半導体大競争時代 第2回 日本は生き残れるか

NHK
2023年2月15日 午後5:00 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

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(2023年1月29日の放送内容を基にしています)

先端技術の覇権をかけた攻防に迫る、シリーズ半導体・大競争時代。かつて半導体王国だった日本のシェアは5分の1以下に低下。世界の潮流を見誤り窮地に追い込まれています。日本は生き残れるのか。今回は、復活を目指す企業や技術者たちの挑戦を見つめます。逆襲のカギは、“空飛ぶクルマ”や“仮想空間”、“イノベーション”など驚きのテクノロジーを可能にする「次世代半導体」です。果たして日本の半導体は希望を見いだせるのでしょうか。

<ニッポン半導体 復活のカギ>

浅野里香アナウンサー「今回は、日本企業や開発者たちの挑戦に迫ります」

有馬嘉男キャスター「具体的には『次世代半導体』です。『AI半導体』は、AI・人工知能に最適な半導体です。『パワー半導体』は、電気自動車・EVシフトへのカギを握るもの。そして『3D半導体』。これは半導体そのものに革命を起こす存在として期待されています。日本企業にも十分勝機があると見られている半導体です」

浅野アナウンサー「まず『AI半導体』が、どんなものか。リモコンのような機械を画面に向けていただきます。映像は私がゴルフのパターをしている様子なんですが、リモコンを上下左右に動かすと、リモコンの動きに連動して360度どこからでも見ることができるんです」

劇団ひとりさん「えーすごい!」

ひとりさん「『これどこから撮ったの?』っていうことじゃないですか。“実写”だから」

浅野アナウンサー「実は実写ではなく全てCG、“仮想空間”なんです」

有馬キャスター「実写を撮って、そのデータをAI半導体が計算して、こちらの角度ならこういうふうに再現できると、CGでつくっているということなんです。急拡大するAI半導体ビジネスに、日本がどこまで食い込めるかを見ていきたいと思います」

<世界を変える!? AI半導体の“王者”>

AI半導体の“王者”として君臨するアメリカ企業・エヌビディア。売り上げは年間269億ドル。AI半導体の世界シェア8割を占めています。

イアン・バックさん「AIはあらゆる産業に影響を与えています。(AIは)現代最大のコンピューター革命で、またとないチャンスなのです」

これが「AI半導体」です(上写真)。膨大な計算やデータ処理に最適化し、人間の頭脳に迫る力を発揮します。この企業は、AI半導体を2000以上搭載した「スーパーコンピューター」も開発。医療や産業、都市計画など、さまざまな分野で活用されるAIを生み出してきました。

今、特に力を入れているのが「自動運転のAI」です。自動運転では、AIが周囲の状況を見分け、車の運転をマスターする必要があります。運転を学ばせるには、実際の道路を走るのが一般的でした。しかしこの企業は、道路を走ることなく学習を進めることを可能にしました。カギを握るのは“仮想空間”です。仮想空間の中では、雪を降らせるのも、行く手をさえぎる車を出すのも自由自在です。時には、子どもが飛び出すことも・・・。あらゆる場面を計算ではじき出せる。これがAI半導体の強みなのです。

エヌビディア 自動運転担当「1秒間に2000兆回の計算が可能です。複雑な判断を求められる自動運転には、それだけの能力が必要なのです」

AI半導体の世界をリードしてきたこの企業は、創業から30年。業界の変化をいち早く捉えることで、トップに上り詰めました。

力を入れてきたのは、「GPU」と呼ばれ、ゲームやCGの画像処理を得意とする半導体です。GPUの計算能力が上がるにつれ、ゲームの画像が鮮明になり、売り上げも伸びていきました。

この企業の転機となったのが、11年前に発表された研究結果です。GPUは膨大な計算処理が必要なAIに適していることが分かったのです。こうしてGPUは、AI向けの半導体「AI半導体」として扱われるようになり、市場が一気に広がりました。

イアン・バックさん「それが火付け役となって、あらゆるところでAIが使われ始めました。わが社はAIの恩恵を受ける唯一の立場になりました。私たちのところにAIがやってきたのです」

今後も急成長が予想されているAI半導体。3年後には774億ドル、およそ10兆円に達するとみられています。

<AI半導体で世界へ ベンチャーの挑戦>

誰が巨大市場を制するのか。

しれつな競争に挑むのは、日本のベンチャー企業・プリファードネットワークスです。創業者の西川徹さん(40)は、仮想空間のAIなどを次々と開発。トヨタやNTTなどから出資を受けて、事業を拡大しています。

