいろな症状が出るので、更年期障害のせいにされがちなんですね。本人もそのせいだと思いがちで、医療者もそのような診断につながることが多いです。非常に見分けにくく、より難しい面があると痛感しています」

<「更年期を語れる社会」めざして>

武内アナウンサー「課題はたくさん残されていますが、当事者の皆さんからは、『まずは社会の空気を変えてほしい』という声が多く届いています」

山口県・50代「まだまだ日本は、話せない、語れないことが多いですね。メディアも、『これが常識』という感じで、正しい情報を提供してほしいと思います」

この空気、なんとか変えていきたい。

私たちはさまざまなかたちで、更年期についての発信をはじめました。

著名人に協力してもらうなど、更年期について率直に語り合うきっかけをつくろうとしてきました。

エッセイスト・小島慶子さん「『やーい、更年期』っていうふうに、更年期が悪口とか、ばかにする言葉として使われていたり、なんか更年期の女の人が滑稽でまぬけな存在みたいに扱われていたら、とても傷つくと思うんですよね」

女優・有森也実さん「『ダメな人間になっちゃった』って思ったりするんですよね。いやダメじゃないから。『ああ頑張ってきたよ私は』って、自分で言ってあげて」

五輪メダリスト・有森裕子さん「これが『おかしいことじゃない』と言いたかった。みんな多かれ少なかれ、人間に起こることなんだ、そしてそれは本人が悪いことではない」

これまで更年期を語ることは、タブー視されがちでした。症状のこと、仕事のこと、女性たちは一人で抱え込んできました。

オンライン座談会に参加した当事者はのべ25人。語り合うことで、前向きな気持ちを取り戻していました。

参加者「私だけじゃないんだっていうのがわかったので、また明日から頑張れそうです。自分だけじゃない、戦ってるのは」

<周囲の役割>

周囲の理解とオープンに話せる環境によって、症状が改善したという女性がいます。金井美穂さんと息子の泰亮さんです。

3年前、泰亮さんは母親が突然怒りっぽくなったことに戸惑いました。

泰亮さん「怒るっていうか、ブチギレるだよ」

美穂さん「なんか投げてたよね」

泰亮さん「『私死んじゃう』みたいなこと、よく言ってたよね」

美穂さん「私、『ママなんて早く死んだほうがいいよ』って」

そんなとき、泰亮さんは、偶然テレビで「更年期」のことを知りました。

泰亮さん「更年期ってあるんだと知って、ちょうど40代後半で、当てはまっていたから、ネットとか見たら、『母が毎日キレて嫌です』って書いてあって、『これうちだ』って思って、もしかしてそうなのかなって」

更年期のつらさを、自分なりに理解しようとした泰亮さん。母親の体調を以前より気遣うようになりました。

泰亮さん「更年期でうまくいかなくなってきてから、お母さんも一個人なんだなって理解できたというか」

泰亮さんの支えを得た美穂さん。介護施設の職場の仲間にも、打ち明けることができるようになりました。吐き気などの症状に襲われたときには、担当を交代してもらうなど、柔軟に対応してもらえるようになりました。

更年期障害と診断されてから、まもなく2年。夫の単身赴任が続く中、泰亮さんが職場の送り迎えをしてくれるようになりました。家族や仲間に支えられているうちに、症状が和らいできたという美穂さん。「更年期が怖くない」と思えるようになりました。

美穂さん「暖かく見守ってくれてたんだなっていうのがわかって、感謝してます。おっかなびっくりじゃなくって、受け止めながら、みんなで乗り越えていけるかもしれないと思いました」

周囲の理解によって、症状そのものがよくなるケースはめずらしくない、という医師がいます。更年期医療の第一人者、小山嵩夫医師です。およそ50年にわたって、更年期の患者を1万人以上診てきました。

小山医師「高校生の男の子でも、毎日10分、お母さんの話を聞いたら、すごく違いますよ。夫も、自分も疲れて帰ってきたのに、何言ってんだって言うんじゃなくて、10分か15分、話を聞くというのは重要です」

更年期の症状があらわれる直接の原因は、エストロゲンの減少ですが、それを悪化させる要因のひとつがストレスです。

当事者が更年期について安心して語れる環境を周囲がつくることで、ストレス要因が軽減し、症状も和らぐと小山さんは考えています。

小山医師「じっくり話を聞いて、一緒に考えて。その繰り返しで、だんだん症状は良くなってきますね。理解を示すということです。患者さんの周囲だけでなくて社会全体、国全体で理解者を増やす」

