命をつなぐ生きものたち 第1集 大地の恋

NHK
2022年8月26日 午後3:29 公開

(2022年8月21日の放送内容を基にしています)

多くの命があふれる地球。生きものたちは、ありとあらゆる場所で、その命をつなぎ続けてきました。

子孫を残す相手と、うまく出会って結ばれたい!

そのための恋の駆け引きが、生きものたちに多様な進化をもたらしました。激闘を繰り返して、ライバルを蹴散らす強じんな肉体。目をくぎづけにする奇妙な歌や踊り。恋を実らせることは、時には自分の命よりも大事なのです。

3回シリーズでお届けする「命をつなぐ生きものたち」。NHKとイギリスBBCが3年の歳月をかけ、最新鋭の8Kカメラで、世界各地の生きものたちの驚きの求愛戦略に迫りました。

1回目の舞台は、陸の世界。相手のハートを射止めるために、なぜここまで苦労するのか。進化の秘密を探ります。さらに世界で初めて、驚きのプロポーズ作戦の撮影にも成功しました。生きものたちの恋。その不思議な物語を見にいきましょう。

小池 栄子さん「私たちがいるのは、上野にあります国立科学博物館でございます。今日は、生きものの出会い、愛の営み、どうやって子孫を残すかというお話をお送りします」

大泉 洋さん「さまざまな生きものたちの恋の駆け引きを見させていただけるということで、楽しみにしております」

小池さん「今回は生きものたちのオスとメスの出会いを、専門家の方と一緒に見ていきたいと思います。オスとメスの進化がご専門、総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さんです」

小池さん「私たち人間同様、恋の駆け引きみたいなことも、生きものたちはするんですか?」

総合研究大学院大学 学長 長谷川眞理子さん「『恋』っていうのは人間の行動に対する名前だから、動物が同じに思っているかどうかは分かりません。だけど、子孫を残すことにつながる方法は、千差万別。オス1匹メス1匹が出会って一緒にならないと、子孫が残らないでしょ。そのための競争というのは、それぞれすごく重要なんですよ。本当にいろいろあって、そこがだいご味というか、生きものの面白さですね」

<ライバルと激闘! オスの宿命>

さっそく驚きの恋の舞台を見にいきましょう。ここはアフリカ、タンザニアの草原です。ここに、メスを巡って激闘に明け暮れる生きものがいます。

シマウマです。強いオスがリーダーとなって、数頭のメスと群れをつくっています。

毎年3月。雨が降って新鮮な草が育ったところに、大挙してシマウマたちが集結します。群れで暮らすものや、単独で暮らすもの、総勢3万頭の大集団に膨れ上がります。食べ物が豊富なこの時期に、シマウマは恋の季節を迎えます。群れのリーダーのオスにとっては、最も気の抜けない時期です。

その理由がこちら、歯をむき出している単独のオスです。群れのメスに興味を示しています。メスを連れ出そうとちょっかいを出してきました。

群れのリーダーのオスは、すかさず反応してメスたちをガードします。声を張り上げ、ライバルを威嚇します。それでも相手が引かないと、戦うしかありません。相手の弱点であるお尻を狙いますが、リーダーはライバルに押されています(下写真・左)。

今度は足元を狙われます。

そのときです。

リーダーが、こん身の蹴り!そして、ダメ押しの一撃を加えました。

リーダーのオスは、メスたちを守りきりました。

シマウマがこんなにも激しい戦いをしているとは…。強くなければ、命をつなぐことができないのです。

「メスを巡るライバルとの戦い」。

それは多くのオスたちが背負う宿命です。ライバルに打ち勝つため、角や牙といった武器を、研ぎ澄ませてきました。

こちらは動物園でもおなじみのキリンです。

オスたちは何を武器にして戦うと思いますか?