CEO 西川 徹さん「この分野は、ものすごい進展が速いんですね。5年前にできていたことと、今できることが全然違う世界。(短いスパンで)ビジネス化していかないと、どんどん競争が厳しくなる」

この企業が開発したAI半導体です(上写真)。大胆な設計に取り組んでいます。

通常AI半導体には、計算やメモリーを担う部分のほかに、命令を出すコントロール部分があります。この半導体ではコントロール部分を取り除き、ソフトウェアに代行させることにしました。そうして空いたスペースは、計算の強化に当てたのです。このAI半導体は高い計算力と省エネ性能を発揮し、海外勢を破り3度、世界一に輝きました。日本の技術力の可能性を示したと、専門家も注目しています。

東京大学 平木 敬 名誉教授「これからどんどんコンピューターは速くなりますから、人間がかなわない日ももうそこまで来ている。今は立ち上がりの時期で、今からが本番だと思っています」

神戸大学大学院 牧野淳一郎 教授「大きなところですごい研究所を持っていて、最先端のものはそこから出てくると思うじゃないですか。でもアーキテクチャー(半導体の設計思想)は、そうなってない。全く新しいものは、ベンチャーじゃないとつくれないんですよね」

社員数およそ300人のこのベンチャー企業。実は自前の工場はもっていません。自らは半導体の設計に集中し、製造は台湾の企業に委託しています。これによりコストを抑え、機動的な経営ができるのです。AI半導体を搭載したスーパーコンピューターも開発。その高い計算力を武器に、AIを活用したビジネスを幅広く展開する戦略です。

生み出されたAIは、産業界に変革をもたらそうとしています。そのひとつ石油元売り最大手のエネオスは、石油に変わる新たなエネルギーの研究を進めています。AIがさまざまな原子を組み合わせるシミュレーションを行い、未知の物質を瞬時に合成。その結果、研究開発が大幅にスピードアップしたのです。

エネオス AIシミュレーション担当「従来であれば1~2週間、計算にかかっていたが、このAIシミュレーターを用いると1~2分で計算が完了します」

エネオス 上席研究員 杉浦行寛さん「(AIが)今までの想像になかったものも提示してくれて、そういうものが意外に有効だったりするので驚いています。より研究開発が加速されると考えています」

AI半導体で世界に挑むベンチャー企業・プリファードネットワークス。今、さらに計算速度を高めた半導体の開発が進んでいます。その現場の取材が特別に許されました。チームのメンバーには、日立、ソニー、NEC、日本IBMなど、大手メーカーの出身者が多数います。半導体やスパコン事業が縮小される中、挑戦できる場所を求めて集まりました。

安達知也さん(37)「小さい会社でもチップ(半導体)をつくるんだっていうのは面白いと思いましたし、自分の力もいかせると思い転職しました」

名村 健さん(53)「プリファードの人は、なんでもチャレンジする。『こういうのをやっていこうよ』というのがあるので、新鮮ですごく刺激になっています。結構な年齢ですけど、モチベーション高くやれていると思います」

目標は、性能を向上させたスーパーコンピューターで、再び世界一をとること。心臓部のAI半導体を新たに設計しています。若手の技術者たちが柔軟な発想でアイデアを出し合い、トライ&エラーで改良を重ね、極限まで性能を上げようとしています。

同時に開発が進むのは、半導体を動かすのに欠かせない「基板」です。チームには、ベテランの技術者も参加。経験をいかし、基板の試作に挑んでいます。

開発が佳境にさしかかった2022年10月。現場に張り詰めた空気が漂っていました。基板の電源が突然落ちたのです。若手とベテランで知恵を出し合い、原因を探ります。

基板の開発をリードする友永泰正さんは、チームの最年長です。日本IBMで半導体を手がけていました。その後、管理職になり最前線を離れますが、現場への思いを捨てきれず転職してきました。

友永泰正さん(59)「机にかじりついているより、モノを触っている方がやっぱり面白いですね」

友永さんが30年ほど前の半導体を見せてくれました(上写真)。日本の半導体業界に勢いがあったころ、同僚の田中さんと一緒につくりました。

友永さん「当時2次元のグラフィックスで世界最速。アーケードゲームの機械に積まれていた。私が30歳くらいのときにやっていたものです」

田中伸宜さん「そのころは世界一だったわけなんですけど、今は外国に持っていかれちゃった」

日本の半導体が世界をリードしていた時代を知る友永さんたち。復活は可能だと信じています。

友永さん「脈々と受け継いだ技術は、ゼロになっていない。日本には、まだそういう技術は残っていると思います」

2022年11月。

開発は最終段階を迎えていました。設計を見直した基板が完成したのです。AI半導体と基板を組み合わせて、動作チェックをします。2年以上試行錯誤を重ねてきたプロジェクトです。

