シリーズ混迷の世紀 第13回 世界"債務危機"は止められるか

NHK
2023年11月24日 午後7:30 公開

番組のエッセンスを5分の動画でお届けします

(2023年11月19日の放送内容を基にしています)

<途上国で侵攻する「もう1つの危機」>

イスラエルとハマスの激しい衝突に世界の目が注がれる中、2023年10月、日本政府が主導するある交渉が大詰めを迎えていました。

交渉していたのは、財務省の国際部門トップ、神田財務官。外国からの借金を返せなくなり、債務危機に陥った途上国を救えないか。資金を融資した関係国の利害調整が、ギリギリまで続いていたのです。

財務省/神田財務官「ほとんど毎日交渉しているような状態。正直そんな簡単ではない」

2020年代に入って激動する世界。もう1つの深刻な危機が進行しています。

シリーズ・混迷の世紀。第13回は、債務危機をめぐる国際交渉の舞台裏です。

いま世界では、デフォルト=債務不履行に陥るリスクを抱える国が増えています。

そうした国を支援してきたのが、ワシントンに本部を置くIMF=国際通貨基金を中心とした先進国でした。

しかし近年、この枠組みとは別の動きをする、中国などの新たな勢力が台頭。

中国/習近平国家主席「この10年で“一帯一路”の国際協力をゼロから作り上げ、実り多い成果を上げてきた」

世界が一丸となって、危機に対処することが難しくなっているのです。

IMF/ゲオルギエワ専務理事「いまや中国なしには、持続可能な債務問題の解決は不可能です」

いま国際社会の舞台裏で何が起きているのか。今回、日本が主導した交渉に半年間密着しました。

財務省/神田財務官「シャンシャンといくアジェンダ(議題)は1つもないと。とにかく知恵を出して、丁寧に仲間になってもらうよう説得する」

新たな協調を模索する、知られざる闘いに迫ります。

<世界的な会議でも注目 債務危機>

河野憲治キャスター「世界各国の財務相と中央銀行総裁が一堂に会する、IMFと世界銀行の年次総会。今年(2023年)は、50年ぶりにアフリカの地で開かれました。焦点となったのは、途上国の債務問題、いわば借金が膨れ上がっている問題でした」

IMF/ゲオルギエワ専務理事「すでに債務に耐えられなくなっている国が相次いでいます。再建への支援は待ったなしです」

国際社会は債務危機を止められるのか。日本が主導した交渉に密着しました。

<スリランカの債務再編 主導することになった日本>

私たちが取材を始めた2023年4月。IMFのゲオルギエワ専務理事も同席して、新たな取り組みの発表がありました。外国からの債務が返せなくなったスリランカのために各国が一堂に集まって、債務の整理を目指すことになったのです。

今回、デフォルト=債務不履行に陥ったスリランカの負債総額は、およそ360億ドル。

日本をはじめ、22カ国が膨大な融資を回収できないリスクを抱えることになりました。

債務国、債権国それぞれのリスクを解消するための議論を日本が主導することになったのです。

日本政府を代表して、各国との交渉にあたるのは財務省。交渉チームを率いるのは、神田眞人財務官です。この日はスリランカの債務状況の詳しい分析と、交渉の課題について議論しました。

スリランカに最も多く融資しているのは中国で、およそ69億ドル。日本は2番目に多いおよそ27億ドルを貸しています。(2023年3月時点)

日本が目指すのは、返済期間や金利などをめぐって交渉し、各国が公平な負担となるようにすることです。

日本をはじめとする先進国が交渉を急ぐもう1つの理由は、1997年のアジア通貨危機のような、世界経済の混乱に波及することを未然に防ぐためです。

各国との調整を進め、IMFと世界銀行の総会が行われる2023年10月を目標に定めました。

財務省/神田眞人 財務官「グローバリゼーション、サプライチェーンが非常に複雑になっている中で、食料や資源を中心に、途上国と先進国がものすごく密接に結びついていますから、ほかの国がおかしくなったら、ひと事ではない。その国だけの問題にならない。世界全体がおかしくなって、日本も世界経済がおかしくなることで、その国の債権を失うだけでなく、世界経済の混乱で被害をこうむる」

<世界で危機広がる中デフォルトしたスリランカ>

いま、世界経済を揺るがしかねないリスクが、くすぶり続けています。

すでにデフォルトに陥っている国は少なくとも3カ国。さらにデフォルトに陥るリスクがあると、IMFが警戒を高めている国は34カ国に上っています。(2023年8月31日時点)