答えはなんと、首!長さ2mに達する首を、振り子のようにしならせ、頭突きを食らわせます。あまりの激しさに、命を落とすこともあります。メスと結ばれるために、オスたちは命がけで戦わなくてはならないのです。

<恋のために なぜオスは戦うのか?>

小池さん「オスは、こんなふうに戦って、強いものが繁殖にこぎつけるということ?」

長谷川さん「オス50匹、メス50匹、だいたい同じ数いるとして、オスは次から次へと交尾ができる。でもメスは哺乳類だと、妊娠して出産して授乳するでしょ。その間は、その子を育てなくてはならないから、次の交尾ができなくなって、オスが余る状態になるでしょ。そうするとオス同士の競争がすごく激しくなりますよね。ちょっと見て欲しいものがございます」

大泉さん「角ですよね?」

小池さん「立派な角!重いですか?」

大泉さん「重いです、重いです。こんなのをつけたら、首がこりますよ」

長谷川さん「これは、アイベックスというヤギの仲間。オスの角の片方です」

大泉さん「これはやっぱり、基本、戦うためのものなんですか?」

長谷川さん「オス同士の競争のための武器です」

大泉さん「違う敵を倒すためのものではない?」

長谷川さん「同じ種類のオス同士が、メスを獲得するための競争に使うんです。多くの生きものはオスの方が、体が大きいとか、こういう大きな角はオスだけが持っているとか、武器のようなもの、牙とか、オスだけというのが多いですよね」

大泉さん「オスが強いのは、メスを守るためだったり、違う種族と戦うためだったりというような気がしていたけれども、同じ種族のオスと戦うために体が強くなっているわけですね」

長谷川さん「そうですね。(オス同士)その間の競争が、いちばん激しい」

小池さん「メスはいつも一方的に、強いオスに選ばれるという受け身の状態なんですか?」

長谷川さん「そういう場合も多いですけれど、派手だったりアピールをしたりしているのはオスで、それをいろいろ見ながらメスが選ぶという種類はたくさんあります」

小池さん「かわいいな、それ」

大泉さん「平和ですよね」

長谷川さん「でもずっとアピールしてアピールして、全然モテないというオスもいっぱいいるのよ」

小池さん「それ、人間に近いですね」

大泉さん「本当に我がことのように、今、寂しかったね。さんざんアピールするけれど、全く見向きもされないというのは、なんか経験あるわ。(キリンたちみたいに体を張って)ケンカしたことはないけれど、さんざんふざけて全く相手にされないっていうのは、よくあった気がする」

<メスの好みに左右されるオス>

強いものが、必ずしもメスに好かれるとは限りません。ここはオーストラリア南部の草原(ナマジ国立公園)。オオカンガルーのオスたちは、力比べに余念がありません。

こちらは、オオカンガルーのメス(下写真)。オスの半分ほどの大きさです。このメスは一体どんなオスを選ぶのでしょうか。メスは数か月にわたって、妊娠が可能です。そのため、じっくりオスを見定めます。

こちらのオス(下写真・左)は、目の前にいるメスと結ばれたい様子です。

メスの視線の先では、ライバルのオスたちがアピール合戦をしています。メスはまだ迷っているようです。

メスが向かった先には…。

別のオスが、堂々とした立ち姿。

すぐさま、最初にアプローチしたオスが割って入ります。メスは、争うオスたちを無視するように、その場を離れました。

そこへやってきたのが、小柄なオス(下写真)。チャンスには程遠そうですが…メスのもとへ近づきます。

どうやらメスは、この小柄なオスを気に入ったようです。そうとは知らず、戦いに夢中になっている大きなオスたち。その目を盗んで、結ばれました。野生動物の世界では、常に強いものが勝つのかと思いきや、メスの好みが決め手になることもあるんですね。

「いかにメスに気に入られるか」。これもオスにとって、重要な恋の駆け引きです。

多くのメスは、まずは見た目で、ふさわしい相手かどうかを判断します。そのため、オスだけが派手な姿になったり、目立つ歌や踊りを研ぎ澄ませたり…メスの気を引く、あの手この手のアピール術が進化したのです。

<メスに気に入られたい! 涙ぐましいオスの努力>

ここはアフリカ南部、ナミビアの砂漠です。日中の気温は40度以上にも達する過酷な場所です。ここに、メスが主導権を握って、オスを厳しく吟味する生きものがいます。

世界最大の鳥、ダチョウです。

こちらはオス(下写真)。オスは、ふだんは単独で旅をしながら暮らしています。旅の目的は、何をおいてもメスを探すこと。数百kmに及ぶ範囲を歩き続け、相手に会う前に相当な体力を奪われてしまいます。

