混迷の世紀 第2回 加速する“パワーゲーム” 〜激変・世界の安全保障〜

NHK
2022年11月14日 午後2:15 公開

(2022年10月9日の放送内容を基にしています)

夏休み、祖国を守る訓練を受ける子どもたち。

ロシアと国境を接するリトアニアが、国防の意識を高めるため全土で行った合宿です。

ウクライナへの侵攻後、ヨーロッパでは軍事的な脅威を前に、人々が身構える時代を迎えています。

参加者「すべてのリトアニアの市民は、国を防衛しなければなりません」

ロシアと対じする、世界最大の軍事同盟、NATO。いま、ウクライナへの軍事支援を強化し、ロシアとの国境沿いに、次々と部隊を送り込んでいます。

ロシアは先月(2022年9月)、ウクライナの東部や南部の4つの州を一方的に併合すると宣言。併合した地域も含め、領土を守るために、核兵器の使用も辞さないとしています。

シリーズ、混迷の世紀。第2回は、大国同士のパワーゲーム。ウクライナ侵攻後、軍事力を背景にした、激しい駆け引きが繰り広げられています。

アメリカ/バイデン大統領「プーチン大統領、勘違いするな。我々は一切譲らない」

プーチン大統領は欧米による包囲網を崩すため、中国とともに対抗軸を作ろうとしています。

ロシア/プーチン大統領「アメリカやその仲間は、自分たちにとってのみ有益な世界秩序を維持しようとしている」

世界の分断が進む中、インド太平洋地域では、アメリカと中国の対立が激しさを増しています。

日米同盟を基軸とする日本は、中国とのせめぎ合いが続く地域に自衛隊を派遣。活動の範囲がさらに広がっています。

加速する大国同士のパワーゲームは、私たちに何をもたらすのか。緊迫する世界の行く末を展望します。

河野キャスター「ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の安全保障に地殻変動を引き起こしました。アメリカやロシア、中国などが、軍事力や経済力を駆使して主導権争いを繰り広げる大国同士のパワーゲームが激しさを増し、世界は分断と対立を深めています」

河野キャスター「今回、私たちはこうしたパワーゲームによって、緊張が高まる世界の3つの現場を取材しました。ロシアと対じし、軍備の強化が急速に進むヨーロッパ。欧米に対抗し、ロシアが軍事力を通じて影響を強めているアフリカ。そしてアメリカと中国の対立の最前線となっている、太平洋の島しょ国。日本もその渦中に置かれています。大国同士がせめぎ合う中で、世界はどこに向かうのか。まずは、緊張が高まるヨーロッパです」

<リトアニア・スウェーデン 軍備増強と国防費拡大>

先月(2022年9月)、NATOの防衛強化のため、バルト3国のリトアニアに新たな部隊が派遣されました。ウクライナ侵攻を受け、NATOは駐留部隊を最大で5000人規模、これまでの4倍に拡大する方針です。

NATOは、アメリカとヨーロッパなど、30か国が加盟する軍事同盟です。各国が派遣した部隊がNATOの指揮下に入り、加盟国の領土と国民を守ります。

アメリカを中心とした世界最大の軍事同盟。今回の侵攻を受け、ロシアやウクライナと近接する国に展開する兵力を、大幅に増やしています。その一つ、リトアニアは、ロシアと同盟関係にあるベラルーシと、ロシアの飛び地カリーニングラードに挟まれています。およそ100キロの国境が封鎖されれば、バルト3国が孤立するため、重要な防衛ラインとなっています。

リトアニア/アブケビチュス副国防相「ロシアに対する唯一の正しいアプローチは、封じ込めと弱体化です。さらなる同盟軍の駐留が必要なのです」

政府はNATOの支援を受けながら、国防軍の強化に乗り出しています。

ロシアによるクリミア併合を受け、2015年、徴兵制を復活。毎年18歳から23歳までの男性の一部が、9か月間兵役につきます。

この日は郊外の町で、市街地での地上戦に備えた演習が行われました。敵軍が国境を越えて、街に侵攻する事態を想定し、防衛にあたります。

住民男性「頼もしいです。私も兵役を経験していますし、現状を理解していますから」

住民女性「幸い、これは訓練ですが、銃撃の音が聞こえると、やはり怖いです」

ウクライナでの戦闘が続く中、兵役に志願する若者が増えています。

17歳のパウルス・ブラジスさんは、ロシアと国境を接する小さな町に暮らしています。パウルスさんには、両親と祖父母、2人の弟がいます。もともと化学を学びたいと、大学への進学を目指していましたが、来年高校を卒業したら兵役に志願することを決めました。