その背景にあるのは、コロナ禍を経た経済の混乱。ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けた記録的なインフレです。

未曾有の事態に対応するため、欧米各国は急速な利上げに踏み切りました。

FRB(連邦準備制度理事会)/パウエル議長「高インフレという、厳しい状況を認識している。0.5%か0.75%の利上げが見込まれる」

ECB(欧州中央銀行)/ラガルド総裁「0.5%のペースで利上げが見込まれる」

金利の上がったドルやユーロに資金が集まったため、途上国は通貨安や外貨不足に直面し、外国からの債務の返済に苦しむ事態に陥っているのです。

中でも深刻なのがスリランカです。去年(2022年)、デフォルトに陥ると、困窮した国民が大統領公邸などを占拠。当時の大統領は国外に逃亡するなど、混乱の極みに陥りました。

あとを引き継いだ大統領は、当時の政権が外国から必要以上にお金を借りすぎたことが、その一因だと告白しました。

スリランカ/ウィクラマシンハ大統領「スリランカは借りすぎたのです。中国はじめ、外国から債務を負いすぎたのです。経済危機はスリランカの『身から出たさび』です。国家の状況を見極めながら、経済発展に舵(かじ)をとるべきでした」

スリランカは、2000年代半ば以降、外国からの融資を頼りに、急速にインフラ整備を進めました。

建設したものの中には、「世界一ヒマな国際空港」と呼ばれた、採算性の低い地方の空港。また、ローンの返済が滞ったことを理由に、99年間中国に運営権が譲渡された港など、計画が十分に練られていない開発が少なくありませんでした。

<デフォルトは日本にも深刻な影響>

デフォルトから1年半。スリランカでは、今も国としての信用が回復しておらず、外国企業による投資は次々止まっています。これまで日本が投資してきた事業にも、大きな影響が出ています。

途上国の開発支援を行っている、JICA=国際協力機構の現地事務所所長の山田哲也さんは、突然止まったプロジェクトへの対応に追われています。

JICAスリランカ事務所/山田哲也 所長「スリランカがお金を返しませんと宣言をして、実際に支払いが止められちゃったので、その影響が甚大」

この日向かったのは、JICAが現地で日本企業と手がけている最大のプロジェクト、国際空港の拡張工事の現場です。

JICAスリランカ事務所/山田所長「ここが新しい旅客ターミナルができあがる予定の土地ですね。構造も途中まで立ち上がっている状態で工事がストップしてしまった」

およそ740億円をかけて、最大都市コロンボ近郊にある国際空港を拡張する予定でした。

工事現場担当者「鋼鉄の資材はすでにかなり劣化しています。工事が再開される頃には、もう使えなくなっているでしょう」

再開のメドがたたないことから、今後の採算性に不安があるとして、工事を請け負っていた日本の大手ゼネコンは、既に撤退しました。

スリランカでは、合計2500億円以上の事業が動いていました。企業からは、支払いについての問い合わせが相次いでいます。

(JICAオンライン会議より)

JICAスリランカ事務所/山田所長「いよいよ本当に厳しいという声が相当上がっていまして、本当に死活問題と受け止めている会社もたくさんおられます」

JICA東京本部「成長著しい新興国で、海外展開を望んでいたにもかかわらず、その(デフォルトの)インパクトが大きいことは理解しました」

JICAスリランカ事務所/山田所長「これは日本・スリランカ両国間のODA(政府開発援助)案件として、約束され実行されてきた事業ですので、再開させるには、やはり債務再編は1つの重要な条件になるので、この債務再編がいち早く整うことを期待したい」

<交渉のポイントは中国>

2023年9月。フランス・パリに、スリランカの交渉を取り仕切る神田財務官の姿がありました。

財務省/神田財務官「ワシントンでお会いした、IMFのゲオルギエワ専務理事とか世界銀行のバンガ総裁とか、各国の責任者たちと効果的な議論ができて、少しずつ前進していて、このパリでも一連の会議の中で、債務問題、スリランカ含めて扱うことになると思います」

一方で、今回の交渉のハードルの高さについても率直に語りました。

財務省/神田財務官「ものすごく複雑、債務状況が。各国、中国含めて、要するに前例がない。これまでここまで複雑で(スリランカのような)中所得国向け(の対応)で、“パリクラブ”でない国が入ったことは、人類史上やったことない」

神田財務官が言及した「パリクラブ」。IMFに加盟する先進国を中心に、途上国の債務問題を話し合う非公式の会合です。パリに集まった先進各国が協調して対応。その後のIMFの支援につなげてきました。