オスの視線の先には、ついに遭遇したメスの群れ。メスは、ふだんはメスだけで暮らし、繁殖期になるとオスを迎えます。メスたちも、オスに興味津々のようですが…。

ここからが、メスによる厳しい審査の始まりです。

メスのリーダーが、走り出しました(下写真・右)。オスもあとに続きます。わざとオスを走らせて、体力があるかどうか、テストしているのです。最高時速70km。長旅で疲れ果てたオスは、必死で食らいついていきます。

メスはようやくスピードを緩めましたが、テストはまだまだ続きます。

オスが、しゃがみこみました(下写真)。

ここからは踊りのテストです。オスは、姿勢を低くしたまま、羽を広げながら首を左右に振ります。審査ポイントは羽の色つやや、しなやかな動き。メスは、踊りを通して、オスが健康かどうかを見極めます。

メスが羽をひらひらさせると、そのオスに興味を持った証しです。やっと合格。オスはメスに受け入れられます。メスの厳しい審査をくぐり抜けたものだけが、命をつなぐことができるのです。

リーダーのメスに認められたオスは、このあと、群れの他のメスたちとも結ばれます。これからオスは、メスたちの卵、およそ30個を一手に引き受け、温めていきます。オスはたくさんの卵を守れるのか。メスの厳しいテストは、その力を見極めるものだったのです。

意外なものを使って、恋のアピールをするオスがいます。

パラグアイカイマンです。

ほとんど撮影されたことがない求愛の一部始終を、カメラに収めることに成功しました。集まっているのは、数千匹のワニたち。こんなにいる中で、メスはどうやって相手を選ぶのでしょうか。

ワニの求愛は、早朝に始まります。

こちらはオスです(下写真)。ちょっと変な格好をして、うなり声をあげました。

次の瞬間、水が踊ります。水中に沈めた胴体を震わせることで、噴水のようにしぶきが上がるのです。耳を澄ませると、低い音が聞こえます。震わせた体が奏でる低音です。

メスは、音がするほうへ向かいます。体が大きく健康なオスほど重低音を響かせ、メスの注目を集めます。それによって起きる派手な水しぶきは、たくましさを示すサインなのです。いかにも武闘派に見えるワニですが、こんなに繊細で、手の込んだ恋のアピールをするんですね。

大泉さん「なるほど~。オオカンガルーは、あれでいいんですか?」

長谷川さん「オスはとにかく大きくなってケンカするしかないでしょ。でもメス側から見たら、あんまり大きくて強いオスというのは、自分の子供を踏みつぶすかもしれないし、なんか嫌なところがあるんですよ。それで別のオス、もうちょっと小さくてもいいやとか…メスの好みがオスの競争状況と必ず合致しているわけではないんです」

小池さん「なんかホッとしますよね。だって小柄なカンガルーにだってチャンスはあるわけで」

大泉さん「ダチョウなんかを見ていると、まずもって出会わないということですか?」

長谷川さん「そうね。すごく密度が低いから」

大泉さん「メスだって、残さなきゃいけないんだから、子孫を。そこに何百kmも先からやってきたオスがいたら、もうそれでいいじゃないね。そこでまた審査します?これを見たら、オスってやっぱり大変だなって思いません?けなげじゃないですか」

大泉さん「オスはモテようと思って、派手になっていくわけですよね。そうすると天敵に見つかるというリスクもあるんじゃないですか?」

長谷川さん「そうですね。派手な色とか派手なディスプレイとかは天敵に見つかりやすいから、生き残るだけだったらよくないわけです。それでも生き延びているということは、そういうものにエネルギーを使えるという一つのアピールですよね」

大泉さん「生き残るということを考えると、あまり得策ではないのだけれども、メスに選ばれるためにそれを選択したということですよね」

長谷川さん「『性選択』というんです。性に関わる行動とか形質の選択。生存に悪くたって、選んでもらえないんだったらやるしかないというような、そういう進化が起こります」

大泉さん「つまり種族を残す選択が、生存するためにはよくなくても、そっちを優先して進化することがあるということですか」

長谷川さん「そうですね。そうすると、いろんな変なことが起こります」

<モテるのが最優先 不思議な進化>

相手にモテることを優先するあまり、なんとも不思議な進化が起きることがあります。今回、ある生きものの求愛の撮影に、世界で初めて成功しました。それは、恋を実らせるために、本来の生き方を犠牲にしてしまった鳥です。