無事、動き出しました。

新たなAI半導体を載せ、性能を高めたスーパーコンピューターが、年内に稼働する予定です。

西川さん「少ない人数であっても、優れたプロセッサー(半導体)をつくれるような戦略を立案できるのではないか。その機動力というのが、スタートアップ(ベンチャー企業)の大きな強みではないかと思います」

<日本は生き残れるか ベンチャーの挑戦>

有馬キャスター「ここまで『アメリカのガリバーに日本のベンチャーが挑戦する』という構図で描いたんですけど、実は取材したアメリカの巨大企業も、もともとはベンチャー企業。それが急成長した。持っていた技術がAIにハマったんです」

浅野アナウンサー「その技術、こちらの『グラフィックボード』の中に入っています。特別に中を開けて見てみます」

浅野アナウンサー「ここが『GPU』。映像の画像処理の半導体になります」

有馬キャスター「この半導体がAIに最適だということにアメリカの企業は気がついて、一気にAIにかじを切った。『世界の潮流を読むのが大事』というふうに思いました」

浅野アナウンサー「AI半導体を自らつくろうというのが日本のベンチャー企業。ここも着眼点がよかったですよね。本来AIのサービスを提供する会社なんですけれども、より優れたAIのサービスを提供するために、半導体からスーパーコンピューターまで、全て自社でつくってしまおうという取り組みでした」

有馬キャスター「設計と開発まではするんだけど、実際に半導体をつくるところは、他の企業に委ねているんです。大胆な発想をしてスピードをもってつくることが可能になった。ベンチャー企業ならではの『機動力』だという言い方もできると思うんです」

真矢ミキさん「こんなベンチャー企業が出てきたら、日本は変わりそうですね」

有馬キャスター「どんどん出てきてほしいんですが、現状は残念ながらそうなってないんです」

有馬キャスター「ユニコーン・有望なベンチャー企業の国際比較です。数を見たものなんですけど、アメリカ、中国、ヨーロッパ、日本。世界と比べると圧倒的に日本は少ないんです」

ひとりさん「どうしてこんなに少ないんですか?」

有馬キャスター「ベンチャーを応援する仕組みがなかなかできてない。ひとつはお金の面。トライ&エラーをするのがベンチャー企業のよさでもあるじゃないですか。ところが一回失敗してしまうと、もう一度それを応援しようという仕組みがなかったりする。僕が思うのは、日本の半導体のベンチャーに“絶対的な成功事例”が出ることだと思うんです。次のトヨタ、次のソニーになる可能性を秘めた絶対的に成功するケースが出てきたら、若者も追いかけていくし、投資家もついてくるし、日本に注目は集まるし、回っていくと思う」

<世界を変える!パワー半導体>

浅野アナウンサー「次の次世代半導体は『パワー半導体』です」

浅野アナウンサー「こちらは“空飛ぶクルマ”。エンジンではなく電気で動いています。こうした電動化を支えているのが『パワー半導体』です。3年後には、4兆円の市場に成長すると予想されています(Omdia調べ)。最近、電気自動車が急激に広がっているのも、このパワー半導体が進化しているからなんです」

浅野アナウンサー「世界で最も売れているこちらの電気自動車、パワー半導体が隠されているのは後輪のそばです」

ひとりさん「今まで見てきた半導体と何が違うのか・・・」

浅野アナウンサー「特別にお借りしてきました。すごく重たいんです。ちょっと外して中を見てみますね」

ひとりさん「とても自動車の中を見ているとは思えないですね」

浅野アナウンサー「黒い板状のものが並んでいます。こちらが『パワー半導体』」

ひとりさん「かなりの数がありますね」

有馬キャスター「なぜ『パワー半導体』が重い車をあれだけのスピードで走らせるパワーを生むのか。電気自動車は、バッテリーの電気で走りますよね。ただバッテリーから出る電気は『直流』なんです。ところがモーターは『交流』じゃないと動かない。ということで、バッテリーとモーターの間にある『パワー半導体』が、いわば“スイッチ”となって『交流』に切り替えるわけです。交流になるとモーターが回る。このパワー半導体をいくつも集めることで、より大きなパワーを生む。これが単純な仕組みです」