しかし近年、この「パリクラブ」に属さず、独自のやり方で融資を進める中国やインドなどが台頭し、国際協調が難しくなっています。

中国の融資は金利が他国より高く、返済期間も短いと言われています。

さらに、途上国の債務の返済が滞った際、中国が一方的に現金を引き出せる専用口座の存在もささやかれていました。パリクラブに所属する先進各国と中国の足並みがそろわず、債務再編をめぐる協議が進まない事態が起きているのです。

まずはパリクラブの参加国への働きかけを始めた神田財務官。この日は、アメリカなどの担当者と直接会談し、早期の合意に向けて後押しするよう根回しをしました。周りを固めた上で、最終的に中国を引き入れようという考えでした。

取材班「中国も履行する合意はまとめられそうですか?」

財務省/神田財務官「私たちはずっと呼びかけているわけで、いつでも入って下さることは歓迎します。世界の状況が大きく変わってしまった。だから今までのやり方じゃ無理と諦めるんじゃなくて、皆で一生懸命議論をして、そして新しい仕組み、新しい原則を作っていく努力を、われわれは絶えずやっている」

<IMFの求める改革で厳しさ増す国民生活>

日本が主導する債務再編協議が合意に至れば、IMFはスリランカへの緊急融資を前に進めることができます。IMFは財政基盤を強化する必要があるとして、税収をGDPの12%以上、日本円で1兆円を超える金額を確保するよう求めています。

IMFスリランカ担当 交渉責任者/ピーター・ブロイヤー氏「スリランカは歳入と歳出の差を縮めるために、税収を増やす必要があります。それが痛みを伴う政策であることは認識しています」

IMFから改革を迫られているスリランカ政府。大統領府では、閣僚や中央銀行総裁などが出席した会議が行われていました。

スリランカ/ウィクラマシンハ大統領「対外債務の問題を解決しないと、私たちは新たな形の植民地主義に逆戻りしてしまう」

これまでに、日本の消費税にあたる付加価値税を8%から15%に、電気料金を2倍以上に値上げするなどの政策を打ち出してきました。

しかし、IMFが求める政府の財政改革に困窮する国民は猛反発しています。

反IMFデモ「物価だけがあがる一方だ!国民に負担を強いている!」「何でもかんでもIMFの言いなりだ!」

世界銀行によれば、おととし13%だったスリランカの貧困率は、ことし28%になると予測されています。

食料支援を受けているこの8人家族は、電気料金が値上がりしたため、電気はほとんど使わなくなったといいます。

90歳の祖母は足の治療のため、これまで公立病院から無料で薬をもらっていました。しかし今は、その薬がもらえません。医薬品のほとんどが輸入のため、著しく不足しているのです。

祖母「夜になると痛みがひどくなります。宝石など金目の物はとっくに銀行に取られて、もう何もないです」

新たな勢力の台頭で難しさが増す国際協調。債務危機に陥った国の国民からあがる反発の声。

IMFは難しい舵取りを迫られています。

IMF(国際通貨基金)/ゲオルギエワ専務理事「世界は常に変化し続けているのですから、国連、IMF、世界銀行など、すべての国際機関も変化し続けなければなりません。そしてまさにIMFも変化に対応しています。私たちは低所得国にもっと寄り添って、この非常に困難な時期を乗り切れるような財政支援に、より注力していきます」

<債務危機の“源流” 膨張する緩和マネー>

顕在化しているデフォルトの危機。源流をたどると、10数年に及ぶあふれかえったマネーの存在があると指摘されています。

きっかけは、2008年にアメリカで起きたリーマンショック。未曾有の危機を収束させるため、欧米各国は大規模な金融緩和を実施しました。リーマンショックの直前、アメリカ、ユーロ圏、日本のマネーの供給量は合わせておよそ4兆ドルでした。その後起きたユーロ危機が収束した後も、経済の下支えが必要だとして、中央銀行によるマネーの供給量は増え続けました。2020年以降、新型コロナの感染拡大に伴い、各国はマネーをさらに供給。2022年には、合わせて25兆ドルにまで膨らんでいたのです」

しかし、2022年から始まった欧米各国の利上げによって、マネーは一気に途上国から引き上げられました。その影響を受けて、デフォルトに陥った国があります。西アフリカのガーナです。