正体は、セイランのオス(下写真)。

東南アジアに生息するキジの仲間です。尾羽の長さは1m以上あります。これが邪魔をして、鳥なのに飛ぶのは大の苦手。ふだんはほとんど地面を歩いて、暮らしています。

オスが鳴き声を上げると、メスがやってきました(下写真)。

羽は小さく、オスより地味です。

オスはメスに駆け寄って、アピールを始めます。警戒心の強い、野生のセイラン。求愛の様子が撮影されるのは、初めてです。

そして、ついに出ました。セイランのプロポーズ(下写真)。

羽を広げ、見事な水玉模様を見せつけます。平面の模様ですが、宝石のような丸い玉が、浮き出ているように見えます。さらに、長い羽を筒状に丸めることで、立体感と奥行きを際立たせます。まるで宝石のトンネルで、メスを惑わせているようです。メスを引きつけることに特化した、セイランの羽。飛ぶことを犠牲にして手に入れた、恋の切り札なのです。

アピールが最高潮に達しようとしたそのときです。

邪魔が入り、メスが逃げてしまいました。

圧巻のパフォーマンスも、必ずうまくいくとは限りません。

メスと結ばれるために、研究者も驚きの珍しい進化を遂げた鳥がいます。

エリマキシギです。

春、恋の季節を迎えると、アフリカなどから渡ってきます。首の周りに、エリマキのような飾り羽を蓄えているのがオスです。オスたちはまず、見通しのいい草地に集まります。いわば、婚活場所です。

集まったオスたちが、一斉に飛び上がります(下写真)。

頭上を飛ぶメスに見えるよう、アピールを始めたのです。

メスの群れがやってきました。メスたちが下りてくると、オスは身をかがめ、自慢の“エリ”を見せつけます。

そして、オス同士の激しい戦いが勃発します。見事、メスにアピールできたオスが結ばれます。

ですが、ここからが驚きの展開です。

小柄な1羽がやってきました。これこそ他に例のない、珍しい進化を遂げたものです。メスの姿に見えますが、他のメスと交尾を始めました。周りのオスたちは、気づいていません。これは、実は「フェーダー」とよばれるエリを持たないオス。20年ほど前に初めて見つかりました。オスがメスの姿へと進化した鳥の例は、極めてまれです。他のオスたちからメスだと思われているので、争いの場でも攻撃されません。それどころか、時にはオスから求愛を受けることもあります。応じたふりまでする、だましっぷりです。

詳しく遺伝子を調べると、400万年前にエリのあるオスから突然変異で現れたことが分かりました。メスと同じ姿に進化することで、戦わずして子孫を残すという驚きの戦略を獲得したのです。フェーダーは、オス全体のわずか1%。今後どんな進化を遂げるのか。メスもオスも油断させる奇想天外な手法の行く末が、注目されています。

そして、最後に登場するのは、求愛のためとはいえ、奇抜なパフォーマンスを「これでもか!」と繰り出すものです。

ここは、ニューギニアの森の奥。高さ60cmほどのタワーが、そびえたっています。初めて見た人は、現地の住人がつくったものだと思うかもしれません。地面にコケや種を敷き詰めて、枝には奇妙な飾りもほどこされています。一体、誰がつくったのでしょうか。

カンムリニワシドリのオス。こちらが建築主です。

何年もの間、同じ場所で枝を組み上げ、念入りに手入れを続けてきました。ニワシドリのメスは、タワーの高さや形を見て、オスに興味を持ちます。ふさわしい相手かどうか、この作品で判断されてしまいます。だから、手は抜けません。タワーのメンテナンスが終わったら、今度は飾りつけ。フンや木の実をつけていきます。

ニワシドリがすごいのは、建築だけではありません。メスがやってくると、オスは鳴き始めます。これも驚きのパフォーマンス。これまで覚えたさまざまな音を披露します。よく耳を澄ませると、「別の鳥の鳴き声」や「犬のような鳴き声」、「木を切るような音」、「人間の子どものような声」が聞こえてきます。鳴き声のレパートリーが多いほど、メスの興味を引き続けられます。

