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「次の直下型地震はどこで?」「揺れやすい場所はどこ?」 最新研究

NHK
2021年9月11日 午後3:17 公開

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NHKスペシャル「MEGAQUAKE巨大地震 2021」(2021年9月12日放送)では、地震や津波から命や社会を守るための科学や技術の最前線を取材。その中で、「①次の直下型地震はどこで起きるのか?」「②大地震で揺れやすいのはどこか?」という疑問に迫る最新の研究成果を、とくに詳しくお伝えします。

【①次の直下型地震はどこで?最新研究が示すリスク】

「3.11以前の状況とは全く異なる、未知の日本列島。私たちはその世界に足を踏み入れた」

科学者がそう語った巨大地震からおよそ10年。東北や関東の沖では現在もなお地震が起き、巨大地震の影響が続いていることを突きつけています。さらに、熊本地震や大阪北部の地震など、都市の直下で起きる大地震もあとをたちません。

こうした中、大地の動きを捉えるGPSのデータを使った新たな手法で内陸地震の発生確率を予測しようという研究が加速しています。最新のマップには、次の大地震のリスクを読み解く情報が詰まっています。

これまで国が公表している情報と何が違うのか、そして、私たちはこの情報をどのように読み解き、どう役立てたらよいのか。詳しく解説します。

(社会部 災害担当・老久保勇太 記者)

<内陸地震の発生確率地図>

今回マップを作成したのは、京都大学防災研究所の西村卓也准教授。地殻変動の専門家です。

下の地図は、これまでに分析が終わった西日本を中心に、およそ20キロ四方でマグニチュード6.8以上の大地震の起きやすさを表しています。

色が赤くなるほど、30年以内に発生する確率が高いことを示しますが、表示の最大値は1%。「低いな」と思われるかもしれませんが、これは、20キロ四方と狭い範囲ごとに算出しているため、数字が高くなりにくいということです。

この色分けは相対的なものです。確率が低いところでも地震の確率がゼロではないことに注意が必要です。

地図上黄色の線は、国が認定している「主要活断層」です。

北陸から、滋賀、京都、大阪、奈良などにかけて、「ひずみ集中帯」と呼ばれる地域で赤くなっています。近畿では、活断層が集中している地域とも重なっています。

中国地方は活断層の有無で大きな違いはみられませんが、日本海側などで確率が高くなっているところがあります。

四国では、東西を走る中央構造線断層帯の付近(愛媛や徳島、香川)で、確率が高い場所が見られます。一方、高知県の主要活断層が見つかっていない地域でも確率が高くなっているところがあります。

九州では北部の福岡、大分、熊本などで確率が高く活断層も多く見つかっている地域があります。大分県内には主要な活断層帯もありますが、30年以内の地震発生確率は「ほぼ0%」などとそれほど高くありません。しかし、西村さんの分析では赤くなり、確率が比較的高いことを示しています。

また、九州南部の鹿児島や宮崎では活断層が見つかっていない地域で、とくに確率が高くなっています。

記事の後半では九州から中国地方で「地域ごとに算出された地震の発生確率」をご覧いただけます。

<分析につかうのは“GPS”>

西村さんが分析に使っているのは、GPS。カーナビゲーションシステムや携帯電話にも使われている技術です。

全国およそ1300か所にある観測装置は、人工衛星と通信することで、その場所の大地の動きをミリ単位で日々捉えています。

観測地点ごとに、大地の動きと、向きや違いを一定期間調べると、地震を引き起こす「ひずみ」がどこにどの程度たまっているかを導きだすことができるといいます。そこから、今後、大地震が発生する確率を算出しています。

<過去にも内陸のリスクをあぶり出す>

西村さんはこれまでも、GPSのデータから地震のリスクを分析し、警鐘を鳴らしてきました。

2016年4月に放送したNHKスペシャル「巨大災害 MEGA DISASTER Ⅱ」で、西村さんは「山陰地方ではひずみのたまっている量も大きく、今後さらに大きな地震が起こる可能性がある」と指摘していました。

解析によると、山陰地方の沿岸部では大地が東向きに大きく動いているのに対し、内陸になるほど大地の動きが小さくなっていたのです。

「山陰地方にひずみがたまっていて、地震が起きやすくなっている」。

GPSが示す大地の動きの向きや大きさの違いから、西村さんはそう結論づけたのです。

そして、放送から半年後の2016年10月、鳥取県中部でマグニチュード6.6の地震が起きました。

幸い死者はいませんでしたが、けがをした人は25人、全半壊した建物は330棟にのぼりました。(「平成28年10月21日鳥取県中部地震記録誌」より)