カカオ農園主「見て下さい。こっちは全部だめになっています。害虫のせいでこうなってしまった」

国の基幹産業であるカカオ豆に対しては、これまで毎年数回、政府が農薬の散布を行ってきましたが、この農園では、ことしはまだ一度も行われていません。

カカオ農園主「もっと農薬があれば、カカオがたくさん出来るのに」

ガーナがデフォルトに陥った経緯を、財務省の高官がカメラの前で語りました。

ガーナ財務省/アルハッサン・イドリス局長「ガーナは多くのインフラ不足を抱える途上国です。道路、病院、学校、住宅、全てが不足しています。私たちは発展しなければなりません」

ガーナは、金やダイヤモンドなどの天然資源に恵まれているにもかかわらず、2000年代の初め頃までは、開発のための資金不足に悩まされていました。しかし、リーマンショック以降、世界的な金融緩和が始まると、ガーナなど途上国に先進国から大量のマネーが流れ込みました。

当時、ガーナ国債に投資したファンドで、いまは調査部門のトップをつとめる人物が、その頃の熱狂を語りました。

投資会社アシュモアグループ/グスタボ・マデイロス氏「ガーナは、10%近い利回りを得られた非常にいい例でした。多くの国で、マイナス金利やゼロ金利が適用される中、非常に魅力的でした」

アメリカで新たな金融緩和策が発表された2012年以降、外国からの資金が増加。多い年は、その額が25億ドルに達しました。

しかし、金融緩和の負の側面は突然、訪れます。

2022年は21億ドルの資金が外国へ流出しました。欧米先進国がインフレに対応するため、利上げに舵を切ったことが原因でした。世界のマネーの流れが一気に逆流したのです。

ガーナの通貨も暴落。債務の利払いも膨張し、ガーナはデフォルトに陥りました。

ガーナ財務省/アルハッサン・イドリス局長「先進国の金利が上昇した途端、投資家たちは一斉に資金を引き上げました。私たちにとっては大打撃でした。資金源がしぼんでしまったのです」

投資会社アシュモアグループ/グスタボ・マデイロス氏「私からお伝えしたいことは、『誰もがリスクを恐れているときこそ強欲に、誰もが強欲すぎるときこそ正しく恐れる』、これが投資の方程式です」

インドの中央銀行総裁を務めた経歴をもつ、シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、スリランカやガーナが直面した空前の金融緩和の副作用に、世界はもっと目を向けるべきだったと指摘します。

シカゴ大学/ラグラム・ラジャン教授「金融緩和の時期に人は、『今こそお金を借りよう』と思うものです。しかし、その時にこそ最大の注意が必要です。自分の服に合わせてコートを仕立てるように、慎重に国の返済能力を検討すべきなのです。なぜなら金融緩和の後には“二日酔い”という名の副作用があらわれるからです」

<本格化する債務再編交渉 立ちはだかる中国の壁>

2023年9月下旬。スリランカの債務再編交渉は、大詰めを迎えていました。会合での議題を取り仕切る真船貴史さんは、各国とのオンライン会合を翌日に控え、合意案の検討を続けていました。

この時の焦点の1つは金利でした。これまでの慣例では、できるだけ低めに設定し、危機に陥った国の救済を優先してきました。しかし今回は、パリクラブに属さない中国やインドなどに配慮し、金利を高めに設定した案も提示。これらの国からの賛同を得やすくする狙いでした。

財務省開発政策課/真船貴史 開発金融専門官「やはり、われわれがやってきた債務再編のやり方について、あまり慣れていない国からどんな意見が出るかわからないので、そこら辺の反応も含めて注意しながら明日は臨んで、コンセンサスを醸成して合意に至れるよう、気を引き締めて頑張っていきましょう」

そして迎えたオンライン会合。日本時間の夜8時半に始まった会合は、およそ2時間に及びました。合意案への各国の理解は得られつつありました。

ところが、目標とする総会の4日前。事態は思わぬ方向に動きます。午後3時。神田財務官の部屋に続々と集まってくるメンバーたち。インドとの会合で、スリランカの債務問題が、急きょ、主要な議題となったのです

インドの発言が始まると、取材は非公開となりました。

その後の取材でこの頃、一部の国から、このまま合意することへの疑問が出されていたことがわかりました。「中国は本当に合意に従うのか」という懸念が示されていたのです。さらに、中国の途上国への融資をめぐって、ある事実も明らかになってきました。

中国が行う融資の分析で、世界をリードするアメリカの研究所エイドデータは、中国から融資を受けた国の公文書、各国の中国大使館のSNSや国際機関の統計など、あらゆるオープンデータを収集。さらに聞き取り調査も行って、実態に迫っています。