取材班「武器をとることは怖くはないですか?」

パウルスさん「もちろん怖いです。でも年老いた祖父母と2人の幼い弟を守りたいです」

リトアニアの強い危機感。その背景には、かつてソビエトに併合された過酷な歴史があります。

ジタ・ヤンクイネさんです。

ジタさん「とても不安です。ソビエト時代には、絶対に戻りたくないです」

今も残されているソビエトの情報機関KGBが管理していた監獄。占領に抵抗した市民に対する拷問や処刑が行われ、2万人以上が命を落としたとされています。

ジタさんの父親はリトアニア軍の軍人でした。当時、KGBによる厳しい監視のもとでの暮らしを強いられたと言います。

ジタさん「私たちは、家の中でも占領されていると感じていました。いつも迫害を受けていました。だから息を殺して、目立たないように過ごしていました」

ジタさんは、ウクライナの惨状と、かつての占領下の記憶を重ね合わせています。

ジタさん「ロシアはウクライナの国民を殺しています。リトアニアもそうなるかもしれません。NATOはその時どうするでしょうか。マリウポリやブチャのようになったら、もう遅いのです」

NATOは1949年、ソビエトなどに対抗するため、アメリカやイギリス、フランスなど12か国が加盟し設立されました。これに対し、ソビエトはポーランドや東ドイツなどとともに「ワルシャワ条約機構」を結成しました。冷戦の終結に伴い、1991年、ワルシャワ条約機構は解体。

その一方で、NATOは旧共産圏の国々の加盟によって拡大していきました。

ウクライナへの侵攻を受け、軍事的中立を保ってきた北欧のスウェーデンとフィンランドも、新たに加盟を申請します。

歴史的決断を行ったスウェーデン。国のあり方をめぐる議論が続いています。2022年9月に行われた総選挙では、ほぼすべての党が、国防の強化を打ち出していました。

スウェーデンは、およそ200年前から同盟には加わらず、軍事的中立を貫いてきました。ヨーロッパが焦土と化した2度の世界大戦にも参戦せず、戦火を免れたことで、いち早く経済発展を遂げ、世界有数の福祉国家を築いたのです。

しかし、もはや軍事的中立では国を守れないと判断し、侵攻から3か月でNATO加盟の申請に踏み切りました。

スウェーデン/ロビーン元副首相「ロシアの侵攻以前は、スウェーデンには確信がありました。軍事的中立であることが地域の安定を維持し、ロシアという凶暴な熊を目覚めさせない、最良の選択だという確信です。しかし軍事侵攻を受けて、緊急に加盟の議論を進めたのです」

スウェーデンは今後、国防費をNATOが目標とするGDP比2%、およそ2倍の規模にまで引き上げるとしています。その財源をどうするのかが、選挙の争点の一つになっていました。

市民「国防費はどこから調達されるのでしょう?」

市民「NATOに加盟するためには、予算が必要ですよね?」

立候補者「わが党は、現状の予算の無駄を洗い直します。時間をかけて徐々に行う予定です」

国防費の増加によって、社会保障費が削減されないか、と懸念する若者もいます。

貧しい移民の家庭で育った大学生のイスマイル・クァッティンさんは、手厚い社会保障のおかげで、大学に進学することができました。NATOへの加盟をきっかけに、福祉国家のあり方を変えてほしくないと言います。

イスマイルさん「国防予算の拡大は悪いことではありません。しかし、労働者や若者が負担を強いられることは問題です。戦争が起きているときこそ、手厚い社会保障がより重要です」

選挙の結果、“社会保障費の抑制”を訴える、中道右派の政党が政権を担う見通しとなりました(2022年10月9日現在)。

中道右派 穏健党・ヨンソン議員「より厳しい優先順位が必要です。失業保険などを引き締めて、本当に必要なものに集中させるのです」

スウェーデンで防衛の強化が急速に進められているのが、ロシアの飛び地と向き合うゴットランド島です。ロシアによる軍事侵攻を受け、軍の部隊が増強され、NATOとの合同演習も行われています。

島では、住民の暮らしが圧迫され始めています。軍はいま、演習場や管理区域を拡大するため、住民から次々と土地を買い取っているのです。

ボー・レバンデルさんとアニタさん夫妻です。30年前、静かな環境で暮らしたいと、この地に念願のマイホームを購入しました。しかし、いま家の周りは軍の敷地に取り囲まれています。