ひとりさん「半導体って“知的作業”ばかりしているイメージがあったけど、“力仕事”もするんですね」

有馬キャスター「この車の場合、数秒間で時速100kmに到達する加速を、このパワー半導体が生む。パワー半導体で空飛ぶ飛行機もできちゃう。私たちの暮らしを変える要を、このパワー半導体が担っているということが言えると思います」

ひとりさん「僕らの家にも、パワー半導体が入っているものはあるんですか」

有馬キャスター「家電にもいっぱい入っています。例えば、炊飯器、ドライヤー、掃除機、洗濯機(パワー半導体は、家電製品に広く使われ直流↔交流変換などを行う)」

ひとりさん「半導体って、いろんな仕事ができるんですね」

有馬キャスター「『よりパワーを生む半導体をつくる』というのも、最先端の半導体の開発競争なんです」

<EVで大注目!パワー半導体>

今後、大きな市場拡大が期待されている「電気自動車」。そこで欠かせない最先端の「パワー半導体」の市場に挑む日本企業があります。京都に本社を置く、ロームです。世界で初めて、「炭化ケイ素SiC」を使ったパワー半導体を製品化しました。この半導体は、これまで主流だったシリコン製と比べ3倍高い電圧で動き、出力を上げることができます。

家電向けの電子部品の製造で成長してきたこの会社が、パワー半導体の開発を始めたのは20年ほど前でした。主な取引先だった国内の家電メーカーの業績が悪化し、その影響を受け、この会社も大規模な人員削減を余儀なくされました。

伊野和英さん「新しいことをやらなければいけないというのは、社内の危機意識としてあった。『新規事業を立ち上げていく』。当時、これが大きなテーマになっていた」

社運をかけ乗り出したパワー半導体の開発。当時、高い電圧に耐えられる素材「SiC」に世界が注目し、しれつな開発競争が繰り広げられていました。

そして開発から10年。世界に先駆け、製品化を実現したのです(2010年)。

2017年、大きなチャンスが訪れます。

アメリカのテスラが、炭化ケイ素SiCのパワー半導体を搭載した電気自動車を発売。市場が一気に拡大したのです。

しかしシェアを伸ばしたのは、あとから売り出した海外勢でした。この分野の売上高1位は、テスラが採用したスイスの企業。ロームは5位。トップの7分の1にとどまっています。

海外の企業との差が、なぜこれほど開いたのか。

売上高で世界2位のドイツのインフィニオン社は、ドイツや日本などの自動車メーカーにパワー半導体を納め、売り上げは急増しています。日本法人の幹部によると、急成長の秘密はその「販売方法」にあるといいます。

例えば、電気自動車に使われるこのパワー半導体(上写真)。動かすためには、他にもさまざまな半導体が必要になります。これらの製品を丸ごとセットにして顧客の要望に合わせ、開発・提供しているのです。

杵築弘隆さん「ずいぶん前からシステム思考を全面に出して、半導体の開発だけではなくてシステムとしてどう使われるか。どういう半導体がシステムに合っているか。そういうことを考えながら開発していますので、お客様にとっても都合がいいのではないかと思います」

拡大が続くパワー半導体市場。この会社は、10年間でおよそ2兆円の投資を行っています。

加藤 毅さん「我々としては非常に大きな投資を継続している。お客様の需要に応えられる体制を早く整えたいと思っています」

一方、巻き返しを目指すローム。海外企業の動向を分析し、新たな戦略を打ち出しています。それは徹底した「顧客目線の追求」です。

ここは電気自動車のさまざまなメーカーのモーターを再現した実験施設です(上写真)。自社のパワー半導体とその関連のシステムを調整して、顧客ごとにカスタマイズしています。スピード感をもって売り込むという戦略です。半導体の開発や品質向上に力を入れながらも、市場の獲得に遅れをとったこの企業。生き残りをかけた闘いを続けています。

野間亜樹さん「言われた仕様で(製品を)つくって、きちんと供給していく。そういうことでお客様に育てていただいたのがロームの特徴なんですけれども、そのやり方では足りないことが分かってきた。お客様の視点に立った話なのかどうか。それこそが大事だと思います」

パワー半導体市場にくわしい名古屋大学の山本教授は、技術力の追求だけでなく、市場にどう売り込むかがカギを握ると指摘します。

山本真義 教授「研究開発も重要。日本が不得意だった市場投入、社会実装(実用化)も求められている。現在においては、先行して市場をとることが非常に重要。今が勝負どころです」