「地震の長期予測の手法としては間違っていなかった」

確信を深めた西村さんが乗り出したのが、今回の「地震発生確率マップ」の作成でした。

背景にあるのは、「現在、その地域にたまっている大地のひずみを地震のリスク評価に使うことが重要だ」という思いです。

「『日本はどこで内陸地震が起きてもおかしくない』と言えばそれまでですが、だからと言って全国均等に起こっているわけではなく、地震が起こりやすいところというのはあります。たとえば行政が限られた予算の中で耐震化など進める際に、優先順位をつけるためにも、こうしたマップは有効だと考えています」(西村准教授)

<国は活断層もとにリスク評価 課題も>

内陸地震のリスク評価は、これまでも国によって行われていますが、予測の手法は異なります。

政府の地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、過去繰り返し大地震を引き起こしてきた「主要活断層」について、将来起こりうる地震の規模や発生間隔を推定し、確率を公表しています。そのもととなっているのは、専門家による航空写真や掘削調査などから調べた活断層の位置や地震の間隔、ずれ動いた規模など。つまり、“過去の地震の記録”です。

しかし、活断層として認定されていないところでも大地震が起きているほか、リスクの伝え方にも課題があります。活断層が引き起こす地震は、南海トラフや日本海溝などで起きる「プレート境界型」の地震と異なり、発生間隔が千年~数千年程度と長いのが特徴です。そのため、今後30年以内の発生確率を計算すると、その値は小さくなってしまいます。

「高い」とされるSランクでも3%以上。切迫性を感じにくいのです。

このため、地震調査研究推進本部は、個別の主要活断層に加え、そのほかの活断層も含めるなどして、地域ごとに大地震の発生確率を出す取り組みを現在、進めています。そこで、西村さんは同様の地域区分でGPSデータによる地殻変動をもとに確率を算出し、結果を比較しようと考えました。

<九州・四国・中国の大地震発生確率 国との違いは>

すでに地域評価を公表済みの九州、四国、中国地方でGPSデータによる確率と、国が公表している確率との比較です。地域区分は地震調査研究推進本部と同様のものです。

全体としてみると、GPSのデータから算出した確率の方が活断層に基づく確率よりも高い傾向となったことがわかりました。

とくに九州南部では、2倍以上となっているほか、四国なども高くなっています。

いっぽう、九州中部と中国西部では低くなっています。西村さんによると、活断層があまり見つかっておらず、GPSでひずみがたまっていると分析された地域で、国が算出した確率よりも高くなっているということです。

西村さんが念頭に置いているのは、アメリカ・カリフォルニア州の地震リスク評価です。ここでは、GPSデータによる分析と個々の活断層評価の双方を組み合わせてリスクの評価をしているということです。西村さんは日本でも、内陸地震の予測にGPSデータも組み込んでいくべきだと考えています。

「活断層に基づくデータだけに依存することは弱点にもなります。GPSも含めて近年、日本列島の動きを知るデータは非常に増え、かなりのレベルでわかるようになってきました。活断層とGPS、複数のデータに基づいて予測を高度化していくことが重要だと思います」(西村准教授)

関東や北日本では、10年前の巨大地震の影響がまだ大きく、分析は難しいと言うことですが、今後進めていくということです。

<“自分の研究がすべて正しい”は思い上がり 社会で議論を>

「危ない都市ランキング!」「次の活断層地震はここだ!」

時折、雑誌やSNS上をにぎわすことの多い、地震リスクの予測。人々の関心は高いものの、当事者の思いとは別の形で数字や地名が取り上げられる危険性もあります。

しかも、途中の成果の公開に協力してくださった西村さん。葛藤はあったものの、世に出す決断をしました。その背景にあるのは、東日本大震災での経験だといいます。

“想定外”と繰り返されたマグニチュード9の巨大地震。東北の沖合は以前から西村さんが研究対象としていた場所でもありました。実は、GPSの分析から東北の沖で大きなひずみがたまっていることを発見し、2000年には「地震が想定よりも大きくなる可能性がある」と論文もまとめていたのです。

しかし、あれほどの巨大地震が起こることまではまったく予想できなかったといいます。学生時代を東北で過ごし、町並みもよく知る西村さんは、被災地を訪れ、ことばを失いました。

「東北のGPS解析は国内で何人も研究者はいませんし、ある程度成果を出してきたという自負もありましたから、被害の軽減に役立たなかったショックというか、責任を感じました。今後どうしていけば良いのか。本当に思い直す必要があると感じました」(西村准教授)

防災に貢献したいという思いで歩み始めた研究者の道。純粋な科学の楽しさにのめり込む一方、成果を社会に還元する意識が次第に薄くなってしまっていたのではないか。

そう考えた西村さんは、ある程度反響が想像される結果であっても、世の中に公表し、どうすれば備えにつながるのか考えていくことにしたといいます。

「もちろん研究は全力を尽くした成果です。でも、もしかすると、中には間違っていることだってあるかもしれません。かといって、完全なものができるまで待っていたら、何百年も成果をお伝えできないかもしれない。3.11を経て『自分の研究がすべて正しいというのは思い上がりだ』と強く感じました。ある程度確からしさが検証されたものについては、社会に広く知ってもらい、どう活用できるか広く議論してもらうことも重要だと考えています」(西村准教授)