アニタさん「自由に行動できなくなったことが残念です」

この春、軍から自宅と土地を手放すよう要請がありました。夫妻は難しい決断を迫られています。

ボーさん「ゴットランド島は戦略的な場所に位置していますから、軍の増強は良いことだと思います。この島は、バルト海の真ん中に浮かぶ、空母のようなものですから。長年愛着をもってきた家だからこそ、売るのは難しいです」

NATOへの加盟と国防の強化。この選択は正しかったのか。島の議員たちの間では、意見が分かれています。

「軍が島に駐留していることで、戦争が拡大するのを抑止しています」

「そうは思いません。島の防衛が強化されたことで標的になり、危険にさらされる可能性を抱えています。ロシアを挑発すれば、危うい立場に置かれてしまいます」

「でもロシアは強い国には手を出さないでしょう。NATOに加盟すれば、私たちを助けてくれるはずです」

「トルコやアメリカがいい同盟国ですか?私はごめんです」

軍事的な脅威と向き合うヨーロッパの人々が、揺れています。

NATOを主導する大国アメリカ。ウクライナへ2兆円を超える軍事支援を行い、ロシアへの圧力を強めています。

アメリカ/バイデン大統領「アメリカは同盟国やパートナーを率いて、国家の未来のために勇敢に戦うウクライナを支援する。プーチンの残忍な戦争から、自らを守るための武器や弾薬を入手できるようにする」

アメリカはウクライナでの直接対決を避けながら、ロシアの“弱体化”を狙っていると言います。

アメリカ/クレイマー元国務次官補「プーチンを倒して、二度とこのような脅威を与えないようにする、それが私たちの国益です。ウクライナが自由と民主主義、国を守ろうとする限り、アメリカと同盟国は彼らを支援します」

<ロシア包囲網の裏で アフリカへの影響力拡大>

先月末(2022年9月末)、ロシアは国際社会の非難をよそに、ウクライナの東部や南部の4つの州の併合を一方的に宣言しました。

欧米の包囲網に対抗するプーチン大統領。2022年8月、アジア・アフリカ・中南米37か国の軍人らを集めるフォーラムを開催し、連携を呼びかけました。

ロシア/プーチン大統領「ロシアは中南米・アジア・アフリカとの強固な友好・信頼関係を守る。同盟国や友好国に最新の兵器を供与する準備がある」

いまロシアが関与を強めているのがアフリカです。

国連総会では、ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議が採択されましたが、アフリカの半数近い26か国が賛成しませんでした。

ロシアは関係強化のため、軍事訓練などの支援を進めています。ロシアが軍事面で協力する国は34か国にのぼります。武器の輸出にも力を入れています。アフリカへの武器の輸出は、アメリカを上回り、世界トップ。全体の44%を占めています。

関係を急速に深めている国の1つが西アフリカのマリです。

マリでは、10年前から政府軍とイスラム過激派の間で戦闘が続いています。治安維持のため、これまで軍事支援を行ってきたのは、旧宗主国のフランスでした。しかし、クーデターが起き、軍が実権を握ると、関係が悪化。今年、フランスは部隊の撤退を余儀なくされました。

軍事政権に近い元議員 ムーサ・ジャラ氏「フランスはマリの治安を守ることができず、協力関係はうまくいきませんでした。マリにとって、ロシアは間違いなく信頼できる友好国です。そのためウクライナ侵攻は非難しません」

いま、マリ軍に協力して、戦闘に関わっていると指摘されているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」です。マリ軍が2022年3月に行った、過激派の拠点への大規模な掃討作戦に加わり、数百人の住民を巻き添えにした疑いが出ています。

掃討作戦が行われた現場から逃げてきた男性は、故郷が破壊され、多くの隣人が目の前で殺されたと言います。

逃れてきた男性「ずっと心が痛いです。世界で一番愛していた村だったのに、もうみんないなくなってしまいました。希望はもうありません」

プーチン政権は、民間軍事会社の存在自体否定しています。しかし欧米は、ロシアが手段を選ばず地域を不安定化させているとみています。

専門家はロシアの影響力が、アフリカの多くの国で広がることには理由があると指摘します。

カーネギー国際平和財団 ポール・ストロンスキー上級研究員「ロシアは政治体制や人権問題、汚職は問いません。アフリカ諸国は、そうしたことを問題視する欧米以外の選択肢を求めています。一方、欧米によって孤立させられているロシアにとっても、アフリカは重要な地域なのです」

河野キャスター「アフリカ、そしてヨーロッパで激しさを増す大国同士のパワーゲームによって、世界がますます不安定な時代に向かっていくのではないか、そうした危うさを感じます。一方、アジアに目を向けると、アメリカと中国のパワーゲームが繰り広げられています」