メスがタワーの下におりてきました(下写真・右)。すると、今度はタワーの周囲を回り始めます。オスは少しずつじらすようにして姿を見せ、メスの興味を高ぶらせます。

そして最後は、激しい踊り!オスは頭のオレンジの羽を広げ、タワーのまわりを行ったり来たり。メスにアピールを続け、見事、結ばれました。

手の込んだ驚きのパフォーマンスの数々。相手と結ばれるため、生きていく上では役に立たなそうな技を、いくつも進化させた鳥なのです。

小池さん「エリマキシギの『フェーダー』にびっくりしましたけど、進化と考えていいんですよね?姿を変えていくというのは」

長谷川さん「もともとは縄張りの中でエリを大きくして、競争するということだったんですけれど、それにはすごくエネルギーがかかるでしょう?そういうことを一切しないでこっそりというのが400万年前に出てきて、それがうまくいった。いま、そういうのが見られるわけだから、何が起こっても進化ですよ」

大泉さん「今の段階だと『フェーダー』は1%ということですよね。それがもっとうまくいくようになったら、『フェーダー』の比率は増えていく可能性もあるわけですか」

長谷川さん「基本的には何年も、(メスはオスを)エリマキの質で見てきたというのが残っていますから、メスがことさら『フェーダー』が好きなわけではない。うまくいくかどうかは、オスのやり方とメスの好みが合致しないと、広がりません」

大泉さん「セイランも切なかったね。プロポーズしている間は、自分の姿が見えないんですもんね。下を向いて羽を広げているから」

小池さん「でも見事な羽でしたね」

長谷川さん「ちょっと見てみましょうか」

大泉さん「本当に立体的に見えるようになっているんだね。面白いね。この宝石みたいなのが、ちゃんと光って見えるようになっているんだね」

小池さん「だまし絵みたい。不思議。これは飛べないよ。こんな大きな羽。あの小さな体に無数についているんだもん」

長谷川さん「飛べないということがあっても、メスが何を選ぶか、オスが何をするかで、ずっと進化が追いかけっこする」

小池さん「そうなるとオスもメスも、どんどんエスカレートしていきますよね?」

長谷川さん「そうですね。ある状況にはまってしまって、それがもっともっとというふうになって、メスもそれを選んだりしたら、どんどん加速していきますので、そういうシナリオを『暴走進化論』と呼びます」

小池さん「どういう例があるんですか」

長谷川さん「例えばここにも展示されていますけれど、『アイルランドヘラジカ』という動物のものすごい角」

小池さん「これ、倒れるでしょう?」

長谷川さん「より大きくて広い角を持っているほうが有利というオス同士の競争が、暴走してしまった。結局、これじゃ生きていけないみたいなことになって、絶滅していますね。角が大きいことは、ある意味で有利なんだけれど、そのデメリットというのがだんだん大きくなってくる。普通は、どこかで止まるんですよね」

大泉さん「メスにも責任があるわけですよ。こういうのばかり選ぶから。もうちょっとこじんまりしたやつも選んでいれば、暴走までいかない」

小池さん「順調に進化していくって、難しいんですね。案外」

長谷川さん「動物の進化というのは、人間はいろいろ考えて、あと知恵で全体としてとか言うけれど、そういうことはない。今ここでちょっと有利だったら、それが残る。(その種が今も)見られているということは、延々と続いてきたということよね」

小池さん「生きものたちの恋の駆け引きを、たくさん見ていただきましたけれども、全ては命を次の世代へ残すための大切な行動だということですね。面白かったし、プチ感動とかもしましたよね」

大泉さん「時にね、生存できなくなるかもしれないけれども、その代での自分の命というものも大事なんだけれども、いかに自分の種族・子孫を残していくということを、大事に考えているのかということですよね」

ナミビアの砂漠。あのメスたちの過酷なテストに見事合格したダチョウのオスは、大事な場面を迎えていました。

卵を抱き続けて40日。かえったばかりのヒナたちです。

命は、次の世代へとつながっていきます。生命あふれるこの星は、恋する生きものたちの命がけの営みに支えられているのです。

物語の舞台は「海」へと続きます。次回は「水中の恋」。さらに多様でダイナミックな恋の駆け引きが展開します。臨機応変に、オスにもメスにもなれるもの、相手の体の一部になってしまうもの。不思議な生きものがめじろ押しです。次回もお楽しみに!