<ニッポン半導体 生き残りの戦略は>

有馬キャスター「いいものをつくれば必ず売れる。日本のものづくりの純粋なよさがずっとあったと思うんですけれども、それだけだとビジネスとしてはなかなか成功しないという現実に直面してきたわけですよね。お客さんの注文どおりに質のいいものをつくる。それだけではなくて、それをいかに早く、いかに広く売るか。しかも相手は、世界のお客さん」

真矢さん「市場が広い。もう境がないですね」

有馬キャスター「マーケティングも世界の流儀でやらないと、もはや通用しない」

ひとりさん「いわゆる技術屋さんで優れた人とビジネスマンとして優れた人たちが、手を合わせていかなきゃいけないですね」

浅野アナウンサー「ここまで、日本が挑む次世代の半導体2種類を見てきました。最後は『3D半導体』です。今、世界で注目を集めていて、日本が形勢を逆転できるかがかかった画期的な技術だと言います」

<未来を変える!? 3D半導体>

東京大学の黒田忠広教授は、国内企業10社あまりと共に「3D半導体」の実現を目指しています。

現在の半導体は平面に並べて配置され、その間を電気信号が行き来することで情報をやりとりします。3D半導体では、それを縦に積み重ねます。電気信号の移動距離が短くなり、処理速度がアップ。消費電力は半分に抑えられると言います。

3D半導体の活用が期待されているのは、AIが不可欠な「自動運転」、そして大量の電力を消費する「データセンター」です。もし実現できれば大幅な省エネにもつながると、世界から大きな注目を集めています。

黒田忠広 教授「いちばん大きいのは電力の消費が減るということです。3Dなくして、これからのAIあるいはデジタル社会はつくれない」

日本の半導体産業の復活を目指す黒田さんは、現在、国内の製造装置メーカーと共に3D半導体の試作品の開発を進めています。カギを握るのが「半導体を洗浄する工程」です。そこで世界トップシェアの企業「スクリーン」と手を組みました。何層も基板を重ねる3D半導体の性能を上げるには、接着面のゴミをきれいに取り除く高い技術力が必要です。日本がもつ強みが生かされ、市場のシェア拡大につながると考えています。

さらに黒田さんは日本が中心となって実用化を目指すため、海外と共同研究を進めようとしています。訪ねたのは、ベルギーにある世界有数の半導体研究機関「imec(アイメック)」です。

imec 広報担当「アイメックでは、90以上の国や地域からやってきたエンジニアが、半導体に関わる研究をしている」

この研究機関には、ヨーロッパやアジア、アメリカなど、世界から研究者5000人が集まっています。黒田さんは日本と世界の技術を結集し、3D半導体の“世界標準”を作り出したいと考えています。アメリカ「IBM」や、世界一の製造能力を持つ台湾「TSMC」とも連携を模索しています。

黒田 教授「アジアの中での連携、アメリカとの連携、ヨーロッパとの連携。この連携の中で、お互い助け合って生きていく。共生・共進化。これがこれから求められることじゃないでしょうか」

ベルギーでの交渉から2か月。imecのCEOが来日、共同研究が決定しました。

黒田 教授「(3D半導体で)何を生み出すのか、アイデアが重要になる。世界とつながることがとても重要です。そういう機会をつくるのも私たちの世代の責任なのかなと思います」

<ニッポンの半導体 復活のカギは>

ひとりさん「各国にいろんな優秀な人がいるんだから、勝ち負けとか気にしないで、お互いの知恵を出し合って最高のものをつくるのが理想ですよね」

有馬キャスター「『3D半導体』って、実現までにはいくつも難しいハードルがあると思うんですけれども、黒田さんたちは『世界に開く』。こういう表現をしていました。国際連携をして、その壁を乗り越えて実現していきたいと。注目していきたいですよね。

今回、僕たちが取材していると“最後のチャンス”という言い方をするんですよね。日本はかつて半導体でナンバーワンになった歴史がある。その経験値それからエンジニアたちがまだ日本にいるわけですよ。財産として。彼らの力を今最大限いかさないといけない。そういう意味でラストチャンス。

ポイントは、今ある技術を大事にしてビジネスにつなげること。強みがいっぱいあることが分かったじゃないですか。そこを絶対逃さずに、がっちりビジネスにして成功して、次のステップに進む。絶対欠かせない要のポイントを日本企業が握るということは絶対必要だと思うし、それをもって新しい技術開発に臨んでほしい。このチャンスをつかんで、ぜひ輝きを取り戻してほしいと僕は思います」