河野キャスター「ウクライナ侵攻後、ロシアは中国に接近し、共同の軍事演習を行うなど連携を強化。対するアメリカは、日本などインド太平洋地域の同盟国との結束を強化して、海洋進出を加速する中国を抑え込もうとしています。米中のせめぎ合いの最前線の1つとなっているのが、太平洋の島しょ国です。小さな島国をめぐって、日本も加わった、しれつな駆け引きが始まっています」

<米中対立の最前線 ソロモン諸島・日本は>

軍事力を増強し、海洋進出の動きを強める中国。

いま、太平洋島しょ国での影響力を、急速に拡大させています。中国は、巨額の経済支援などを行い、3年前にはキリバス、ソロモン諸島と相次いで国交を樹立しました。特に関与を深めているのが、ソロモン諸島です。

「中国とソロモン諸島が安全保障に関する協定を結んだ。将来的に中国が軍事拠点をつくるおそれがある」(オーストラリアABC放送)

2022年4月、中国は安全保障に関する協定を締結。内容は公表していません。

これはSNSに流出した、協定の草案とみられる文書です。 ソロモン諸島が中国に警察や軍の派遣を要請できることや、中国が船舶を寄港させて補給できることなどが記されています。

実際に、警察に装備品を供与したり、訓練を行ったりして、連携を強化しています。

中国/国防大学・劉明福教授「中国の夢は太平洋、そして世界をより平和にしていくことです。そう遠くないうちに、アメリカの覇権は墓場に入るでしょう。ソロモン諸島と中国が関係を強化すること、それは新時代の中国の姿を示すことになるのです」

危機感を強めるアメリカ。政府に安全保障政策を提言してきたジェフリー・ホーナン氏が、最も懸念するのは、ソロモン諸島に中国の軍事拠点ができることだといいます。

ハワイとオーストラリアを結ぶ直線上にある、戦略的要衝のソロモン諸島。中国によってシーレーンが分断されかねないと見ています。

ランド研究所 ジェフリー・ホーナン上級研究員「これは中国の軍事的な影響力が、新たな段階に入ったことを意味します。例えば、台湾有事の際、アメリカを支援するオーストラリア軍が妨害されるなど、大きな問題が生じます。アメリカと、日本などの同盟国が積極的に太平洋島しょ国に関わり、中国の海洋進出を防がなくてはならないのです」

大国と大国のパワーゲームが繰り広げられるソロモン諸島。日本も、その渦中に身を置くようになっています。

海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」。この夏、ソロモン諸島に派遣されました。日本政府が掲げる“自由で開かれたインド太平洋”構想にもとづいて、自衛隊は5年前から各国との訓練などを通じて、友好関係を築く活動を行っています。

今回、アメリカ軍とともに、初めてソロモン諸島など、太平洋島しょ国を訪れました。

護衛艦きりさめ・坂田淳艦長ソロモン諸島に寄港するということは、日米をはじめ、関係国との連携を非常に強化できるのではないかと。安定したシーレーンの確保や、地域の平和や安定に貢献できるのではないかと考えています」

歴史上、ソロモン諸島は大国間の争いに翻弄されてきました。

太平洋戦争中、アメリカとオーストラリアの連携を阻もうと、旧日本軍がソロモン諸島にあるガダルカナル島に進出。激しい戦闘が行われました。戦後、西側諸国が経済援助を行い、友好関係を築いたものの、冷戦終結後、アメリカは外交面での関わりを弱めていきました。

その間に中国が急速に接近し、国交を樹立。

アメリカはいま、政府高官を派遣するなど、巻き返しを図ろうとしています。

アメリカ/駐ソロモン諸島・コモー臨時代理大使「太平洋島しょ国での力関係は、明らかに変化しています。我々は民主主義のために、ここに安定した基盤を作り、発展させたいのです」

日本は5年間で450億円以上の援助(2015年度から5年間の実績値)を行うなど、ソロモン諸島と友好関係を築いてきました。自衛隊の訪問の目的は、安全保障の面でも関係を強化することです。

入港した自衛隊が目の当たりにしたのは、中国の影響力が至る所に広がっている現実でした。

護衛艦きりさめ・坂田淳艦長「あれ、中国の貨物船」

中国による経済援助は、スタジアムなどの巨大施設からゴミ収集車に至るまで、幅広く及んでいます。

護衛艦の艦長が訪ねたのは、中国と連携を強める、警察機関のトップです。安全保障を担当する閣僚に、海上警備などの分野で、協力関係を深めたいと伝えました。

護衛艦きりさめ・坂田淳艦長「ソロモン諸島も日本も海洋国家ですので、海洋に関する連携を、しっかり高めていこうと話は盛り上がったと思います」

自衛隊が入港した翌日。アメリカの主催で、ある式典が行われました。

80年前の、ガダルカナル島の戦いで亡くなった人たちを慰霊する式典です。日本やアメリカ、オーストラリアなどの高官らが参列。ソロモン諸島の首相も出席する予定でしたが、急きょ出席を取りやめたのです。