以前から噂されていた、中国が債権を回収するための抜け道となる専用口座の詳細を突き止めたと発表しました。それが「エスクロー口座」です。途上国からの返済が滞った時に、この口座から中国だけが現金を引き出すことができます。

研究所が入手したこの口座の契約書です。中国の政府系銀行とウガンダ政府が結んだものだといいます。インフラ事業の収益が、このエスクロー口座に直接送金、補填される仕組みになっていました。

研究所は、スリランカではこうした口座の存在はまだ確認できていないとした上で、中国の手法は各国との交渉の足かせになるとみています。

エイドデータ研究所/ブラッド・パークス所長「債務再編交渉の際、すべての債権国が平等な立場にあるという保障がない限り、債権国は交渉の参加に消極的になります。エスクロー口座の存在は、中国以外の債権国の立場を不利にしてしまいます。その結果、債務再編の議論が停滞してしまうのです」

中国が手がける国際的なプロジェクトに詳しく、政府に政策の助言も行っている王輝耀(おう・きよう)氏は、疑問視されている中国の融資の手法について、全く問題がないと主張します。

シンクタンク「全球化智庫」/王輝耀 理事長「プロジェクトは交渉の上、合意されたものです。誰が強制したものでもありません。これは互いの利益になることで、首に刃物を突きつけて署名したものではありません。中国は隠さず、すべてを表に出しています。中国への国際社会の理解が不十分で、誇張や誤解があるのでしょう」

<迎えた国際会議 各国との合意は・・・>

中国の対応への不安が広がる中で迎えた、2023年10月のIMFと世界銀行の総会。

現地でもギリギリまで交渉が重ねられました。これまで半年にわたって続けられてきた、スリランカの債務整理のための協議。しかし、一部の国の中国への懸念は解消されず、大筋合意には至りませんでした。

財務省/神田財務官「正直言うと今回、1つのゴールポストと僕は考えていたんですけど、さすがにちょっと難しかった」

その一方で、総会の会場に衝撃的なニュースがもたらされました。日本が主導する交渉に先んじて、中国が単独でスリランカと合意したというのです。

中国外務省 報道官「「中国輸出入銀行は債務処理について、スリランカと暫定合意した」

中国は会見で合意の内容については明らかにしませんでした。

帰国後、インタビューに応じた神田財務官。

財務省/神田財務官「(中国の合意が)合意かどうか、それについては交渉ですので、私からコメントするのは差し控えたいと思いますが、必ずしも合意という風に認識しておりません。われわれとしては中国を含めて、みんなでしっかり早く合意できたらいいと考えています」

神田財務官は、中国を含めた国際協調の模索は、日本にとって避けられない課題だと強調しました。

財務省/神田財務官「非常に大きな国は、あるいは自分たちで資源もある、閉じられた経済でも回っていくようなところは、それ(独自路線)でいいと思います。日本はそうじゃありません。やはり、非常に平和で安定した世界秩序が一番必要だし、それを求め実現するインセンティブを持っている国だと思います」

金融緩和から利上げに転換し、マネーの流れが大きく変わる中で高まるデフォルトのリスク。

一方で、その危機から脱するための国際協調の不振。

ラグラム・ラジャン教授は、「危機は常に無関心と隣り合わせにある」と語りました。

シカゴ大学/ラグラム・ラジャン教授「率直に言うと、問題は途上国に限りません。多くの先進国も膨大な債務を抱えています。先進国も金利が上昇する中で、財政がひっ迫することになると考えています。世界は余力を失い、思いやりもなくなりつつあること憂慮しています。今こそともに歩む姿勢が必要です。先人の教えにあるように『私たちは結束しなければ、別々に破滅することになる』のですから」

2023年11月。

FRB(連邦準備制度理事会)パウエル議長「金利を据え置くことに決定した」

利上げの見送りを決めたFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長。しかし、「さらなる利上げが必要であればためらわない」と強調しています。

先進国の金利が高止まりする中、南米アルゼンチンでは、通貨安が急激に進行。デフォルトの瀬戸際に立たされています。

債務再編協議がまとまっていないスリランカ。苦しい国民生活が続いています。

食料支援を受けている母親「何もかもが不足しています。どうすることもできません」

苦境に陥った人々の前に立ちはだかる世界の分断。

国際社会の結束を目指して続く、知られざる闘い。

世界は危機を乗り越えるすべを、いまだ見出せていません。