発生日時や規模を特定した地震の予測ができない現状、“確率”というあいまいなデータをどのように生かしていくのか。巨大地震から10年がたち、新型コロナウイルスの感染拡大における課題も経験した今、科学者だけではなく、社会全体で改めて考えていくべき課題だと感じました。

【②大地震で揺れやすいのは? 最新の地盤データで見るリスク】

地震の確実な予測は難しい中、揺れから命を守るための技術やデータも進化しています。ここでは、最新の調査に基づいて、「地盤の揺れやすさ」を知るためのデータについてご紹介します。

<建物の揺れを左右する“表層地盤”>

「このあたりは地盤がいいから、地震が来ても大丈夫」 

「くいが打ってあるから心配ない」

時折耳にします。

ほんとうにそうでしょうか?一度、データで確認してみてください。

ここでご紹介するのは、「表層地盤」(=地表に近い地盤)の揺れやすさです。

一般に、地震は地震波が届く距離が近いほど大きく揺れます。

ですから、活断層がずれ動いて大地震が起きた場合、ずれ動いた断層に近ければ震度6弱や7などの揺れに見舞われることもあります。ただ、揺れは活断層との距離に加え、地盤の持つ特性にも左右されます。

地盤の中でも地面に近い「表層地盤」に軟らかい粘土層などが堆積していると、揺れが増幅されやすいことがわかっています。

防災科学技術研究所が運用しているウェブサイト「J-SHIS」(地震ハザードステーション)には、これまでも表層地盤の揺れやすさを示すマップがありましたが、地形に基づく比較的簡易な分析でした。

関東地方については、ことし3月、より実際に近いデータに更新されました。

<関東で行われた調査>

マップのベースとなっているのが、非常に詳細な調査です。

防災科学技術研究所は2014年から17年にかけて関東の地盤を詳細に調べました。

手法は、「微動アレイ」と呼ばれる高性能な地震計による調査です。

合計1万4000か所で行われた調査に、ボーリング調査の結果も加味して分析した結果、表層地盤の地質と、地震波の伝わり方、つまり「揺れやすさ」が明らかになりました。

詳細なデータを反映させると、これまで見えてこなかった地域の特性が浮かび上がってきました。

(上)詳細な地盤調査のデータを反映させた最新版の表層地盤地図(番組で紹介したもの)

(下)従来公表されていた表層地盤地図

従来のものと比較すると、利根川や荒川といった川沿いの地域で揺れの増幅率が大きくなっているのがわかります。一方、川沿いであってもそこまで揺れやすくなかったり、一般的に地盤が固いとされている台地であっても、揺れが増幅されたりすることもわかりました。

(上)最新版(2021)の表層地盤図

(下)旧版(2019)の表層地盤図

東京の都心、文京区や台東区、荒川区の周辺では地域によって大きな違いが出ています。

一概に増幅率が高くなったわけでもないことも、みてとれます。

防災科学技術研究所は、今後ほかの地域でも調査を進めるということです。

<見方と注意点>

ただ、注意しなければならいのは、増幅率がそのまますべての建物の揺れにつながるわけではない、ということです。

建物には揺れやすい「周期」というものがあります。

例えば、一般に低い建物は“がたがた”とした短い周期の揺れで揺れやすく、高い建物はゆっくりとした長い周期の揺れで揺れやすくなります。

地震の揺れにはさまざまな成分が含まれていて、地盤の性質によって、増幅される揺れが異なり、軟らかい地盤が厚いと、周期の長いゆっくりとした揺れが増幅されやすくなります。

つまり、固いとされる地盤だったとしても、揺れの周期と建物が持つ周期があう=共振が起きれば、建物の揺れは大きくなってしまうのです。建物の特性を把握しておくことも重要です。

<J-SHISはこちら> (※NHKサイトを離れます)

<“盛り土”も被害に影響することも>

また、表層地盤以外にも被害を左右するものがあります。

盛り土によって造成された宅地です。古い年代を中心に盛り土された宅地では、10年前の巨大地震を含め、これまで大地震で相次いで被害が確認されています。大規模なものなど、一定の条件を満たす場合は自治体が調査し、公開されています。(自治体のウェブサイトや、「重ねるハザードマップ」)

盛り土だからといってすべて危険だというわけではありません。また、マップに示されていない盛り土でも被害が起きていますので、限界があることに注意が必要です。

自宅や働いている場所、通っている学校の周辺がどうなっているのか、ぜひ一度確認してみてください。

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