中国に配慮したのではないか。

式典のあと、日本の出席者たちは、首相のもとを訪問。中国との関係への懸念を伝えました。

会談に同席していた三輪芳明大使です。

三輪芳明 駐ソロモン諸島大使「ソガバレ首相の立場からすると、端的にいえば、懸念には及ばないというか、我々は対立をここに持ち込むつもりはないと。しっかり認識をお互いに交換して埋めていく」

翌日、自衛隊はアメリカ軍と合同で、ソロモン諸島の海上警察と親善訓練を行いました。3か国による訓練は初めての試みです。

護衛艦きりさめ・野本祥平副長「よりソロモンと日米の関係を、バランスよく表現できると思うので。作業をよろしくお願いします」

ソロモン諸島を先頭に、日米が後方に並ぶ陣形を作りました。

護衛艦きりさめ・坂田淳艦長「親善訓練への参加に、感謝申し上げます」

ソロモン諸島の海上警察「私たちにとって、非常に良い経験となりました。またお会いできることを期待しています」

遠く離れた太平洋島しょ国にも活動を広げている日本。世界のパワーゲームの中で、さらなる役割を求められようとしています。

2022年6月、NATOは今後の活動方針の中で、ロシアに加えて、初めて中国についても言及。安全保障や利益、価値観が相いれない存在だと位置づけました。

その会議に日本の総理大臣が初めて出席。NATOと協力を進展させていくことで一致しました。

一方、こうしたNATOの動きに対抗するロシアと中国。先月(2022年9月)中旬、両国が主導する枠組み、「上海協力機構」の首脳会議を開催しました。安全保障分野などを協議するこの枠組みに、イランを新たに加えることで合意。欧米への対抗軸としての存在感を高めようとしています。

<分断深める世界の行方は 知の巨人に聞く>

複雑化するパワーゲームによって、分断を深めていく世界はこの先、どこへ向かうのか。

アメリカの国際政治学者イアン・ブレマー氏。大国間の緊張が高まり、軍備の増強が進む中、新たな衝突が起きるリスクが、各地に広がることを懸念しています。

国際政治学者 イアン・ブレマー氏「アメリカはもはや『世界の警察官』ではありませんし、もう誰もその役割を担えません。中国は5年、10年前よりも、軍事的にはるかに手ごわい敵対者、競争相手になっています。その結果、アジアの他の国々の軍事力の増強も進みました。例えばインド、オーストラリア、そして日本は歴史的に見ても、より多くの防衛費を費やすようになっています。

ロシアは今や、6000発の核兵器を持つ『ならず者国家』です。世界の主要国との、あらゆるつながりを失ってしまいました。より多くの地域で、軍事的な対立が起きる可能性があると考えています。ユーラシア大陸に限ったことではないのです」

衝突を避けるために、どうすればいいのか。

世界ではいま、民主主義を標ぼうする国々と、権威主義的とされる国々との対立が深まり、対話が途絶えることが懸念されています。

冷戦終結後、ヨーロッパが新たな秩序を模索した時代に、フランスの外相などを務めた、ユベール・ヴェドリーヌ氏は、冷戦期ですら、戦争を避ける手立てが講じられてきたことを、忘れてはならないと言います。

フランス/ユベール・ヴェドリーヌ元外相冷戦期に、東西両陣営が全面的に対立していた時代でも、アメリカの指導者には、ソビエト側と対話する度量がありました。西側の政治家は『価値観の違う国とは話ができない』とは言いませんでした。価値観の争いだと、決して言わなかったのです。現在の対立を、価値観の違いをめぐる争いにしてはなりません」

世界はかつて、大国間の対立から2度の世界大戦を経験しました。

大国の争いがもたらした傷痕は今も残されています。日米の激戦地となったソロモン諸島のガダルカナル島。当時の不発弾が、住民たちの命を脅かしています。

不発弾で家族を亡くした住民「戦争から80年もたつのに、私たちは大切な子を奪われたのです。私たちは太平洋の点のような国で力はありません。二度と戦争に巻き込まないでください」

世界各地で繰り広げられる大国間のパワーゲーム。

人々を対立の渦に巻き込む駆け引きは何をもたらすのか。

その危うさと向き合う時代に、私たちは生きているのです。