<国をあげて取り組むイギリス>

どうすれば社会全体で、理解者を増やしていけるのか。

これまで見過ごされてきた更年期の問題に、国をあげて向き合い始めたのがイギリスです。去年、国の重要課題として取り組むことが決まり、ホルモン補充療法への補助や、企業や教育現場の対策が打ち出されています。

国を動かしたのは、長年、更年期症状に苦しんでいた当事者たちの声でした。

声をあげた当事者 ダイアン・ダンゼブリンクさん「声を上げ始めたとき、周囲の人には『10年かけないと変わらないだろう』と言われましたが、5年で今日という日を迎えました。信じられないことです」

イギリスの企業では今、更年期についてオープンに語れる環境づくりが広がっています。

社員4千人のこの保険会社では、更年期症状のある社員をサポートするための聞き取りを始めました。

更年期症状のある社員「数か月前から続く不眠に、今も悩まされていて、日中の疲れに影響しています」

上司「共有してくれてありがとう。勤務時間を調整して、1日の中でゆっくりできる時間を取れるようにしましょう」

更年期症状のある社員「集中力の低下によって、自信を失い、昇進はできないだろうと思うことがありました。今では職場の支えを感じられるようになりました」

学校現場では、更年期について教えることが、義務化されました。周囲にいる当事者のために何ができるのか、授業では子どもたちに問いかけます。

生徒「家事を手伝って、ストレスを減らしてあげます」

更年期経験者「みんなが言ったように、ときにはハグをしたり、お茶を入れてあげたり、ちょっとした行動が大切です」

議会は今、更年期を理由にした、職場での差別的な待遇を防ぐための法整備について、議論を始めています。

国の更年期対策本部 キャロリン・ハリス共同議長「人口の半分は女性です。これだけ多くの女性に影響する更年期の問題を無視したり、語れなかったり、支援しないのはおかしいことです。私たち社会は、女性が自尊心や尊厳を回復できるよう、支援する義務があります」

<日本社会でも始まった動き>

女性たちの尊厳を取り戻そうという海外の動き。

日本でもようやく、当事者の存在に目を向けようという変化が生まれています。

流通大手の労働組合では、ことし2月、実態把握の第一歩としてアンケート調査を実施。回答した228人の半数以上が、更年期の症状を抱えながら働いていたことが分かりました。

女性組合員「仕事中に倒れそうになった人もいたりとか、休職したとか、降格等の役職変更まで考えたという人もいると」

どのような制度や環境が必要なのか、具体的な議論を始めています。

女性組合員「『相談したことがない』という人が、ほとんどなんですね。ここがまずちょっと問題だなって思って」

男性組合員「女性の方が言いにくいこともあるし、男性も分からないから。男性の上司だったら、どんな理解をしてもらったらうれしいのかなって」

女性組合員「お店の人たちには相談しにくいから、店内でね。たとえば組合の中で別に相談窓口を設けるみたいなことがあると、話ができるかもしれない。環境づくりをしてあげるというのは大事だね」

更年期医療の充実を訴える日本女性医学学会は、診療報酬の見直しを国に求め続ける一方で、専門知識を持つ医師の育成が急務だとしています。

日本女性医学学会 幹事 小川真里子医師「更年期について、ちゃんと勉強して、ちゃんと治療ができる専門家を増やすという。日本全国どこにいても、ちゃんと標準的な治療が受けられるように、そういうふうになっていったらいいなと思います」

<孤独な更年期から「みんなの更年期」へ>

3700もの声から少しずつ見えてきた課題。

これから先、どんな社会を目指すのか、取材の最後に、皆さんに書いてもらいました。

葉石かおりさん「社会全体が“正しい知識”を得て、更年期を“幸年期”に」

平山久美さん「閉経おめでとう、赤飯を炊こう、ぐらいの気持ちでいいと思います」

更年期をめぐる認識を、ここから変えていく。

私は一人じゃない。そう信じられる社会へ。一緒に始めてみませんか。

女性も男性も、そしてこれからの人も。みんなの更年期、今こそ話したい!